中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<バッハ・シャコンヌ再考 14   バッハの無伴奏曲 3>



”じゃないほう” の武藤

 昨年ワールド・カップの後、サッカー日本代表で武藤嘉紀選手が華々しくデビューし、今年になってからドイツ・ブンデス・リーガーへと活躍の場を広げました。 その陰で ”じゃないほう” と言われた、同じFWの浦和レッズの武藤雄樹選手がJリーグで着実に得点をのばし、代表入りを果たし、代表初得点も記録しました。



短い出場時間で結果を出したが

 短い出場時間の中で結果を出したのはまさに”じゃないほう” の武藤選手らしいところですが、残念ながらその後あまり代表に呼ばれていません。 ぜひともまた代表戦で武藤雄樹選手 (ブンデス・マインツじゃないほう!) の活躍が見たいものです。



伴奏付きのほうが普通のはずだが

 さて音楽の話に戻りますが、バッハの「ヴァイオリン・ソナタ」というと、多くの音楽愛好者は「無伴奏ヴァイオリン・ソナタの」ほうを思い浮かべるでしょう。 前回もお話ししたとおり、バッハはチェンバロ ”伴奏付き” の「6つのバイオリン・ソナタ」を作曲していて、こちらのほうが伝統に基づいた形式と言え、”無伴奏” のほうがむしろ異色の音楽です。



特に私たちギタリストには

 しかし今現在では「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」のほうが圧倒的に人気があり、多くのヴァイオリニストが演奏し、CDなどの録音も非常にたくさんあります。 演奏される頻度からすればかなり差があるでしょう。 なんといっても私たちギターをやるものにとっては無伴奏ヴァイオリン・ソナタは非常に身近な曲ですが、”伴奏付き”のほうは、あまり聴かない(もちろん弾かない)というギタリスト、および愛好家が多いでしょう。



”じゃないほう” のヴァイオリン・ソナタ

 かく言う私自身も無伴奏のほうは10数種類 (ギターも含めればもっと多い) CDをもっていますが、”伴奏付き” のほうは4種類ほどしかありません。 ヴァイオリンをやっている人ならどうかわかりませんが、私たちギターをいやっているものにとっては、チェンバロ伴奏付きの 「6つのヴァイオリン・ソナタ」 はやはり ”じゃないほう” のソナタとなるでしょう。

  今回はその無伴奏 ”じゃないほう” のヴァイオリン・ソナタの話です。 こちらは伝統に則った音楽で、和声的な部分はチェンバロに任せて、ヴァイオリンはのびのびと旋律を歌わせるように出来ています。 チェンバロ伴奏のほうは左手で通奏低音、右手でもう一つの旋律を演奏し、ヴァイオリンの旋律と合わせ、通奏低音に二つの旋律という、バロック時代によく作曲された”トリオ・ソナタ” 形式になっています。


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ヴァイオリンとチェンバロのための6つのソナタ第1番ロ短調 第1楽章「アダージョ」



誰にでも楽しめる曲

 上の譜面は「6つのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」の第1番の第1曲目で、調はバッハが好きなロ短調となっています。 「トリオ・ソナタ風」と言いましたが、譜面のほうを見ると、4声になっていて、さらに先に進むと5声にもなります。 和声法的には、決してシンプルなものではありませんが、無伴奏の曲に比べれば、1小節が一つの和音になっている場合も多く、穏やかな感じがします。

 そのことは実際に聴いてみるとよくわかります。 聴く人に集中力と緊張感、さらには高い聴音能力や和声法的知識などを要求する無伴奏曲にたいして、こちらは何と言っても旋律が美しく、大変リラックスして聴け、誰にでも楽しめる曲となっています。 



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6つのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタのCD  録音は古いが(1963年)、私が持っている4種類のCDの中では、このアルトュール・グリュミオーのものが最も好みに合う。 このヴァイオリニストの”無伴奏”のほうもすばらしい。



ギター・ファンにはぜひ聴いてほしい

 バッハにはいくつかのフルートとチェンバロ、もしくは通奏低音のための曲が残されており、たいへん人気のある作品ですが、 このフルート・ソナタ同様、この伴奏付きの6つのソナタも、ほぼ同じ性格の音楽で、たいへんなじみやすい曲ではないかと思います。

 前述のとおり、バッハ好きを自称するギター・ファンの中にも、この”伴奏付き”のほうはあまり聴かないという人も多いですが、そうした方には、ぜひ聴いて欲しいと思う曲です。



おそらく対で作曲された

 無伴奏ヴァイオリンのための3つのソナタと3つのパルティータは、ケーテン時代の1720に、バッハ自身の手によって清書されたとされ、伴奏付きのソナタのほうは、はっきりしないようですが、おそらくその前後に作曲されたとされています。 

 おそらくバッハはこの両者を明確なコンセプトを持って作曲し分けたのではないかと思います。 つまり”伴奏付き”のほうは誰にでも楽しめ、また一応プロの演奏家なら誰にでも演奏出来、いろいろな場に対応できる、実用性を重視した曲。 一方”無伴奏”のほうは極めて能力の高いヴァイオリニストと最高級の鑑賞能力ある愛好家のために書いた曲といえるのでしょう。

 さらに”無伴奏”のほうはバッハ自身の手で丁寧に清書されているところからも、おそらく後世、つまり私たちに向けて書いた意味も含まれているのではないかと思います。



本来、逆では?

 そうした両者の性質上、本来であれば”伴奏付き”のほうが一般化し、”無伴奏”のほうは知る人ぞ知る秘曲となったはずなのですが、少なくとも今現在では全く逆の現象となっています。 後世の音楽学者や評論家などのジャーナリズムといったことも大きく影響していると思いますが、やはり計6曲の無伴奏ヴァイオリン曲は、大変インパクトのある作品だということなのでしょう。

 ・・・・・・・武藤雄樹選手も今後の活躍次第では ”じゃないほう” の称号を嘉紀選手に譲ることも・・・・・    でもちょっと難しいかな?
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