中村俊三 ブログ

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クラシック・名曲ランキング

<第8位>  アラビア風奇想曲(フランシスコ・タレガ)




タレガの生存中より知られ、自らの代表作と認めていた

 この「アラビア風奇想曲」は、言うまでもなく「アランブラの想い出」と並ぶタレガの名作です。確かに現在での知名度では「アランブラの想い出」に一歩譲っていますが、前の記事で書いたとおり「アランブラの想い出」が有名になったのはタレガの死後であるのにたいして、この曲はタレガの生存中よりギター愛好者の間で広く知られていた曲のようです。

 タレガの伝記を書いたエミリオ・プジョールや、タレガの愛弟子であったホセフィーナ・ロブレドは、タレガの門を叩いた時に、タレガの前でこの「アラビア風奇想曲」を演奏していて、1900年頃よりスペイン国内のギター愛好者の間で知られていたようです。 1905年のタレガ作品の最初の出版でもこの曲が選ばれ、タレガ自身も自らの代表作と考えていたことが窺われます。



ギター名曲の”しにせ中のしにせ”だが

 以上のように、この「アラビア風奇想曲」は古くから知られ、ギター名曲の”老舗中の老舗”と言えます。もちろん今現在でも人気の高い曲ではありますが、「アランブラの想い出」に比べると知名度などに若干差が出てしまっているようです。このランキングが半世紀ほど前であれば、もっと上位となっていたのは確かでしょう。オールド・ファンにとってはやや残念な順位かもしれません。ご容赦ください、これも時代の流れということで・・・・・



譜面の信頼性は高く、選択で迷うことはない

 譜面のほうは前述のとおり1905年にタレガ自身の手を経て出版されたもので、よく吟味された上でのものと思われます。確かに単純ミス的なものはほとんどなく、かなり信頼性の高い譜面と言えます。また現在出版されているものもほとんどその初版どおりになっていて、楽譜の選択等で迷うこともないでしょう。



単音になっているのはグリサンドをするため?

 細かい点で言えば、グリサンドなどは同じ譜面を用いても、演奏者によってかなり異なった弾き方をしています。そういった装飾的な部分についてはある程度の自由度はあると思います。

 下の譜面(現代ギター社版)の4段目の矢印のところで、普通に考えればこの音は前の小節のように和音になるはずだが、「ラ」の単音になっています。藤井敬吾さんの話によれば、この「ラ」が単音になっているのは、そこからグリサンドをするためだそうです。


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 要するに次の小節は、①弦の1フレットの「ファ」からグリサンドするのではなく、この③弦の「ラ」からグリサンドして①弦の「ラ」(5フレット)に至るわけです。確かに前述のロブレドの録音を聴いてみるとそのように演奏しているようです(あまりはっきりとはグリサンドの音は聴こえないが)。



こちらもグリサンド?

 ついでに、この弦のまたいでの(矢印)スラーもちょっと違和感があったのですが、ロブレドの演奏によるとグリサンドになっています(かなりはっきり)。おそらく③弦の「ラ」からのグリサンドと思われますが、確かにこの方が腑に落ちます。
 

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タレガへの敬愛を感じる演奏

 このホセフィーナ・ロブレドの録音については以前にも書きましたが、たいへん参考になるものです。プライヴェートな録音のようで、音質はかなり良くないのですが、タレガの愛弟子による、たいへん貴重な録音といえます。この録音はロブレドの晩年のもので、この当時はすでに長い間ステージから遠ざかっていたとのことですが、技術も(もちろん内容も)しっかりしていて、単純ミスや不明瞭な部分もほとんどなく、このギタリストの能力の高さが窺われます。


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以前紹介した「セゴヴィアと同時代のギタリストたち」Vol.12のCD。 ロブレド、プジョール、フォルテア、リョベットなどタレガの弟子の演奏の他、タレガ自身の演奏も入っている。

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