中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

今日(5月4日)石岡市ギター文化館で第9回シニア・ギター・コンクールが行われました。結果を報告しておきます。


シニアの部(55歳以上)

第1位  山崎文朗(静岡県)  プレリュード(モレーノ・トロバ) 
第2位  山本英雄(茨城県)  12月の太陽(ゲーラ)
第3位  鈴木幸男(茨城県)  魔笛の主題による変奏曲(ソル)  
第4位  加瀬英子(千葉県)  前奏曲第1番(ヴィラ=ロボス)
第5位  上原和男(千葉県)  プレリュード、舟歌(カヴァティーナ組曲より ~タンスマン)
第6位  鹿野誠一(北海道)  ソナタ ハ長調OP.15-2(ソル)
第7位  堀田京子(千葉県)  カプリス形式のアラベスク(クレンジャンス)



ミドルの部(35~54才)

第1位  坂本 亮(東京都)  ロマンティコ(5つの小品より ~ピアソラ)
第2位  浮海祥治(愛知県)  セリージャ(アルベニス)
第3位  増田泰隆(石川県)  捧げる言葉(グラナドス)、アレグロ・ノントロッポ(sッソナタ第3番より ~ポンセ)
第4位  松田利枝(滋賀県)  ラ・ミラネーゼ(クレンジャンス)、ワルツ・ショーロ(ヴィラ・ロボス)
第5位  相川 明(東京都)  練習曲Op.6-11(ソル)、島へ(武満徹)
第6位  桧山政広(青森県)  アラビア風奇想曲(タレガ)




シニア部門

 シニア部門の予選にはエントリーしていた36名全員が出場しました。課題曲はタレガの「ラグリマ」ということで、出場者も日頃から弾いている曲ではないかと思います。それだけに日頃どのようにギターに取り組んでいるかということがよくわかる曲でしょう。

 ますます出場者も多くなってきて、予選通過もなかなか難しくなってきているシニア部門ですが、通過のために必要なこととして、まず第1番に”音作り”ではないかと思います。どのような演奏をしても、まずその素材が良くなければよい演奏にはなり得ないでしょう。

 次にテンポの設定、どのようなフレージングになっているか、どう歌わせるか、作曲家の意図は、さらに疎の時代の演奏様式は、となってゆくのでしょう。




 本選、第1位の山崎さんは明るく、クリヤーな音で、3曲とも”ほころび”的な部分もなくたいへん安定した演奏で、大多数の審査員の支持をえました。もっと曲想の変化や、舞曲としての躍動感などが加わればさらに素晴らしい演奏になるのではと思いました。

 第2位の山本さん の曲はアルペジオに乗せてメロディを歌わせるといったタイプの曲で、部分的にはたいへん美しいところもありましたが、込み入ったところではメロディがやや硬質になる傾向があるようです。ほとんどミスのない演奏でした。

 第3位の鈴木さん の「魔笛」は曲の内容を熟知した演奏に感じられました。審査員からは「第1変奏の拍節感が逆」とか「テンポが上がるべきところを落としている」といった意見も出されましたが、「誰でも知っている、こうしうた古典的な曲に挑戦するのは評価できる」といった声も多くありました。

 第4位の加瀬さん の「前奏曲」はメロディをたいへんよく歌わせた、美しい演奏でした。しかしその低音のメロディが伴奏に対してやや不鮮明にも感じられました。これは音量だけでなく、音質も関係していると思います。

 第5位の上原さん はタンスマンの「カヴァティーナ組曲」からの2曲で、「プレリュード」のほうは、ミスの少ないよくまとまった演奏でした。しかしこの曲は精密機械のような曲なので、さらにクリヤーに弾く必要もあるでしょう。「舟歌」もよく歌っていたのですが、音質がやや細かったとの声がありました。

 第6位の鹿野さんのソナタは若干のミスなどのせいか、テンポ、およびタイミングが乱れてしまったのが残念でした。確かにこうした古典的な曲に取り組むのはよいこと、というよりは絶対に必要なことと思いますので、改善できる点は改善し、さらに仕上げていただければと思います。

 7位の堀田さん はかなり難しい曲に挑戦でしたが、残念ながら時間オーバーということで、この順位となりました。堀田さんはこうした難曲を弾きこなす実力者であるのは確かですが、楽譜に書かれた様々な指示や音価を忠実に守ることで、より深く、変化のある曲になるのではと思います。




ミドル部門

 ミドル部門の予選はソルのロ短調のエチュード((Op.31-4)でしたが、一部の国内版で、2小節目の「ラ」にシャープが付いたものがあり、ちょっと心配したのですが、その必要はなかったようです。

 速度が「アンダンテ」ということですが、どちらかと言えば遅めのテンポで弾く人が多かったようです。「アンダンテ」はそれほど遅くはないと思います。要するに速くも、遅くもないテンポかなと思います。

 またシニアの部と同様、音が細めで、不鮮明な人が多いのもちょっと気になりました。たとえ弱音で弾いてもはっきりと聞こえる音でなくてはならないと思いますし、また大きいだけでなく、それに質感が伴わなければならないと思います。



 本選第1位はピアソラを弾いた坂本さん ですが、昨年3位から今年は1位ということになりました。今回の「ピアソラ」はたいへんよくまとまった印象がありますが、「キレ」とか「セクシーさ」が加われば、さらに聴く人の気持ちを掴む事が出来るでしょう。

 第2位の浮海(うかい) さんはアルベニスの「セビージャ」を華やかに演奏しました。客席の反応もよかったのではないかと思いますが、さらに躍動感とか、込み入った部分でのテンポの遅れなどを解消すればより素晴らしい演奏になるでしょう。

 第3位の増田さん のグラナドスはたいへん美しくメロディを歌わせ、審査員の間でもたいへん好評でした。ポンセのほうは、曲がちょっと難しかったかな。

 第4位松田さん のクレンジャンスはなかなかよかったのですが、ワルツ・ショーロのほうは若干崩れてしまいました。音は質感があってよかったと思います。

 第5位の相川さん のソルのエチュードはなかなか美しく弾いていたのですが、やはり音が不鮮明な感じがしました。非和声音の解決に仕方に問題といった声もありました。「島へ」もメロディを美しく歌わせていました。

 第6位の桧山さん は「アラビア風奇想曲」を、たいへん美しい音で弾きましたが、やはりステージで演奏するにはちょっと音が小さすぎたかも知れません。途中で若干混乱してしまいました。




演奏者は通訳のようなもの、時には意訳も

 私自身、演奏者は”通訳”のようなものと思っています。まず何と言っても作品の内容を聴く人にわかりやすく伝えるのが最も大事な仕事です。さらにはその作品の良いところを出来るだけ多く引き出し、聴く人にその音楽の魅力を感じてもらうかということになるでしょう。原文に忠実に訳することも必要ですが、時には大胆な意訳が必要な時もあります。

 もちろんそれは決して簡単なことではありませんが、それが出来た時に最も音楽をやる楽しさが感じられるのではと思います。
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