中村俊三 ブログ

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クラシック・ギター名曲ランキング

<第7位> 大聖堂(アウグスティン・バリオス)



「森に夢見る」や「郷愁のショーロ」などもあるが

 クラシック・ギターでのバリオスの人気はたいへん大きく、今現在、人気度ではソルやタレガを凌ぐものがあります。バリオスには他に「森に夢見る」、「郷愁のショーロ」、「ワルツ第3番」、「ワルツ第4番」、「フリア・フロリダ」、「クリスマスの歌」などの人気曲がありますが、やはりここではバリオスの曲があまり演奏されていなかった頃から、ほぼ唯一演奏されていたこの「大聖堂」にしておきましょう。



バリオスの晩年に現在の3楽章の形になった

 この曲は1921年頃作曲され、1928年にはバリオス自身で録音しています。これは現在CDで聴くことが出来、バリオスの残した録音は、そのほとんどが劣悪な音質となっていますが、この「大聖堂」の録音はその中でも比較的状態の良いものです。

 当初は現在の第Ⅱ、第Ⅲ楽章のみの形だったのですが、バリオスの挽年に現在の第Ⅰ楽章にあたる「プレリュード」が付け加えられました。1928年のバリオスの録音も2楽章の形になっています。

 したがって、この曲には第Ⅱ、第Ⅲ楽章のみで演奏する方法と、全3楽章を演奏する方法があり、1970年代頃までは2楽章の形で演奏されることがほとんどだったのですが、現在では時間制限がない限り全3楽章の形で演奏されるのが普通です。


1960年代頃まではそれほど演奏されていなかった

 現在これだけ人気の曲ではありますが、少なくとも1960年代頃まではあまり演奏されることも少なく、この曲を弾く人はもちろん、知っているという人も結構”通”の人だったのではと思います。私自身でもこの曲を初めて聴いたのは1970年代の半ば頃、トゥリビオ・サントスのLPによってです。


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私が初めて大聖堂を聴いた1976年のトゥリビオ・サントスのLP。 当時この大聖堂のLPはまだ少なかった。このLPには他にブローウェルの「舞踏礼賛」なども収録されている。こちらもまだ現在のように誰でも(ギター・ファンなら)知っている曲にはなっていなかった。トゥリビオ・サントスはこの時代最先端的な曲を多数録音している。ヴィラ・ロボスの「12の練習曲」や「ブラジル民謡組曲」の全曲録音もこのサントスが最初だと思う。残念ながらそれらは今現在CDにはなっていないようだ。



セゴヴィアが演奏しなかったせい?

 それまでこの「大聖堂」をはじめ、バリオスの作品がギター・ファンの間に浸透しなかった最大の理由としては、何といってもアンドレス・セゴヴィアがバリオスの作品を演奏しなかったことにあるでしょう。一説によればセゴヴィアはバリオスの脅威のテクニックと音楽性に恐れをなし、バリオスの作品を手掛けなかったと言われています。

 その真意はわかりませんが、しかし1950年代頃までバリオスの作品を演奏していたヨーロッパのギタリストは極めて少なく、セゴヴィアが演奏しなかったとしても特に不思議ではありません。



濡れ衣と言えなくもないが

 やや濡れ衣といったところもあると思いますが、裏を返せばそれだけこの時代(1930~1960年代)においては、セゴヴィアの影響力があまりにも大きかったということでしょう。20世紀半ばではセゴヴィアの歩いた道を後からたどったギタリストが少なくなかったのは確かです。

 もちろん仮にセゴヴィアが早い段階でバリオスの作品を演奏したり、録音したとしたら、バリオスの作品は早い時期から多くのギター・ファンの心を掴んでいたでしょう。 



ジョン・ウィリアムスの2回の録音

 バリオスの作品のCDについては以前にも書きましたが、これも再度おさらいしておきましょう。まずは、何といってもジョン・ウィリアムスの新旧2回の録音で、何といってもその最初の1977年の録音は、その後のバリオス・ブームのきっかけとなるものです。

 この「大聖堂」に関しては2回とも多少違ったバージョンで演奏していて、特に2回目(1994年)の録音ではあまり聴くことのないバージョンになっています。また録音としては1回目の方はかなり抑えめのもの、2回目のほうはかなり華やかな録音となっています。1977年はフレタ、1994年はスモールマン使用ですが、個人的には1977年の演奏の方が愛着があります。



デビット・ラッセルの1994年の録音

 もう一つ1994年の録音(この年はバリオスの没後50年に当たる)で、デビット・ラッセルのものがお薦めできます。ウィリアムスの演奏は一気に弾ききっているといった感じのもので、細部よりも全体の構成に重点を置いた印象がありますが、こちらは細部の表情にもこだわっています。



フォルホースト、ポルケドゥ

 他にデビット・ラッセルの影響を受けたと思われる、エンノ・フォルホーストの2枚のバリオス作品集のCDもお薦めできます。

 またポルケドゥがブリラント社から6枚組のバリオス作品全集を出していて、この「大聖堂」以外にも、このCDでしか聴くことのできないバリオスの作品が多数収録されています。曲順がアルファベット順となっていて、辞書のような感じになっていますので、練習にはたいへん便利です。
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