中村俊三 ブログ

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<音楽基礎講座 on Blog>  速度標語  4



Lento(レント)


音楽辞典  :  おそく

伊和辞典  :  ① 遅い、ゆっくりした、のろい、緩慢な、時間のかかる    ② ゆるんだ、たるんだ、締まりがない


<例>
    ショパン : ワルツイ短調作品34-2
    タレガ  : マズルカ「アデリータ」
    ラヴェル : 亡き王女のためのパヴァーヌ



19世紀以降から使われるようになった

 レントは音楽辞典などでは、表情やニュアンスに関係なく ”物理的に遅いテンポ” といったような意味になるようです。 イタリア語的には、「のろい」 とか 「しまりがない」 といったように、あまりよい言葉ではないようです。 このレントといy速度標語が使われるようになったのは、19世紀以降で、バロック時代には使われず、古典派時代でも非常に少ないです。



ショパンやドビュッシーが好んで使った

 よく使われるようになったのは19世紀半ば頃で、ショパンやドビュッシーなどが好んで使いました。 ショパンの場合、遅い曲にはほとんどこのレントを用いましたが、アダージョで書いた曲はないといったことは、前に言いました通りです。 ラルゴとした曲は多少ありますが、はやりショパンは伝統的なアダージョやラルゴといった速度標語はさけて、あまり手垢の付いていないレントを好んだのでしょう。

 ではそのショパンがレントとして書いた曲のうち、ワルツイ短調作品34-2を聴いていただきましょう。 この曲はタレガがギターに編曲していいて、ギターでも演奏されます。 演奏は、かつてショパンに演奏ではたいへん評価の高かった、アルトゥール・ルービンシュタインです。


≪ショパン作曲  ワルツイ短調作品34-2 ≫  演奏  アルトゥール・ルービンシュタイン



数字上ではあまり遅くないが

 確かにゆったりとは聴こえますが、メトロノームでは 4分音符=124 で、かなり速い数字です。数字だけでいったら、アレグロの領域でしょう。 しかし、ワルツの場合、4分音符1個が1拍でなく、1小節が1拍に聴こえます。 

1小節、つまり付点2分音符を1拍とすれば だいたい40くらいとなり、これなら確かに”Lento” となるでしょう。 因みに速いタイプのワルツ、たとえば有名な「子犬のワルツ」は 4分音符=300 くらいで弾いているピアニストが多く、これも3分の1に考えた方がよいようです。



ラヴェルの名作、譜面には54と書いてあるが

 レントで有名な曲としては、他に、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」 があります。 元はピアノ曲として作曲されたのですが、当時から人気があったらしく、作曲家本人の手により、オーケストラ曲を始め、いろいろな形に編曲されています。

 譜面の方には 4分音符=54 と書いてありますが、 ほとんど指揮者やピアニストはもっと遅く、4分音符=40~48 くらいで演奏しています。 これから聴いていいただく私の演奏も、だいたい46くらいです。 

≪ ラヴェル作曲 亡き王女のためのパヴァーヌ ≫  編曲 中村俊三






Andante(アンダンテ) 

音楽辞典  :  歩くandare」から出た言葉で、アレグレットとアダージョの中間の速度を言う。 アンダンテが速い速度に属するか、遅い速度に属するかは意見が一致しておらず、したがって、ピウ・アンダンテ、メーノ・アンダンテ、モルトー・アンダンテなどの場合に解釈が異なる。

(伊和辞典) (andare)  :  ①行く  ②進む、歩く  ③達する、至る  ④(時間が)進む  ⑤進行する、はかどる 他

  

<例>
 モーツァルト : ピアノ協奏曲第21番 第2楽章「アンダンテ」
 バッハ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番より「アンダンテ」
 タレガ : ラグリマ          
 ソル : 練習曲イ長調Op.6-12
 ソル : アンダンテ・ラルゴ作品5
 ソル : アンダンティーノ ニ長調作品2-3



ほとんど意味が解らない

 上の音楽辞典の内容からしても、アンダンテというのはよくわからないテンポですね。 それにしてもこの内容では、この辞典を使って調べた人も、さっぱりどういうテンポで弾いていいかわかりませんよね。 全く辞典の形を成していないんじゃないかと思います。 ・・・・でも正直でよい!



「歩く速さ」と言われても

 結論としては、その作品ごとに考えて行かなければならないといったところでしょうか。 一般にアンダンテは 「歩く速さ」 ということになっていますが、これもたいへん幅広い解釈が成り立ちます。 同じ歩くのでも、考え事をしながら歩くのと、電車に乗り遅れないように駅まで歩くのとは相当ちがいますよね、もちろん人によっても違う。

 また左、右合わせて1拍なのか、 左右それぞれで1拍ずつなの、それもはっきりしませんね。 その解釈の違いでテンポが2倍になってしまいます。



やはり、いろいろ曲を聴いてみるしかない

 何はともあれ、やはり曲を聴いてみましょう。 モーツァルトはゆっくりした楽章として、アダージョとかラルゴよりもアンダンテ、またはラルゲットといった速度標語を使用していました。 そのモーツァルトのピアノ協奏曲第21番の第2楽章「アンダンテ」を聴いてみましょう。


 ≪ モーツァルト作曲 ピアノ協奏曲第21番K467 第2楽章「アンダンテ」 ≫  ピアノ、指揮 ダニエル・バレンボイム  イギリス室内管弦楽団



けっして何の苦労もなく名作を生み出していたわけでは

 たいへん美しい曲ですね、1785年、つまりモーツァルト29歳の頃の作品です。 モーツァルトは天才音楽家とされ、幼少時から優れた曲を書いたとされていますが、私自身では、30才近くなってから優れた作品を生み出すようになった作曲家だと思っています。

 また一般に言われているように、決して何の苦労もなく、次から次へと名作を生み出していたわけではないのでしょう。 モーツァルトの”天才伝説” はある程度”売り”として強調されてきた部分も多あったのではと思います。 モーツァルトの優れた作品は、モーツァルトの非常に強い向学心と、勤勉さによって生まれたのではないかと、私は考えます。



美し過ぎるから

 この演奏はわりとゆっくり目で、 4分音符=53 くらいで演奏しています。 おそらくモーツァルト自身はもっと速く演奏していたと思われますが、 ただ、やはりモーツァルトはこの楽章(アンダンテ)をゆっくりなものと考えていたでしょう。 ただ、立ち止まる訳ではなく、常に先に進んでゆくといった・・・・・

  モーツアルトを聴くと涙が止まらなくなるのは、モーツァルトの音楽が悲しいからではない、美し過ぎるからだ・・・・・・    なんて誰かが言っていたな。







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