中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

プログラムの作り方 6

  =フランシスコ・タレガのプログラム=




<第1部>

1. ヴェルディ : メロディ(シチリア島の夕べの祈りより)
2. アリエータ : マリーナの小品
3. タレガ : スペイン幻想曲
  * 声楽家による独唱 
4. メンデルスゾーン : 無言歌
6. タールベルク : 葬送行進曲
  * 独唱



<第2部>

  *独唱
1. ゴットシャルク : グラン・トレモロ
2. タレガ : ベニスの謝肉祭による変奏曲
  *独唱
3. タレガ : 演奏会用練習曲
4. タレガ : スペインの調べ

  <アンコール曲>
  ゴットシャルク : グラン・トレモロ
  アルベニス : タンゴ・カディス
  ニーナ・パンチャ : チューラの子守唄
  アフリカーナのモチーフによる幻想曲

      1889年7月13日 バレンシア 商業協会




tarrega 001
写真は1906年のコンサート



<第1部>

1. メンデルゾーン : ロマンス
2. シューマン : 子守唄
3. アルベニス : セレナータ
4. シューベルト : メヌエット
5. タレガ : 演奏会用練習曲
6. タレガ : スペイン幻想曲


<第2部>

1. アルベニス : スペインのセレナード
2. ショパン : マズルカ
3. ショパン : ノクターン
4. マラッツ : スペインのモチーフ
5. モーツァルト : メヌエット、 パストラーレ
6. タレガ : パガニーニの主題による変奏曲
7. タレガ : スペインの調べ

  <アンコール曲 ~ダニエル・フォルテアとの二重奏>
  モーツァルト : メヌエット
  ビゼー ~タレガ : 「アルルの女」の主題による変奏曲
  ベートーヴェン : メヌエット(ピアノ・ソナタ第20番より)
 
     1904年10月20日 カステリヨン 参事会室




36才と51才の時のリサイタル

 アドリアン・リウスの「フランシスコ・タレガ」に記載されているプログラムを二つほど書き出してみました。 タレガは1852年11月21日の生まれですから、それぞれ36才と51才の時のリサイタルです。

 なるべく若い頃のプログラムも挙げておきたかったのですが、曲目が完全に記載されているものとしては、この1889年のものが最初です。 この1889年のものはタレガの独奏の間に4曲ソプラノの独唱があります(ピアノ伴奏)。 こうしたことは当時よく行われていたのでしょう。




「アランブラの想い出」も、「アラビア風綺想曲」も入っていない

 この二つのプログラムは、大ざっぱに言えばほぼ同じような構成で、リウスの書からすると、タレガの場合若い頃から晩年に至るまで、プログラムの作り方としてはあまり変わらなかったようです。

 この二つのプログラムでみなさんが真っ先に気付くのは、まずこのプログラムの中に私たちがタレガの作品としてよく知っている「アランブラの想い出」や「アラビア風綺想曲」、 さらに「ラグリマ」、「アデリータ」、「マリエッタ」などと言った曲は全く見られないことでしょう。

 このうち「アランブラの想い出」は1899年頃に作曲されたようで、演奏されたとしてもそれ以降となりますが、少なくともタレガがこの「アランブラの想い出」として自ら演奏したという記録は確認出来ないようです。  「アランブラの想い出」がタレガの代表作として知られるようになったのは、やはりタレガの没後と言うことになるでしょう。

 「アラビア風綺想曲」は1889年ころ作曲され、1902年に出版され、タレガの生存中から多くの愛好者などに演奏されいたようですが、これもタレガ自身によって演奏された記録は見当たらないようです(別の曲名で演奏されている可能性はあるが)。 
 
 愛好者に人気のある 「ラグリマ」、「アデリータ」といった小品はタレガとしてはおそらく教材、あるは愛好者のための作品と考えていて、自らコンサートで演奏することは考えていなかったのでしょう。



純粋なオリジナル曲はない

 上の二つのプログラムからもわかるとおり、タレガは自らのリサイタルでは自らのオリジナル曲よりも、他の作曲家の作品を編曲して演奏することが多かったようです。 またオリジナル曲といっても、このプログラムに載せてあるものは全て、他の作曲家の作品からテーマをとっており、ある意味純粋なオリジナル曲はありません。



ソルやアグアードなど、他のギタリストの作品は演奏しなかった

 また自分以外のギタリストの作品が全くないというのも、大きな特徴でしょう。 タレガも若い頃はソルやアグアードなどの練習曲などを弾いていたことはあると思いますが、このソル、アグアードに加え、ジュリアーニ、コスト、メルツといった過去のギタリストの作品も、あるいは同時代のギタリストの作品もタレガが弾いたと言う記録はないようです。



聴衆に受け入れられることを優先した

 と言ったように、タレガのプログラムは今現在のギター・リサイタルとはだいぶ違ったものなのですが、 こうしたプログラムを組んだ大きな理由としては、 まず何といっても聴衆に受け入れられること、聴衆を楽しませることを最優先したからなのでしょう。



サルスエラからの編曲は人気があったと思われる

 タレガの編曲作品は当時流行したサルスエラ(スペインのオペレッタ)からのもの、そしてベートヴェン、ショパン、シューマンなどクラシック音楽の大家の作品からとなっています。 特にサルスエラからの曲は当時のスペイン人なら誰でも知っているもので、おそらく人気を博したと思わrます。 

 また当時中流以上の家庭ならどこにでもピアノが置いてあり、ショパンやシューマンの言った作品もよく親しまれていたのでしょう。 またこれらの作品をギターにアレンジして演奏すると言うことはタレガのこうした音楽家たちへの敬意の表れともいえるでしょう。



晩年には大作曲家の作品が中心になっていった

 この二つのプログラムで、多少違いがあるとすれば、1889年のもにはそのサルスエラからの曲(アリエータ、バンチャ)があるが、1904年のものには1曲もありません。 タレガの最晩年のリサイタルでもそうしたものはなく、オリジナル以外はすべてショパンやメンデルスゾーン、シューマンなど、ギター以外の大作曲家の作品の編曲となっています。

 タレガは年とともにこうした過去の大作曲家への敬意を強く持つようになったのかも知れません。 あるいは聴衆を啓発しようといった意識を持つようになったとも思われます。


 
  

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