中村俊三 ブログ

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プログラムの作り方 9

<アンドレス・セゴヴィアのプログラム 2>



ヴィンツェンツォ・ガリレイ : 6つの小品 (セゴヴィア編曲)

  1. プレリュード
  2. 白い花
  3. パサカリア
  4. クーランテ
  5. カンション
  6. サルタレッロ

ロベルト・ヴィゼー : 6つの小品 (組曲第9番ニ短調より、 12のみ組曲第12番ホ短調  セゴヴィア編曲)

  7. メヌエット(ロンド)
  8. アルマンド
  9. ガヴォット
  10. サラバンド
  11. メヌエット
  12. メヌエット

J.S.バッハ (セゴヴィア編曲)

  13. フーガイ短調 (原曲ト短調)BVW1000
  14. ロンド風ガヴォット (組曲ホ長調BVW1006bより)

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

フランツ・シューベルト (セゴヴィア編曲)

  15. メヌエット (ピアノ・ソナタト長調 D894より) 


アレキサンドル・タンスマン : カヴァティーナ組曲

  16. プレリュード
  17. サラバンド
  18. スケルツィオ
  19. バルカローレ
  20. ダンサ・ポンポーザ

エイトール・ヴィラ=ロボス

  21. 前奏曲第3番イ短調
  22. 前奏曲第1番ホ短調

マリオ・カステルヌオーボ・テデスコ

  23. セゴヴィアの名によるトナディーリャ Op.170-5
  24. タランテラ Op.87-1

<アンコール曲>
 
エンリケ・グラナドス
  25. スペイン舞曲第10番「悲しき舞曲」


  *1955年8月28日 エジンバラ・フェスティヴァル  フリーメースン・ホール




オススメのライブCD

 このプログラムは現在セゴヴィアのライブ盤としてイギリスのBBCからCDが発売されているもので、 モノラル録音ですが、音質もたいへんよく、何といってもセゴヴィアの絶頂期と言った感じで、演奏も素晴らしいものです。 セゴヴィア・ファンならずともオススメの一枚と言えるでしょう。

 上の曲目表記はなるべくCDに記載されている通りにしましたが、当日配られたものそのものではなく、CD制作の際に補足、修正したものではないかと思います。 このCDについては以前にもは当ブログで紹介しましたが宅に最初のガリレイとド・ヴィゼーの作品(とされている)については曲目表記などに大きな問題があります。



はっきりと時代順に並んでいる

 その曲名表記については、後で触れることにして、このプログラムは前半はレネサンス時代、バロック時代の作品、 後半はロマン派の作品と近現代の音楽と、はっきり時代順に並んでいます。 なお前半、後半に分けたのは私の判断ですが、おそらく間違いないでしょう。

 前回も書いたとおり、1930年代からセゴヴィアはこのように作品を時代順に演奏するようになりました。 それは他のクラシック音楽のコンサートの影響と思われますが、 この後1980年頃まではギターのリサイタルといえば、このように作品をその時代順に並べるのが常識となっていました。



技術的に易しい曲から始めている

 ルネサンスやバロック時代の曲が必ずしも技術的に平易というわけではありませんが、セゴヴィアのプログラムでは、やはり古い作品は比較的易しいものが多いようです。 こうしたことも作品を時代順に演奏する理由の一つなのでしょう。 前半では二つのバッハの作品あたりで難しくなり、この辺が最初のヤマ、つまり”魚料理”といったところでしょうか。 



後半はロマン派、および近、現代

 後半はシューベルトの編曲にタンスマン、ヴィラ=ロボス、テデスコの作品となりますが、この中でセゴヴィアとしてはおそらくタンスマンの「カヴァティーナ組曲」にウエイトと置いていたのではないかと思います。

 何といっても組曲の全曲(ダンサ・ポンポーザを含む)演奏ですし、1951年に作曲されたばかりで、この年(1955年)にセゴヴィアはスタジオ 録音しています。 確かにこのカヴァティーナ組曲は素晴らしい演奏で、音質、演奏内容ともそのスタジオ録音に勝るものと言えるでしょう。 



最後はスペインものではなくテデスコの作品

 最後はスペインものではなく、テデスコの作品となっていますが、自分のために作曲された曲(トナディリャ)と華やかな曲(タランテラ)を弾いています。

 その代わりにアンコールでグラナドスのスペイン舞曲を弾いているわけですが、 おそらくアンコール曲は他にもあったと思われます。 しかしこのCDでは時間等の関係でこの曲のみの収録となったのでしょう。




正しい曲名表記

 さて曲名表記のほうですが、最初の6曲を正しく表記すれば次のようになるでしょう。


16世紀のイタリアノリュートのための作品より キレソッティ編曲 : 6つの作品
  1.アリア
  2.白い花
  3.ダンツァ
  4.ガリャルダ
  5.カンション
  6.サルタレッロ

 

 ヴィンツェンツォ・ガリレイは有名なガリレオ・ガリレイの叔父にあたる人だそうで、リュートを弾いていたのは確かだそうです。 この6曲の中のいずれかはこのヴィンツェンツォの作曲である可能性はゼロではないとしても、その確証はなく、一般には「作者不詳」とされています。 また「白い花」はチェザレ・ネグリの作品と断定されています。





 ド・ヴィゼーの作品はもっと複雑ですが、なるべく正確に書くとすれば次のようになります。

ロベルト・ド・ヴィゼー : 組曲ニ短調より
  7.第1メヌエット
  8.アルマンド
  9.ブーレ
  10.サラバンド
  11.第2メヌエット(組曲ホ短調のメヌエットを中間部として挿入)

マヌエル・ポンセ : 組曲ニ長調より
  12.クーラント




なんと、ド・ヴィゼーの作品ではない

 なんと、12.はド・ヴィゼーの作品ではなく、20世紀のメキシコの作曲家マヌエル・ポンセの作品です。 おそらくセゴヴィアはヴィゼーの作品がやや暗いので、明るく華やかな曲が最後に欲しいと言うことで、このポンセの作品をヴィゼーの作品であるかのように装い、プログラムに入れたのでしょう。



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マヌエル・ポンセの組曲ニ長調の「クーラント」  バロック風といえばバロック風だが、ヴィゼーの作品とはだいぶ違う感じ



 この曲は1967年に5曲からなる「組曲ニ長調」として出版されますが、同じ組曲の中の「プレランブロ」をヴァイス作、「ガヴォット」をアレッサンドロ・スカルラッティ作としてセゴヴィアは発表しています。



ばらばらにして再編成?

 メヌエットのほうも複雑で、本来ダ・カーポ形式で組み合わせて演奏すべき第1、第2メヌエットをばらばらにし、なおかつ第2メヌエットのほうは別の組曲のメヌエットと組み合わせて演奏しています。 その事からすれば低音などを追加して本来軽い感じの曲を重厚なものにしているなどあまり問題ないことかも知れません。



ブーレをガヴォットと間違えた? でもそう間違えてもおかしくない

 「ブーレ」を「ガヴォット」と表記したのは単純ミスかも知れませんが、セゴヴィアはこのブーレの最初の二つの音を本来の8分音符から4分音符に変更していて、確かにこれではガヴォットに聴こえてしまいます(ガヴォットとブーレの区別が出来人なら)。 おそらくナポレオン・コストの影響と思われますが、 ナルシソ・イエペスも「禁じられた遊び」の中で、同じように弾いています。



セゴヴィアにとっては曲名や作曲家名は重要でなかった?

 セゴヴィアにとっては曲名とか作曲者名など重要なことではなかったのでしょうが、 でもこれではリサイタルを聴きに来た人やCDを買った人は混乱してしまいますよね。 特に真面目な人ほど。

 「ド・ヴィゼーの最後のメヌエットすごくいい曲だと思うんだけど、楽譜どこから出ているのかな?」 と思ったとしてもそう簡単には見つかりませんね、 まさか別の作曲かの作品だとは思わないでしょうし ・・・・賢明な愛好者だったらヴィゼーの作品にしてはおかしいと思うかもしれないが。

 なお他の曲の方は特に大きな問題はありません。
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