中村俊三 ブログ

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<アントン・ディアベリ : ギター・ソナタ全集>

第1番ハ長調  Ⅰアレグロ  Ⅱアンダンテ・カンタービレ  Ⅲメヌエット・アレグロ  Ⅳロンド・アレグレット
第2番イ長調  Ⅱアレグロ・リソルート  Ⅱアダージョ  Ⅲメヌエット・アレグロ  Ⅳロンド・アレグレット
第3番ヘ長調  Ⅰアレグロ・モデラート  Ⅱアンダンテ・ソスネヌート  Ⅲファイナル:アダージョ ‐ プレスト




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演奏者 Claudio Giuliani   使用楽器 Antonio Marin Montero 1993
録音 2012年  Brilliant



ディアベリはベートーヴェンの変奏曲で知られている

 アントン・ディアベリといえば、一般のクラシック音楽ファンなら、ベートーヴェンが作曲した「ディアベリの主題による変奏曲」を思い出すのではないかと思います。 その作品については 「ディアベリの作曲した取るに足らないテーマを用いてでも、ベートーヴェンは優れた作品を書いた」 などとベートヴェンの偉大さを表現するための比較対象にされてしまうこともあります。



ピアニスト、ギタリスト、作曲家、出版業者

 さらには出版業者としてシューベルトなど、当時のウィーンの音楽家の多数の作品を出版したことなどが知られています。 しかし本来は音楽家でピアニスト、及びギタリストであり、作曲家でもありました。 ミハエル、ヨーゼフ、の両ハイドン師事したと言われています。



少年期にはモーツァルトゆかりのザルツブルグでミハエル・ハイドンに師事した

 1781年の生まれだそうですが、少年時代にはザルツブルグで有名なヨーゼフ・ハイドンの弟のミハエル・ハイドンから音楽を学んだそうですが、ザルツブルグと言えばモーツァルトゆかりの地で、20歳代始めころまでいたところです。 この頃にはモーツアルトはウィーンに居を移し、1791年には亡くなってるので、直接会うことはなかったでしょう。 ヨーゼフ・ハイドンには成人してから師事したようです。



かなり本格的にギターをやっていた

 音楽家としてはイマイチ評価の上がらないディアベリですが、ギターの方は片手間にやっていたわけではなく、その作品からも本格的演奏技術を習得していたことが窺われます。

 そのギターの作品は独奏曲(練習曲的なもの、及び演奏会用作品)、ギター二重奏、 ピアノとのデュオなどかなりの作品数があるようです(何といっても自分で出版社をやっていたから)が、 その全貌はよくわかりません。 ギター界の方でも同時代のソルやジュリアーニなどに比べて不遇な扱いをされているのは否めないところでしょうか。



現在唯一の録音

 この「3つのソナタ」は独奏曲としては比較的 (あくまでも比較的ですが) 知られているものですが、3曲揃った録音としてはこれは初めてのものなのではと思います(正確にはわかりませんが)。 少なくとも今現在入手しやすいCDとしてはこれが唯一のものではないかと思います。



第1番は小ぶり

 上記のようにソナタ第1番は4つの楽章からなるハ長調のソナタで、他の2曲に比べると、どの楽章も短めになっています。 第2番はイ長調で書く楽章とも長めで、演奏時間も全体で20分以上になるでしょう。 第3楽章のメヌエットは単独でも演奏されることもあります。

 第3番ヘ長調は3楽章構成ですが、第3楽章には序奏がついており、4楽章的にもなっています。 つまりゆっくりした楽章が2つあるような感じになっています。 最後のプレストには 2分音符=128 というかなり速いテンポ指示があります。 内容的はこの第3番が最も充実しているように思えます。



ベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタぽい

 音楽の傾向としては美しくメロディを歌わせるというタイプではなく、短い素材で音楽を組み立ててゆくといった感じです。 ちょっと聴いた感じではベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタのような感じです。 おそらくディアベリがベートーヴェンから影響を受けたというより、ハイドン流の作曲法、つまりベートーヴェンとは兄弟弟子と言ったところなのでしょう。



ハイドンとベートヴェンの中間?

 第1番と第2番では第3楽章にベートヴェンのようにスケルツィオではなくハイドンのようにメヌエットを用いていますが、かなり速めのテンポ指示がされており、聴いた感じではスケルツィオ的です。 要するにハイドンとベートーヴェンの中間といったところでしょうか。




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ディアベリのソナタイ長調(第2.5番?)が収録されてあるブリームのLP(写真は復刻CDジャケット)


2番と3番を繋いでしまった?

 ところで、私がこのディアベリのソナタを最初に聴いたのはジュリアン・ブリームのLP(1969年録音)でした。 曲目表記は「ソナタイ長調」となっていて、当時は全くわからなかったのですが、その後聴き直してみると、なんと第3番の第1、2楽章に第2番の第3、4楽章を繋いであるではありませんか! 

 最もそのようなことはジャケットの解説を読めばどこかに書いてあったでしょうが、何分このLPは自分で買ったものではなく、友人から借りてダビングして聴いていたものでした。 



ただ繋いだのではなく

 しかし繋ぐと言っても第3番はヘ長調、第2番はイ長調ですから、このままでは繋ぐことは出来ません(東日本の電気器具を西日本で使うようなもの?)。 ブリームの演奏を聴いてみるとヘ長調の第3番第1楽章、第2楽章を長3度上げてイ長調にしているようです。

 特に第1楽章では、音程を上げているだけでなく8分音符を16分音符にしたり、音域を変更しりなど、随所で華麗な効果が出るように変更されています。 第2楽章は移調しているだけで変更は少な目です。

 もともとイ長調の第3楽章「メヌエット」はほとんど原曲どおりですが、第4楽章の「ロンド・アレグレット」は移調こそしていませんが、かなり大胆に書き換えられています。



でも、これって、反則技?

 結果的にはかなり”地味目”なディアベリのソナタが、華麗な古典派ソナタにリニューアルされています。 さすがジュリアン・ブリーム・・・・・・  と言いたいところですが、 チョット、マテ これって反則技じゃないの?  クラシック音楽の演奏の基本って、楽譜をしっかりと読み、作曲者の意図を正確に再現することじゃなかったっけ?  

 まあ、その辺の議論はややこしいので、置いておくことにして、少なくともこれはブリームの”芸風”ととらえるしかないでしょう。 屁理屈さえこねなければ、原曲よりブリーム編の方が面白いのは確かです。



ブリーム・ファンの方々にも

 ただそのブリーム編がお好きな方にも、原曲に忠実に演奏した、このジュリアーニ(いや、あの19世紀のマウロ・ジュリアーニではなく、このCDを録音したクラウディオ・ジュリアーニ・・・・・ これもチョットややこしいな)の「ディアベリ:ギター・ソナタ全集」のCDは是非買って聴くべきでしょう。





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ブリーム編のディアベリのソナタを録音したパク・キュンヒさんのCD


 比較的最近パク・キュンヒさんはこのブリーム編曲のディアベリのソナタを録音しています。 キュンヒさんが21世紀のギタリストであるなら、出来ればクラシック音楽の土俵の上で戦ってほしかったかな?
 

 
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