中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ウィレム・メンゲルベルク

 先日話したウィレム・メンゲルベルク(1871~1951)とアルトゥール・トスカニーニ(1867~1957)のベートーヴェン交響曲全集を聴いてみました。メンゲルベルクのものは1940年のライブ録音ということで、それなりに覚悟して聴いてみたのですが、思ったほど音質は悪くなく、結構普通に聴けました。最近のリマスタリング技術のおかげかも知れません。もっとも当時の状態のよいSP盤を、よい再生装置で聴くと、CD化されたものよりずっとよい音なのだそうですが。


 メンゲルベルクの演奏は話でしか知らず、初めて聴くのですが、その話どおり、交響曲ながらテンポ・ルバートし、弦楽器はポルタメントという演奏です。「悪酔いしそうだ」という人もいますが、私の場合、ギターで慣れているせいか、珍しい演奏だとは思いましたが、悪酔いまではしませんでした。


 テンポ・ルバートといえば同時代のフルトヴェングラーが有名で、その緩急の差はフルトヴェングラーのほうが大きいかも知れませんが、フルトヴェングラーはわりと大きな流れでテンポを変えてゆくのに対し、このメンゲルヴェルクはかなり小刻みに、極端にいえば1音1音長さを変えるような感じです。そのあたりが「悪酔いしそう」な理由かもしれません。要するにオーケストラの演奏というより、ほとんど独奏楽器のようです。


 しかし、このような演奏が出来るというのはたいへん高い技術と練習時間があってのことと思います。ライヴ録音にもかかわらず、これだけテンポをルバートしても破綻などほとんどなく、本当に「独奏楽器」のように演奏しています。おそらくパート練習などから丹念に仕上げていったのではないかと思います。あまりテンポの変化しないところでも
1音1音よく聴くと「ジャスト」のタイミングあり、「ためぎみ」あり、「前ノリ」ありと、1音1音がすべて指揮者の意図どおりのタイミングで出されているように感じます。


 フルトヴェングラーの演奏に比べると、全体的にテンポは速めで、力強さも十分に感じる演奏です。このような演奏は好みが分かれるところでしょうが、一聴する価値が十分にある全集だと思います、少なくとも退屈することはないでしょう。


アルトゥール・トスカニーニ

 トスカニーニのベートーヴェンは前述のフルトヴェングラーと並び、評価の高いものです。これまで第5,8番だけはCDで持っていたのですが、CD化した時ノイズをカットしたせいか、音質がかなり硬化し、また「つまり」気味にも聴こえ、良い演奏だとは思いながらも、あまり聴く機会が少ないものでした。それが、今回の全集(1951~1953)ではその音質がかなりよくなり、ほとんど不満を感じさせないものになっています。最近はこの古い録音のレマスタリング技術がかなり上がっているのでしょうね。


 全曲聴いたわけではありませんが、やはりトスカニーニの演奏はすばらしい、フルトヴェングラーやメンゲルヴェルクと違い、イン・テンポを基調とした演奏ですが、不自由だったベートーヴェンの耳の奥で鳴っていたのはこんな音だったのではないかと思わせる演奏です。ただあくまでもハイテンションで、最後まで聴いているとちょっと疲れるかも知れません、少なくともホットする演奏ではないでしょう。もっともベートーヴェンですからそれでよいのでしょうが。テンポは速めで、最近のオリジナル楽器系の演奏に近いくらいです。もっともオリジナル楽器系の演奏は、速いが全体に軽く、また「遊び」が少し入ったりもしますが、トスカニーニの演奏では余計なものなど全くなく、なおかつ重厚で、重戦車が全速力で走るような迫力を持っています。


ブルーノ・ワルター

 ついでにすでに持っていたブルーノ・ワルターの「田園」や「第9」の第1楽章なども聴きなおしてみました。ステレオ録音が始まったばかりの1958年の録音ですが、音質は前の二つとは比べ物にならないくらい良くなっています。おそらく当時の音楽界の重鎮をむりやり担ぎ出しての録音とあって、当時の最先端の技術を結集しての録音だったのでしょう、その年代としてもかなりレヴェルの高い録音になっています。おそらく各パートごとにマイク・スタンドを立てての録音と思いますが、各楽器が鮮明に聴こえ、また音の広がり感などは前述のものとまるで違います。


 ワルターの演奏はどこがどうのということはあまりありませんが、引き締まった細部、中庸なテンポと全体のゆったり感、どっぷりと「浸かれる」演奏です(もちろん「疲れる」のではなく)。ただ当時の「売り」だったのでしょうが、やや強引な「ステレオ感」がちょとじゃま。


カール・ベーム

 またまたついでにこれまでよく聴いていたカール・ベームのもの(第4,6番)も聴いてみました。録音のほうは1970年代のいわば「アナログ円熟期」とでもいえるでしょうか、もう特に言うことはありません。かつてわが国ではカラヤンと人気を二分した指揮者ですが、今はどうなのでしょうか?ベームの演奏は「廊下を直角に曲がる」ような演奏で、余計なことはいっさいせず、ひたすらスコアを音するといった演奏で、最初のメンゲルヴェルクの正反対の演奏と言えます。非常に高い技術を持ったウイーン・フィルがこの「ルーティーン」をやるわけですから、1音1音くっきりとした、極めて精度の高い演奏になっています。人によっては退屈を感じる人もいるかも知れませんが、「掛け値なし」のベートーヴェンが聴こえてきて、大きな感動に繋がることもあるでしょう。


 どちらかと言えば昔のほうが個性的な演奏家が多かったようですね、他に、シューリヒトとかムラヴィンスキー、クリュイタンス、エーリッヒ・クライバーなどの演奏も聴いてみたくなりました。

 
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