中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

 ギターを始めて40数年、これまで私が使った楽器はいろいろ合わせると、だいたい13本くらいになります。
私がギターを弾くようになったのは小学5年生の頃で、最初に弾いたギターは14歳上の兄が買ったギターで、詳しいことはよくわかりませんが、あまりよい楽器ではなかったと思います。
高校1年生の頃、その兄が「高級手工品(当時の価格で2万円前後?)」と書かれた楽器を買い、確かにそれまでの楽器よりは格段に音が出て、特に低音はよく出ると感じました。
しばらくするとその兄もあまりギターを弾かなくなって、結局この楽器は私がほとんど弾いていました。


 茨城大学に入学し、クラシック・ギター部に入っても、1年間くらいはその楽器を弾いていましたが、だんだんその楽器では満足ゆかなくなって、大学2年生になる頃、当時県内でギター製作をしていた富田修さんにギターを作ってもらいました。
富田さんは河野賢氏の弟子で、どちらかと言えば重厚な音質の楽器だったと思います。
その楽器で、当時茨城県民文化センターで行われていたギター部の定期演奏会で、2回ほど独奏などをしました。


 ギター教室の仕事を始めるようになった頃(まだ茨大在学中)、休憩時間にふと壁にギターを立てかけてしまい、それが倒れて側板を割ってしまいました。
ギターは側板を割ると致命的になり、音は即出なくなります(それ以来生徒さんたちにはギターを壁に立てかけないようにしつこく言っています)。
それを機にスペインの楽器で、当時たいへん人気の高かったホセ・ラミレスⅢ世を買いました。
この楽器は弦長が664mmあり(通常は650mm)、私のように手の小さいものには向かない楽器でしたが、なんと言っても音がたいへんよく出るのと、1960年以降のアンドレ・セゴビアが使っていたことや、当時習っていた松田晃演先生も使用していたことなどで、結局この楽器にしました。
確かによく鳴る楽器で、高、中、低音問わず明るくよく鳴り、また重厚さもあったと思います。
この楽器は30才くらいまで使用し、デビュー・リサイタルもこれで行いました。この楽器とともに私の今の仕事が始まったといえます。


 30才くらいになると、音楽の興味の対象が現代音楽や、ルネサンス、バロック音楽などになり、この「鳴りすぎる」というのが邪魔に感じるようになりました。
1981年頃ギター専門店のほうからヘルムート・ブッフシュタイナーと言う楽器を紹介されました。この楽器は、その頃雑誌でも「精緻な工作技術」というような内容で紹介されていて、話題にもなっていました。
それを手にとってみると、気品と透明感があり、もちろん「鳴りすぎる」こともなく、また標準サイズで弾きやすく、すぐにその楽器を買いました。
この楽器で2度のリサイタルを行いましたが、どちらもバッハのリュート組曲を中心としたプログラムでした(第1番と第2番)。


 この楽器は、確かにバランスもよく弾きやすい楽器でしたが、音量はあるとはいえない楽器でした。
音量は大きければよいというものではないでしょうが、ある程度はないと曲の抑揚が付けられなくなります。
またスペインものなどの華やかな音楽ではたいへん困ってしまいます。
この楽器を選んだのは「鳴りすぎる」ラミレスの反動だったかも知れません。
その頃「家内のため」ということで井田英夫氏の楽器を買い、私も結構弾いていました。
マイルドな音で結構使いやすく、発表会などでも弾きました。


 1984年の1月だったと思いますが、その前の年にリュート組曲第2番をやったことがきっかけで、多弦ギターに興味を持ち、今井博水氏の10弦を買いました。
この楽器はもともと特注品ということで、上質のハカランダを使用し、見た目もたいへん美しい楽器で、やわらかな音がしていました(この楽器は現在鈴木幸男さんが所有)。
その後ホセ・ラミレスⅢの10弦の出物があり、それも入手しました。この楽器は低音にはかなり重みがありましたが、高音、とくに1弦の12フレット付近の音色にはちょっと不満がありました。
これらの2台の10弦ギターで何度かコンサートも行いましたが、やはり難しい点もあり、使用していたのは約2年半くらいの間で、1986年には再びラミレスの6弦にしましたが、最初のラミレスに比べると影の薄いラミレスでした。


 その後もあまり落ち着くことなく、いろいろ楽器を見たり、弾いたり、時にはもう一歩で買いそうになったりしていましたが(スペインの楽器でサンチャゴ・マリンをほとんど買うつもりで1ヶ月近く弾いていました)、1988年に現在も弾いているヘルマン・ハウザーⅢ世に出会いました。
ハウザーⅠ世は弾いたことがないのでよく分かりませんが、一般にⅡ世、Ⅲ世の場合、力強い低音というのが特徴ですが、このハウザーⅢは中音から高音にかけて、特に2弦がよく鳴るのが特徴です。
1983年製作で、NO.88、ハウザーⅢとしては初期のもので、Ⅱ世がまだ存命中だったと思います。
この楽器との付き合いは私の使った楽器の中では最も長く、もう20年近くになります、その間創が使っていたこともありましたが、これ以後、私の主なコンサートはこの楽器を使用しています。
結果的に言えばこれまでいろいろ迷走してきましたが、やっと落ち着き先が決まったようです。

つづく
スポンサーサイト
コメント

さすがに様々なギターをお使いですね。私も多弦ギターに非常に興味があります。先日その今井博水の10弦ギターを触らせていただきました。調弦はイエペス式だったかな?不思議な調弦でしたが、とてもいい響きでした。11弦買おうかな?
2007/05/24(木) 10:15:56 | URL | リッキイ #-[ 編集]
10弦ギター
10弦過去にお使いだったようで、ご意見をお聞きしたいと思い、メールしました。
 私のメイン楽器はリュートですが、ギター関係のフェスティバルへの出演はギターでしか弾けない規約があるので11弦ギターで弾いています。
 11弦ギターにちょっと疑問を感じ、この夏私は、ギター弦数と調弦と運指の関係を色々考えていました。
11弦ギターは、リュートの代用として演奏会でも十分使用できますが、ギター音楽向きではないようです。つまり、6弦ギターの曲を、そのまま弾くと短3度高くなるので異様ですし、かといって移調した楽譜で弾くと、響きが変わるので、これも異様なので、もはや6弦ギターの曲の演奏が不可能です。
11弦ギターの巨匠セルシエルが、6弦ギターを併用するのは、そういうことなのでしょうね。
11弦ギターを練習しての大雑把な感想ですが・・・弦数が多い程、演奏の難易度は下がり、音質は犠牲になり、不利なように思います。
プロのギター演奏を聞いてみると、やっぱり6弦ギターが、最高のバランスだと感じます。
 最近私は、手持楽器を、10コースリュートと1本のギターに集約したいと思っており、づっと迷っており、10弦が選択に入っています。 
 リュート調弦の10弦ギターだと、2カポもしくは、3カポでそのままリュートの曲が原調で弾けるし、6弦までの使用で、普通のギターのように弾ける。
こうして、11弦と6弦のギターをカバー出来るので、この10弦ギター1本に集約出来ると思うのですが、
いかがでしょうか?
 ちなみに中村様が、今井博水氏の10弦使用されておられたとき10弦の調弦はリュート式だったのでしょうか?
2010/09/26(日) 22:33:00 | URL | Bestlute #h/Z8DjsU[ 編集]
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
http://mitoguitar.blog85.fc2.com/tb.php/7-26471ae0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック