中村俊三 ブログ

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クラシック・ギター名曲ランキング

<第16位> 大序曲(マウロ・ジュリアーニ)


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マウロ・ジュリアーニ(1781~1829)


満を持しての登場

 ソルと並ぶ古典派時代の大ギタリストと称されるのジュリアーニも、そろそろ登場しなければならないでしょう。やや遅くなってしまった感はありますが、その作品がギターのコンサートプログラムにのぼる頻度からすれば間違いなく10本の指には入るでしょう。



絶対的な名曲がない?

 出番が遅くなってしまった理由の一つとして、ジュリアーニの作品の中で、どの曲を選んだらよいかがはっきりしなかったということもあります。つまりソルの「魔笛による変奏曲」とかタレガの「アランブラの想い出」、ロドリーゴの「アランフェス」とかいったような、この作曲家ならこれといった絶対的な代表作がはっきりしないと言うことです。

 独奏曲に限定すれば、他に「ソナタハ長調作品15」、「ヘンデルの主題による変奏曲」、「英雄ソナタ」、6曲の「ロッシニアーナ」などが候補に考えられますが、 ジュリアーニらしい華麗さと言った点で、ほんの少しこの「大序曲」の人気が優っているように思います。



聴きたい曲というよりは弾きたい曲

 その華麗さに加えて、演奏者の技術、特に速弾きがアピール出来る点で、プロ、アマを問わずテクニックに自信のあるギタリストに好まれています。どちらかと言えば「聴きたい曲」というより「弾きたい曲」と言えるかも知れません。確かにこの曲を華麗に、またスピーディに弾ききったときの爽快感は格別かも知れません。

  一般的にこの曲はメトロームで110~140くらいで演奏されると思いますが、華麗さを出すには、ただ速いだけでなく、充実した音量、音質も必要です。また基本的に古典的な曲なので、曲の構成をしっかりと把握した演奏でなければならないでしょう。



大事なところでテンポが落ちてはいけない

 部分的なところでは、3連符のところをスピード、音量ともに落とさずに弾くのがたいへん難しく、ここにきて急にテンポが落ちたりすると、まさに「振り上げた拳」の収まりどころがなくなってしまいます。ここだけの話ですが、私の場合は、この部分を親指と中指をほぼ同時に弾いて、3連符ではなく、通常の16分音符のように弾いています ・・・・・他言無用(聴けばわかる?)。

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この3連符でテンポが落ちてはならない。なおかつクレシェンドして音量を上げるのはなかなか難しい。私の場合は親指と中指をほぼ同時に弾いている。またアルペジオの向きが変わるところ、つまり親指が2回続くところは譜面どおりの音価で弾くのは不可能。



独奏曲以外のほうが 

 しかし、私個人的にはジュリアーニの場合、独奏曲よりも協奏曲他の楽器などとの二重奏曲のほうが素晴らしいと思っています。まず何といっても3つの協奏曲で、テデスコやロドリーゴなどによってギター協奏曲が作曲される1930年頃までの、最も優れたギター協奏曲といってよいでしょう。



協奏曲に向いている

 弦楽のみのオーケストラで演奏される「第1番イ長調」は、本来堂々たる2管編成のオーケスラのために作曲されており、そのオーケストラ部分もたいへん充実したものになっています。ギターのソロ・パートも、ジュリアーニの場合元々装飾的なパッセージが多いので、構築性を必要とする独奏曲よりは、こした協奏曲に向いていると思います。
 


当時の一般的な協奏曲と比較しても

 当時のギター以外の協奏曲と比較しても、平均以上に優れた協奏曲といってもよいのではないかと思います。モーツアルトやべートーヴェンの協奏曲に並ぶとまではゆかないとしても、それほど遜色のない協奏曲ではないかと思います。



他の楽器との二重奏曲では

 他の楽器との二重奏曲としては、「ヴァイオリンのギターのためのソナタホ短調作品25」がたいへん素晴らしい曲だと思います。4楽章形式の堂々たるソナタで、この種の曲としては最大の規模と充実度を持っていると思います。華麗さに加えて、美しいメロディと聴く側の満足度もたいへん高いと思います(そうでなければ名曲だはないが)。

 「フルートとギターのためのソナタ作品85」も4楽章形式の規模の大きい作品で、こちらの方がやや演奏される機会が多くなっています。「作品25」のほうは短調ということもあって重厚な感じですが、こちらはイ長調で軽快な感じです。

 ギターどうしの二重奏では「協奏的変奏曲作品130」が人気があり、聴きごたえのある曲です。ジュリアーニのギター二重奏曲としては最も演奏される曲ですが、1stはかなり技巧的です。

 

ソルのギター曲は自己完結

 若干話が変わりますが、交響曲やオペラなども作曲、あらゆる分野の音楽に精通していたソルには協奏曲や室内楽などのアンサンブル系の作品は残されていません。ソルのギター曲はそれ自体で完結していて、あえて他の楽器と合わせる必要がなかったのかも知れません。

 それに対して、前述のとおり、ジュリアーニの音楽は装飾的な部分が多く(速いアルペジオやスケールが多い)、音楽の骨格的な部分は他の楽器(オーケストラや弦楽四重奏)にまかせて、ギターの方は思う存分華麗なパッセージを弾くと言ったスタイルが合っているのでしょう。



性格の違い?

 それに加えて性格的な部分も関係しているのではないかと思います。ジリアーニは当時ウィーンで活躍していたピアニストのフンメルなどとも室内楽のコンサートを定期的に行ったり、またベートーヴェンの交響曲第7番の初演にも加わっています。当然ベートーヴェンとも親交があったと考えられ、当時のウィーンの音楽界にそれなりの人脈をもっていたのでしょう。

 おそらくジュリアーニは社交的な人で、少なくともウィーンにいる間は多くの音楽家と交流があり、またそれを好んだのではないかと思います。それがジュリアーニの作品にも反映しているのでしょう。

 一方パリやロンドンなどで活躍したソルは、当時からギタリスト、および作曲家として高い評価を得て、多くの音楽家にその名は知られていたと思いますが、ギター以外のジャンルの音楽家との交流から生まれ作品などは残されていないようです。ソルの「ギタ―教則本」の文章などからしても、あまり社交的ではなさそうですね。



ウィーンという街が協奏曲を書かせた

 もっとも、ウィーンという音楽の都がジリアーニに協奏曲や室内楽を書かせたといってもよいのかも知れませんね、ジュリアーニにしてもこういった作品を書いたのは十数年間のウィーン滞在の期間だけだったようです。

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