中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

プログラムの作り方 7  

<フランシスコ・タレガのプログラム(2)>




「スペイン幻想曲」とか「スペインの調べ」なんて聴いたことがないけど?

 タレガのプログラムの続きです。 前回1889年と1904年のプログラムを記載しましたが、曲目はそちらを見てください。
タレガが演奏した曲は、ギターのオリジナル作品は少なく、ほとんどがギター以外の作品からの編曲だと言うことを書きました。

 1889年と1904年の両方のプログラムに、タレガ作として「スペイン幻想曲」と「スペインの調べ」という曲が入っています。 どちらも両方のプログラムに入っているのですから、タレガにとっては重要な作品に間違いないと思いますが、でも皆さん、タレガにこういった曲があるなんて知りませんよね?

 もしかしたら失われたタレガの名作?   ・・・・ではなく、これは今日「グラン・ホタ」と呼ばれている曲です。  どっちがですって? いや、どちらもです。   ・・・・だから、「スペイン幻想曲」も、「スペインの調べ」もどちらも「グラン・ホタ」だということです。



そんなのあり?

 意味がわからない?  確かに。  現在の常識で考えれば、意味が解りませんね、一つの曲に二つの別な曲名が付いていて、それが同じリサイタルのプログラムにそれぞれ載せてある、 つまり同じ曲に違った曲名を付けて2回演奏するなんて   ・・・・そんなのあり?

 タレガは特にこの「グラン・ホタ」を愛奏し、リサイタルでは必ず演奏していました。 それだけに曲名もたくさんあり、上記の3つ以外にも「大衆的スペインの歌メドレー」、 「スペイン民謡のメドレー」、 「ホタ」と題されているものにも「ホタ・アラゴネーサ」、 「ホタ変奏曲」などがあります。



タレガ



原曲は師、アルカスの作品

 これらの曲名からもわかるとおり、この曲はスペインの民謡(フラメンコの曲と言った方がいいかも知れませんが)を基に、タレガが変奏曲を作曲したもので、ギターの様々な技法が駆使され、”見た目”だけでも興味をそそるように出来ています。 おそらくリサイタルでは聴衆の受けもよかったのでしょう。



こんな形で同時代ギタリストの作品を演奏していた

 その変奏のいくつかはタレガの師であるフリアン・アルカスのものだそうで、アルカスの作品の再アレンジという面も持っているようです。 また今日「グラン・ホタ」として残されている譜面のイントロは、スペインのギタリスト、ホセ・ヴィーニャスの作品の一部だそうです。 タレガは同時代のギタリストの作品は公式には全く演奏しなかったのですが、実はこんな形で演奏していたようです。




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グラン・ホタの序奏部 ホセ・ヴィーニャスの作品を基にしている




固定されたものではなかった

 これらの曲は曲名は違っても、基本的には同じ曲ではありますが、タレガのことですから、おそらく演奏するごとに内容は違っていたのでしょう。 その日の気分や状況で演奏する変奏を選び、変奏の数なども固定してはいなかったのではと思います。 

 特に同じコンサートで2回演奏した場合は、曲名を変えるだけでなく、演奏する変奏も変えていたとも考えられます。 つまり一つの曲を二つに分けて演奏していた面もあるのかも知れません。 今日この「グラン・ホタ」の譜面は少なくとも4種類残されているそうですが、こうした事情を考えれば当然の事といえるでしょう。
  



「グラン・ホタ」と「ベニスの謝肉祭による変奏曲」は対

 「ベニスの謝肉祭による変奏曲」と「パガニーニの主題による変奏曲」も同一曲で、この曲もタレガが必ずリサイタルで演奏した曲です。 つまり「グラン・ホタ」と「ベニスの謝肉祭による変奏曲」はタレガのリサイタルでは必ずセットで演奏されていたということになります。



「ベニスの謝肉祭」の方がクラシック音楽的

 グリサンド奏法による「猫の鳴き声」など、両方の曲に共通する変奏もありますが、あえてこの両者の違いに注目すれば、「ベニスの謝肉祭」の方はメロディを歌わせることに主眼をおいた、やや伝統音楽、つまりクラシック音楽的で、 「ホタ」のほうはエンターティメント性の高いものと言えるかもしれません。 いずれにせよ、タレガは終生この2曲をかならずリサイタルで演奏していたようです。



他の作品も他の音楽家の作品をテーマにしたもの

 他にタレガ作として演奏されている曲は、他に「ゴットシャルクの大トレモロ」、「演奏会用練習曲」がありますが、どちらも他の作曲家の作品からの編曲、あるいは主題をとったものです。 「演奏会用練習曲」はタールベルクの作品から主題を取っています。 またどちらの作品もトレモロ奏法が用いられています。



やはり、だんだん盛り上がるようになっている

 プログラムの前半、後半の構成としては、前後半ともそれぞれ同じような構成になっているのが特徴です。 ほとんどの場合、メンデルゾーンやシューマンなどのやや”おとなしい”曲で始め、最後は自作の「グラン・ホタ」や「ベニスの謝肉祭」など華やかな曲で終わるといったような構成です。



二次会が本番?

 タレガは偉大なギタリストであるのもかかわらず、”あがり症”だったらしく、やはり後半にかけてだんだん調子上げてゆくタイプだったのでしょう。 おそらくアンコール曲あたりが絶好調だったのではと思います。

 さらにタレガの場合、コンサート終了後、お店などで”二次会”があったらしく、そこではもう、タレガのギターが止まらなかったようです。 タレガの親しいギター愛好家たちにとっては、こちらの方が”本番”だったのかも知れません。
 

 次回はアンドレ・セゴヴィアのプログラムです
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