中村俊三 ブログ

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いろいろなシャコンヌ 3  ~ドイツのリュート音楽とヴァイスのチャコーナ



18世紀では、ドイツにおいてリュートが最も尊重されていた

 この時代、ドイツは文化や音楽などにおいては、イタリア、フランスなどからするとやや後進地域と言った感じがあり、リュート音楽もイタリアやフランスなどの影響を強く受けたものとなっていました。

 しかし、イタリアやフランスではリュートが下火になった18世紀において、逆にドイツではリュート音楽のピークを迎えることになります。 さらには、他の地域では全く忘れられた存在になっていた18世紀末においても、ドイツではリュートが演奏され続けていました。


ドイツのリューティストの代表と言えば

 ドイツのリュート音楽と言えば、まず何といってもシルビウス・レオポルド・ヴァイスの名を挙げるべきでしょう。 以前にもお話しましたが、S.L.ヴァイスは、親、兄弟など、その一族がほとんどリューティストで、本人の作品と一族の作品を合わせると、1500曲ほど現存するそうです。

 その中にチャコーナとされた曲が何曲あるのかはわかりませんが、私の手元あるCD、ブリラント・レーヴェルの「ロンドン手稿譜全集」12枚組の中に、3曲ほどチャコーナが収録されています。



ヴァイスのシャコンヌと言えば、イ短調 (原曲ト短調) のものが

 ヴァイスのシャコンヌ(チャコーナ)といえば、私たちギターを弾くものにとっては、一般にイ短調で演奏される有名な「ト短調」のものが最もなじみのある曲です。

 譜面もいろいろなものが出版されていますが、その中の一つには「組曲10番より」となっています。 基本的にヴァイスは自らの作品を組曲とはせず、ソナタと題していたようですが、ともかく「10」の数字の付くソナタ(2種類あるが)を当たってみても、このチャコーナは入っていません。 



なんと、フルートとの二重奏曲だった!

 別の譜面では「イギリス博物館所蔵」といったことも書いてあるので、このブリラント盤の中に必ずあるのではないかと思い、「もしや」、ということで、フルートとリュートのための組曲の方を聴いてみたら、なんとそこにこの有名なト短調のチャコーナがあるではないか!

  今までこのチャコーナを当然、独奏曲と思いこんでいましたが、実はフルートとの二重奏曲のパート譜だったようです。 しかし、英語で書かれてあるブックレットに目を通してみると、「reconstructed」の単語が。 どうやらフルート・パートはこのCDのための再現のようです。 



フルートのパート譜は失われ、リュートのパート譜のみ現存

 元々このチャコーナはフルート(正確にはフラウト・トラベルソ)とリュートのためのソナタト短調に含まる曲だが、リュート・パート譜のみ現存し、フルートのパート譜は失われてしまった。 そのリュートのパート譜を、これまで独奏曲と認識してリュート、あるいはギターで演奏してきた・・・・・  といったことのようです。



このCDではフルート・パートを復元(作曲)し、録音している

 あまり英語が得意でないので、なぜこのCDでは、この曲が独奏曲でなく、パート譜と認識し、失われたフルート・パートを復元(と言っても実質は作曲だが)して録音したのかはよくわかりませんでしたが、おそらくこの曲が元は二重奏曲だったという、はっきりした根拠はあるのでしょう。

 ちなみにこの曲に関する情報を検索してみたのですが、詳しいことが書かれてあるものにはたどり着けませんでした。 二重奏曲であることが認識されるようになったのは最近の事なのでしょうか。



リュートのパートはほぼ譜面通り

 さて、改めてこのフルートとリュートのためのソナタト短調(全6曲)の終曲のチャコーナを聴いてみると、リュート・パートは私たちが知っているものとほとんど変わりません。 装飾音なども特に追加していないので、要するに“楽譜通り”と言った感じです。




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ギターでは普通イ短調で演奏されるチャコーナ(原曲ト短調)。 ヴァイスの作品のなかでは人気曲の一つだが、どうやらこの曲は独奏曲ではなく、フルートとの二重奏曲のパート譜らしい。 たしかによく見れば動きのある変奏と和音だけの変奏とが交互になっている。 二重奏曲のパート譜だと考えれば合点がゆく。 同じ和音の小節が連続するのを避けるために一つの変奏が7小節になっているのは、以前にも書いた通り。



フルートとリュートが交互に前に出るようになっている

 リュートが8分音符や16分音符などで動いているところでは、フルートは休み、または控えめに音を出していますが、逆にリュートが4分音符で和音を弾いているところでは、フルートが活発な動きをしています。 つまりフルートとリュートが交互に主役と脇役を入れ替わる形になっています。

 確かにこの曲、メロディぽく動く変奏と、和音だけの変奏が交互にあり、「和音だけだと、ちょっと地味だな、演奏者がいろいろ装飾を加えろ、ということかな」 と思っていたのですが、なるほど、実はこういうことだったのですね。



以前にも書いたが、一つの変奏は7小節

 以前の記事(2007年)で、ヴァイスのチャコーナはケルナーのチャコーナ同様、7小節単位(最後のテーマのみ8小節)だということ書きましたが、ヴァイスの場合は3曲のチャコーナも、またパッサカリアもすべて7小節単位になっています。



ドイツのリューテスト独特の考え方か

 これは先行の変奏の最後の小節が、後続の変奏の最初の小節を兼ねる形になっているので、7小節になったわけです、おそらく、先行の最後の小節と、後続の最初の小節を別個にすると、同じ和音(主和音)の小節が2小節続くことになり、間延びした感じになると考えたのでしょう。

 こうしたことはフランスやイタリアのチャコーナにはあまりないようです。 もしかしたらドイツのリューティスト独特の考え方なのかも知れません。



ニ長調の「パッサカリア」とそっくりなチャコーナ

 もう1曲のヴァイスのチャコーナは 「ソナタ第6番(SW10)変ホ長調」 の7曲目です。 このチャコーナも聴き出すと、「あれ?」 と思います。 と言うのもこの曲のテーマは、ギターでもよく演奏される「パッサカリア ニ長調」とそっくりだからです。

 特に最初の4小節など、そのパッサカリアにトリルなどの若干の装飾を加えたと言った感じに聴こえます。   ・・・・・・ヴァイスはたくさんの曲を作曲したようだから、そんなこともまあ、あるかな・・・・



ヴァイスの場合もパッサカリアとチャコーナの区別ははっきりしていない

 その「パッサカリア」は「ソナタ第13番(SW18)ニ長調」に含まれますが、ヴァイスとしても、チャコーナとパッサカリアの区別はあまりはっきりしていないようです。

 一般的にはパッサカリアのほうが短調になりやすいとか、低音主題を厳密に守る傾向にあるとされていますが、それもあまりはっきりとはしていないようです。



イ長調のチャコーナは、親しみやすいテーマ

 さらにもう1曲のチャコーナは「ソナタ第8番(SW12)イ長調」に含まれます。 他の2曲よりのびやかで、メロディックなテーマと言え、耳に馴染みやすい感じはあるのではないかと思います。曲の構成や変奏の仕方などは他の2曲、パッサカリアも含めれば他の3曲とほぼ同じようになっています。

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