中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

暗譜のネガティヴな面

 これまで発表会やコンサートなどで、暗譜で演奏した時に、譜忘れしない正しい暗譜の仕方ということで話をしてきました。しかし練習の段階からあまり記憶にたよって練習すると、かえって上達の妨げになることもあります。今回はこの暗譜のネガティヴな面の話となります。


記憶力のよい人のほうが・・・・・

 これまでギターを教えてきて、「記憶」がその生徒さんの上達の障害になってしまうということをかなり経験しています。普通に考えれば、記憶力のよい人のほうがギター上達は速いはずで、学校でも記憶力の良い人のほうが成績が良いに決まっています。しかしギターの上達においては必ずしもそうはならないということは、「読譜力」ところでま話したとおりです。


あまりしっかりと覚えてしまうと

 レッスンの時、「よく弾けていますが、そこのところはこのように運指を変えるともっと弾きやすいでしょう」とほんの少し違った運指などを薦めても、家でしっかりと覚えてしまったために、それがなかなか変えられなかったりすることがあります。ギターが上手くなるということは、少しずついろいろなことを変えてゆかなければならないわけですが、練習の最初からあまりしっかりと覚えてしまうと、ちょっとしたことでもなかなか変えられなくなることもあります。また楽譜読み間違えなども気が付かなかったり、気が付いてもなかなか直らなかったりすることもあります。



暗譜は終盤で

 暗譜弾くと、どうしても「次の音何だったかな」とか曲を進行させることに神経を使ってしまいがちで、曲全体のこととか、その部分の前後関係とか、運指のこととか、主旋律と対旋律の関係など、いろいろなこと神経がいかなくなってしまいます。やはり練習の初期の段階ではなるべく楽譜をよく見て練習するほうがよいと思います。 暗譜で練習するとしても、終盤になってコンサートや発表会が近づいてからでよいと思います。


そんなことでは褒めません

 よく「この曲1日で覚えちゃったよ」と自慢する人とか、「今度のレッスン日までにこの曲絶対に暗譜するぞ」とがんばる人などがいます。とりあえず自慢するためとか、教室の先生に褒められるためだったら(因みに、私はそんなことでは褒めません)それもよいと思いますが、本当にギターが上手になるためだったらそれほど必要のないことです。強いていうなら暗譜の場合必要なのは速さではなく正確さです、99パーセントの暗譜など役には立ちません。


人間いろいろ

 とは言っても暗譜はかなり個人差がありますから、中には非常に速く、正確に覚えてしまう人もいます。暗譜で有名な人といえば、往年の名指揮者アルトゥール・トスカニーニがあげられます。トスカニーニの記憶力についてはいろいろな逸話がありますが、トスカニーニは若い頃、オーケストラのチェリストをしていて、前任の指揮者が不評で降板した時、その暗譜力を買われていきなり指揮者に抜擢(というより、やる人がいなかったので、無理やりやらされたに近かったようですが)されました。指揮の勉強も経験も全くなく、棒の振り方などめちゃくちゃだったそうですが、その時にはすでに10以上のオペラを暗譜してあって、譜面を見ずに振ったそうです。「オペラを暗譜する」と言う意味の分かる人にはこれが如何に人間技ではないことがわかると思います。


(音感+記憶力)×思考力

 またモーツアルトの記憶力も有名で、10代の頃、長いミサ曲を一晩聴いただけで、譜面に書き取ってしまったという話もあります。もっとも音楽を記憶するのと、人の話とか、本の内容などを記憶するのとはちょっと違いますから、これらの人は音感も抜群に良かったようです。つまりこれらの能力は人並みはずれた記憶力と音感、それにそれらをコントロール出来る思考力も加わって形成されるものなのでしょう。話がそれてしまいましたが、これらのことは私達普通(?)の人間にはあまり関係のないことです。普通の人が無理やり、特に速く暗譜しようとするといろいろ問題が生じてしまう可能性がありますので、私としてはあまり賛成できません。



   


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