中村俊三 ブログ

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<バッハ・シャコンヌ再考 16   バッハの無伴奏曲 5>



「グレーな音符たち」でも書いたが

 このグラーヴェに関しては、もう一つ気になるところがあります。 と言っても、これは以前当ブログの「グレーな音符たち」というところで書いたことなのですが、バッハの音楽の大変特徴的なことと思われますので、再度書いておきます。

 下はこのグラーヴェの最後の部分ですが、この曲は次のフーガのための序奏的な意味もあり、完全終止ではなく、属和音で終わる半終止となっています。 この終わり方、普通に聴くとちょっと変に感じませんか? 特に下の声部だけ聴くとやや不自然です。



グレーバッハ 001



見えないバスが5度進行

 最初はこの意味がよく分からなかったのですが、どうやら最後の和音(といっても「ミ」の重複だが)の直前の和音をⅤ/Ⅴ、つまり属和音の属和音にするためのようです。 こうすることにより、和音全体が5度で進行することになります。 ”見えない” バスが5度下がる(4度上がる)ということになります。

 普通、譜例3段目のようにファをナチュラルのままにしておいたほうが聞いた感じではなめらかです。 この和音は ”イタリアの6” と言う和音で少なくとも古典派以降ではよく用いられる和音です。

 バッハはこの”5度進行” ということに強いこだわりがあるようです。 前回の話で、属9の和音を好むといったこともその表れでしょう。 属9の和音は足の和音以上に5度進行を強く促すものです。




同じことがチェロ組曲第1番のメヌエットにも

 同様のことが無伴奏チェロ組曲第1番の「第Ⅱメヌエット」にもあります。 私がこの曲を弾き始めた頃、このシ=ナチュラルはどうしてもおかしいので、おそらく何かの間違いではないかと思い、フラットになおして弾いていました。 


グレーバッハ
譜面はニ長調に移調した編曲譜(この第Ⅱメヌエットのみニ短調)


 あるとき生徒さんから指摘され、「たぶん間違いじゃないかな」 と言ったら 「CDではナチュラルになっています」 というのでいろいろ聴いたり調べたりすると、やはりナチュラルが正しいようでした。 

 しかし、どう聴いてもフラットの方が自然に聴こえるのに、なぜバッハはここをナチュラルとしただろうと、しばらくこのことが頭から離れなかったのですが、 ある時、このソナタ第2番の「グラーヴェ」の最後と同じことだということに気が付き、以上のように理解したわけです。



バッハの和声法の根幹は5度進行  演繹法的思考

 どうやらバッハの和声法(そのようなものがあれば)では、この「5度進行」ということが根幹となってるようです。非常に複雑なバッハの和声法も突き詰めると、この5度進行に行き着くようです。 極めて簡潔な根本的な概念から、非常に複雑なものを築きあげるというバッハの音楽は、まさにヨーロッパ的な思考法に合致するものなのかも知れません。



次回はソナタ第3番の長大な「フーガ」

 次回はフーガの話をしようかと思うのですが、これがまたおそろしい!  「1台のヴァイオリンでも、一応フーガは作れますよ」 みたいなものではないのは、皆さんもご存じのとおり。 確かにバッハ以外の同時代の作曲家も無伴奏のヴァイオリンのためにフーガを作曲していたのですが、やはりバッハの作品とは比較ににはならないでしょう。

 例としては「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調」の長大なフーガにしてみようと、思います   ・・・・・・ちょっと相手がデカ過ぎ?


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