中村俊三 ブログ

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<バッハ・シャコンヌ再考 18   バッハの無伴奏曲 7> 



無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番のフーガ

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無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番のフーガ。 コラール「来ませ、精霊、主なる神」の旋律をテーマとしているといわれている。 他の2曲よりも声楽的、つまり”歌”を主題としている。


 第3番のフーガはテーマの長さが4小節と3曲の中で最も長くなっています。 第1番が1、第2番が2、第3番が4小節となっていて、曲全体の長さだけでなく、このテーマの長さも番号の順に長くなっていますが、これもバッハの意図によるものなのでしょう。




オルガン・コラール「来ませ、精霊、主なる神」(BWV651、および652)と関係があるそうだが

 この4小節のテーマはライプチヒ・コラールと呼ばれるオルガン曲集の 「来ませ、精霊、主なる神」(BWV651、および652)と関係があるのだそうですが、そのオルガン・コラールを聞いた感じでは、トリルなどの装飾音が多く、ちょっと聞いいただけでは、同じテーマには聞こえません、確かによく聞くと音程の動きは同じようなのですが、言われてみないとわかりません。

 いずれにしても第1番、第2番が器楽的な主題であるのに対して、この3番のテーマは声楽的です。 つまり第1番、2番のテーマはメロディというより ”音型” といった感じなのですが、この第3番のテーマははっきりとメロディ、つまり歌になっています。




縦に重ねられない分、横に伸びた?

 ともかく長いフーガで、バッハが作曲したフーガの中でもかなり長いものとなっています。 オルガン曲などに比べてあまり音や声部を重ねることができないので、その分 ”横” つまり時間軸的に拡がりをもたせたのでしょう。 

 曲の区分ははっきりしていて、主要呈示部(原調、および属調による)、 喜遊部(Ⅰ)、 副呈示部(平行調)、 喜遊部(Ⅱ)、 対呈示部(テーマの反転)、 喜遊部(Ⅲ)、 主要呈示部 の7つの部分に分けられます。 下はその主要呈示部の最初、つまり曲の冒頭部分です。



よく見ると、同じものではない

 4小節の主題呈示が終わると、定石どおりに5度上に主題が重ねられます。 しかしよく見ると(聴くと)、この主題は全く同じではなく、音程関係など微妙に変えられています。 特に最初の音と2つめの音は、元の呈示では2度進行ですが、次のもの(答唱)では3度進行になっており、また他の音ではシャープなど変化記号も付いています。



ただの半音階だが

 その答唱の下の声部には半音階が添えられています。 確かによくあることなのですが、コード・ネームを記すとと譜面のようになります。 お気づきかと思いますが、コード進行、つまり和声進行は、 E⇒A⇒D⇒G⇒Cと5度ずつ下がってゆきます。 



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答唄(5小節目からの上声部)に、赤丸の半音階が添えることにより、和声の5度進行を暗示している、まさにバッハらしい。



その半音階が和声の5度進行を暗示している

 主題に半音階を添えただけなのですが、これをもってバッハは和声の5度進行も実現させているわけです。 バッハと5度進行の関係は以前にも書きましたが、強いこだわりを持っていることがわかります。 またバッハの音楽では旋律的要素よりも和声的な要素の方が、より重視されていることも理解できると思います。




最初の喜遊部

 66小節までが主要主題提示部となりますが、66~92小節までが最初の喜遊部となり、この喜遊部はハ長調から、イ短調へという傾向を示します。 そして平行調のイ短調となる副主題提示部となります。



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フーガの2ページ目、 2段目の3小節目(65小節)から最初の喜遊部がはじまる。 この喜遊部はハ長調で始まり、イ短調へと移行してゆく。 下から2段目の1小節目4泊目から平行調(イ短調)による副主題提示部が始まる。




副主題提示部はストレット。  入念に主題を展開

  同時にここでは主題が終わらないうちにと答唄が始まる、ストレット(追迫部)となっています。 この副主題提示部は主要主題提示部よりも長く、かなり念入りに主題がが組み合わされ、大変充実した部分となっています。 



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3ページ目。 この副主題提示部では、最初の主要提示部より、いっそう入念に主題が展開される。
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