中村俊三 ブログ

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クラシック・ギター名曲ランキング



当ランキングは作品が優れているかどうかの順位ではない


 前回はタイトルだけで終わってしまいましたが、今回はちゃんとランキングの記事を書きましょう。今回の記事はクラシック・ギター名曲ランキングということですが(Q&Aはどこかに行ってしまった?)、このランキングは音楽的内容の優れている順位ではなく、あくまで知名度、および人気度の順位ということで、決してその作品が優れているかどうかということではありません。

 どちらの作品が優れてるかどうかなどということは、はっきりした基準などないでしょうし、まして私などには判断出来るものではありません。

 しかし長年ギターなど教えていると、どの曲が一般に知られ、またどの曲が人気があるかといったことは、ある程度わかってきます。このランキングはそうしたものと考えて下さい。したがって、皆さんが「これは絶対クラシック・ギターの名曲中の名曲」と思っている曲が、当ランキングには入ってこない可能性は十分にあります。






<第9位>  タンゴ・アン・スカイ(ローラン・ディアンス


 この曲は前回の「アラビア風奇想曲」の正反対とも言える曲で、作曲されてからまだ30年ほどしか経っていない曲ですが、ギター愛好者の人気度からすると、今や「アラビア風奇想曲」などと並ぶ、あるいは凌ぐものがあります。特に若い愛好者にはたいへん人気の高い曲です。



かつて村治佳織さんがテレビ・コマーシャルで弾いていた

 作曲家のローラン・ディアンス(1955~)はフランスのギタリストで、現在はパリ・コンセルバトワールの教授しています。時折来日してリサイタルやマスター・クラスを開いているのでその演奏を聴いた人も多いのではと思います。この曲の出版は1985年で、我が国では福田進一氏の録音(「21世紀のタンゴ」1987年)などで知られるようになりました。また2000年前後に村治佳織さんがテレビ・コマーシャルでこの曲を演奏して、さらに人気が上がりました。



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なぜか日本語でタイトルが付いている、日本向けの出版? 作曲家名は「ディアンヌス」と表記されている。




”空”のタンゴではない

 譜面のほうは、フランスの出版社(アンリ・ルモワンヌ社)のものですが、なぜか日本語のタイトルが付いています。日本用に印刷されたものなのでしょうか。そこには「なめし皮のタンゴ」と記されていて、「スカイ」は「空」ではなく、「皮」の意味だそうです。同じ皮でも本当の皮ではなく、「合成皮」の意味だそうで、要するに本当の「タンゴ」ではなく「模造品のタンゴ」と言った意味のようです。



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タンゴ・アン・スカイが我が国の愛好者に知られるきっかけとなった福田進一氏のCD(「21世紀のタンゴ」1987年)。その前にはドイツのギタリスト、トーマス・ミュラー・ペリュングなどが弾いていたような。


歯切れの良いリズムと息をのむスリリングさ

 この曲は短い曲ですが、タンゴらしい歯切れのよいリズムと息をのむスリリングさが魅力の曲です。もちろんそう聴こえるように弾くにはかなり技術が必要です。以前はコンクールなどでも演奏されることがありましたが、最近ではリサイタルのアンコール曲などとして演奏されることが多いようです。



タイムは正確に取らなければならない

 曲の性格上、ある程度自由な弾き方が可能ですが、しかしタイムは正確に刻まないといけないでしょう。かなり細かい音符が多いですが(最高で1拍12個)、それらを正確なタイミングで演奏することが要求されます。

 タンゴらしい軽いリズムを刻むのは重要ですが、同時にメロディもしっかり(やや粘り気味に!)歌わせなければなりません。確かに”ウケル”曲ではありますが、ウケル演奏をするためにはかなりの実力が必要でしょう。





<第10位>  サンバースト(アンドリュー・ヨーク)

 今日はもう1曲いってしまいましょう、この曲も上記の「タンゴ・アン・スカイ」と並ぶ最近の人気曲で、どちらがランキングの上位でもおかしくないでしょう。アンドリュー・ヨークはアメリカのギタリスト兼作曲家で、ロサンゼルス・ギター・カルテットの一員でもあります。この曲の出版は1986年で、同年にCD録音もしています。


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プラヴェート盤のようなCD

 その1986年の録音は「パーフェクト・スカイ」というCDですが、ブックレットなども付いてなく、いかにもプライヴェート盤といった感じです。このCDには、他に「日曜、朝、曇り」などのオリジナル曲と「星に願いを」などの編曲もの、さらにバッハの「アレグロ」(リュートのためのプレリュード、フーガ、アレグロより)なども収録されています。

 因みに、このCDでは「サンバースト」はスチール弦の楽器(いわゆるアコースティック・ギター)で演奏されています。


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ヨークのデビュー盤と思われるCD(パーフェクト・スカイ)。 プラヴェート盤みたいな感じだが、なかなか面白い



アンドリュー・ヨークは1980年代まで我が国ではほとんど知られていなかった

 一般にこの曲が知られるようになったのは1988年にジョン・ウィリアムスが録音によってですが、このCDが日本で発売された当時(1989年)、解説者の浜田慈郎氏もこのギタリストやこの曲について何の情報もなかったそうです。以後この曲の人気は急上昇して、今やランキング、トップ・テン入り!

 ヨークの作風はどちらかと言えばクラシックというよりポピュラー系で、最近の言葉では「アコースティック・ギタリスト」に近い感じがあります。そうした点も人気のポイントとなっているでしょう。


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このサンバーストが多くのファンに知られるようになったウィリアムスのCD(「スピリット・オブ・ザ・ギター」1988年)



①⑥弦を「レ」に下げる変則チューニングが面白い

 この曲は①弦と⑥弦をそれぞれ「レ」に下げるという変則チューニングで、それが面白い効果を出しています。中間部は16分音符の速いパッセージの上にメロディが乗るテクニカルな部分になっています。

 従来のクラシック・ギターの曲に馴染んだ人だと、ちょっと変則的な曲で、なかなか弾きにくいかもしれませんが(特に①弦が「レ」なので譜面を読む時に戸惑う)、ポピュラー系の音楽に親しんでいる人だと、意外と抵抗は少なく、すくなくとも「タンゴ・アン・スカイ」よりは弾きやすいでしょう。

 しかしやはりリズム系の曲で、正確なタイムをとることは絶対に必要となるでしょう。これは最近の曲のほとんどの曲について言えます。
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