中村俊三 ブログ

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<音楽基礎講座 on Blog>  速度標語 7 



Moderato(モデラート)


音楽辞典  :  中庸の速度で、の意味。 アンダンテとアレグロの間の程度を言う。

伊和辞典  :   ①控えめの、 抑えた、無茶をしない、程よい    ②節度ある   ③穏健な



<例>   ドビュッシー :  小組曲「行列」、「メヌエット」     前奏曲集Ⅰより第2、4、5、12曲(Modere)
       モッツァーニ :  ラリアーネ祭り
       ホセ・ブロカ :  一輪の花 



18世紀半ば頃より使われるようになった

 モデラートとは上のように「中間くらい」といった意味で、言葉的にはわかりやすいと思います。 モデラートという速度標語はバロック時代には使われなかったようで、古典派以後、つまり18世紀の半ば頃から使われるようになったようです。



作曲家により、使い方に差がある

 このモデラートも、ラルゴ同様に、作曲家よって使われ方にかなり差があるようです。 早い時期としてはハイドンの作品に用いられています。 ハイドンのピアノソナタにはかなり頻繁に使われ、単独で「モデラート」として、あるいは「アレグロ・モデラート」のように他の言葉と組み合わされて用いられています。

 弦楽四重奏曲にも使われていますが、交響曲には使われていません。 おそらく交響曲の場合、各楽章の組み合わせに、一定の規則があり、中間的な速度の楽章を取り込む余地がないからだろうと思います。




ここでも、モーツァルトは

 しかし同じ古典派でもモーツァルトは全く(おそらく)このモデラートを用いていません。 ベートーヴェンも晩年のピアノ・ソナタにわずかに見られる程度で、ほとんど用いていないようです。 後期のベートヴェンと同時代に、同じウィーンで活動していたシューベルトにはモデラートの作品が結構あります。

 ラルゴのケースと同じような現象ですが、それにしてもモーツァルトはかなり個性的で、はっきりとしたポリシーみたいなものがありますね、本当にいろいろな意味で私たちはモーツァルトを誤解しているようです。




ドビュッシーなど、フランス系の作曲家が好んだ

 ロマン派以降ではほとんどの作曲家がこのモデラートの作品を残していますが、特にドビュッシーが好んで用いました。 ただし初期の作品を除くと、Moderato ではなく Modere とイタリア語ではなく、フランス語で表記しています。

 古典派からロマン派中期頃までは、音楽用語はどの国の音楽家(もちろんヨーロッパ限定)もイタリア語を使用していたのですが、 19世紀後半頃から、それぞれの国の言葉を用いるようになりました。

 確かにそれぞれの国の人々からすれば、より意味がわかりやすくなったわけですが、その一方で、ナショナリズムの台頭と言った面もあるのでしょう。 ある意味音楽もインターナショナル的なものではだんだんなくなってきた時代です。

 さて、それではモデラートの例ととしてドビュッシーの小組曲から「メヌエット」を聴いていただきましょう。 この演奏では、4分音符=90 くらいで演奏しています。 なお、この曲はドビュッシーの初期の曲なので、Moderato と表記してあります。


≪ ドビュッシー 「小組曲」 より 「メヌエット」 ≫   ジャン・マルティノン指揮  フランス国立管弦楽団



ラリアーネ祭

 なかなかいい曲ですね、以前ギターの五重奏でやったことがあります。 ギター曲の方では、皆さんよく知っている曲としては、「ラリアーネ際」があります。 以前この曲の譜面にこのモデラートの他に 4分音符=108  と書いてあるものがありました。 確かにテーマはこのテンポで弾くと流れもよいのですが、 しかし第2変奏のトレモロはこの速度で弾ける人はイエペスか山下和仁さんくらいかも知れません。  最も、最近ではこの速さでトレモロが弾けるギタリストは珍しくなく、逆に普通かも知れません。


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この譜面(阿部保夫編)には、しっかりと 4分音符=108 と書いてある。 この速度でのトレモロは超絶技巧に値する



各変奏を同じテンポで弾くのは難しい

 しかし、少なくともギター教室でギターを習ってる、一般の愛好家では、まずこの速さでは無理でしょう。 私の教室の生徒さんの場合だと、だいたい 4分音符=40~70 といったところです。 

 原則からすれば、「ラリアーネ祭」 はテーマと二つの変奏を同じテンポで演奏すべきなのでしょうが、現実的には不可能なので、結局それぞれ弾き易いテンポで弾くということになるでしょう。 ほとんどの人はそう弾いています。

 それでもテーマをあまり速く弾くと、後続の変奏とのバランスが悪くなるので、若干押さえた方がようでしょう。 いわゆる中級くらいの人を前提に考えると、テーマと第1変奏を、4分音符=80、 トレモロの第2変奏を、4分音符=60 といったあたりが適切なのではと思います。




ホセ・ブロカの詳しいことはわからないが

 さて、演奏の方は、ラリアーネ際の方はよくご存じだと思いますので、19世紀のスペインのギタリスト、ホセ・ブロカの 「一輪の花」を演奏します。 ホセ・ブロカ(1805~1882) はバルセロナを中心に活動したギタリストだということですが、詳しいことはわあつぃはわかりません。 デビット・ラッセルがブロカ作曲の「ファンタジア」を録音していたと思います。



ロマン派風の演奏法が必要

 この「一輪の花」は初~中級程度のギター曲集などによく収められていますが、演奏の仕方次第では、特にロマン派の演奏様式を身に付けた人が演奏すると、なかなか良い曲になると思います。 テンポは、80~90 といったところが適切なのではと思います。


≪ ホセ・ブロカ作曲 「一輪の花」 ≫


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ロマン派的な演奏法が出来ないと、曲の持ち味が出ない。 下の2段の3連符に付いたグリサンドを軽快な感じで出すのはなかなか難しい

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