中村俊三 ブログ

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<バッハ・シャコンヌ再考 12   バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、パルティータ>

バロック時代の、バッハ以外の音楽家による無伴奏ヴァイオリン曲




「無伴奏ヴァイオリン曲」というと、バッハの作品しか思い浮かべられない

 言うまでもないことですが、この記事のタイトルとなっているバッハの「チャコーナ」は無伴奏ヴァイオリンのために書かれた曲です。 バロック時代の無伴奏ヴァイオリン曲というと、私たちはすぐに3曲ずつあるバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータを思い浮かべます。 というよりほとんどそれ以外曲が浮かばないと言ってもよいでしょう。 



バロック時代に、バッハ以外にも無伴奏ヴァイオリン曲を作曲した人がいるはず

 もちろん、無伴奏のヴァイオリン曲はバッハしか作曲しなかったわけではなく、バッハが開拓したジャンルでもありません。  当然その先駆者がいたでしょうし、数は多くはなかったかも知れませんが、この時代に同種の作品もいくつか作曲されていたのは確かでしょう。

 そこで、シャコンヌの時と同じく、バッハの無伴奏ヴァイオリン曲の特徴を知るためには、同時代の作曲家による同種の曲を検証してゆく必要があるでしょう。

 いろいろ調べてみると、この時代のバッハ以外の無伴奏ヴァイオリン曲を作曲した音楽家としては、バッハの無伴奏ヴァイオリン曲に影響を与えたと言われる、ワイマール宮廷のヴァイオリニスト、パウル・フォン・ヴェストホフ(1656~1705)。  ウィーンで活躍したシュメルツァー(1623~1680)。  シュメルツァーの弟子とされ、「ロザリオ・ソナタ」で知られている、ビーバー(1644~1704)。  ヴァイスと同じくドレスデン宮廷に仕えた、ビゼンデル(1687~1755)などが挙げられます。




テレマンの「12の幻想曲」しか手元にないが

 しかし残念ながらそれらの作曲家の楽譜やCDなどは入手できず、私の手元にあるもの(楽譜、CD)としては、テレマンの「12の幻想曲」のみです。 

  比較の対象がこの作品のみでは寂しい限りですが、全くないよりはましかなということで、バッハの作品と比較してみましょう。 テレマンはその時代にはバッハよりも有名で、人気のあった作曲とされています。 テレマンの作品は当時多くの人に支持されたもので、そういった意味でも、その時代標準としては相応しいと考えられるでしょう。



バス・ラインは確保されている

 このテレマンの「12の幻想曲」はそれぞれが3つの短い楽章からなり、それぞれが演奏時間が5分前後の曲となっています。 バッハの作品、あるいはこの時代の他の作品同様、単旋律的ではあっても、バス・ラインはしっかりと確保されています。 また、対位法的に作曲されている部分も少なくありません。




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「幻想曲第1番」 バッハの作品に比べればシンプルだが、バス・ラインはちゃんと確保されている



フーガもある

 曲によっては厳密にではないと思いますがフーガ的になっている曲もあります。 つまり無伴奏のヴァイオリンでフーガを演奏するのは決してバッハの専売特許ではなかったということでしょう。 ただし、同じフーガでも規模は全く違います。



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「幻想曲第5番」 プレストのところはフーガになっている



バロック時代に一般的だったソナタや組曲の形にはなっていない

 それぞれの曲の組み合わせとしては、ゆっくりした曲と速い曲を自由に組み合わせたと言った感じで、バロック時代特有の「協会ソナタ」や「室内ソナタ」のような形は全く取っていません。 そういった意味でもテレマンの音楽は”新しい音楽”だったのでしょう。



峻厳さよりもリラックス

 全体的に見ると、バッハの無伴奏曲と同じような作曲の仕方ということも出来ると思いますが、ただその”密度”はかなりちがうものでしょう。 そうしたことは漠然とCDを聴くだけでも感じられるでしょう。 バッハの無伴奏ヴァイオリン曲には、身が引き締まるような峻厳さのようなものが感じられますが、テレマンの曲はそうしたものは一切なく、リラックスした感じです。



バッハのフーガ(BWV1001)に似ている曲も

 「幻想曲第3番」の冒頭の部分はバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガ」にちょっと似ています。 テンポがゆっくりなので感じはちょっと違いますが、時折 「あれ?」 と思うところも出てきます。

 バッハはこのフーガ(ソナタ第1番の)が気にいっていたらしく、オルガンにも編曲し、また、バッハ自身のものかどうかははっきりしませんが、リュート用のバージョンもあります。 つまりこの音型は当時の人にとってはよく聴くパターンで、耳に馴染みやすいものだったのかも知れません。



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「幻想曲第3番」 バッハのフーガ(BWV1001)にちょっとだけ似ている



お互いに影響は与えあっていない?

 このテレマンの「12の幻想曲」は1735年頃作曲されたそうで、バッハの無伴奏ヴァイオリン曲は1720年頃ですから、この12の幻想曲はバッハの無伴奏ヴァイオリン曲に特に影響は与えてはいません。 おそらくテレマンの方もバッハの作品からは影響は受けていないでしょう。
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