中村俊三 ブログ

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<音楽基礎講座 on Blog>   速度標語 8



Allegro(アレグロ)  

音楽辞典  :  快速に、活発に、にぎやかに。これはほかの付加語といっしょになって、より具体的な意味をあらわすことがしばしばある。例えばアレゴロ・コンブリオは元気に速く、の意。

伊和辞典  :     ①陽気な、快活な   ②(会話、劇などが)陽気な、楽しい、(部屋などが)明るい、快適な   ③(色彩が)鮮やかな  ④みだらな、軽はずみな 他


<例> 

ベートーヴェン : sy.3「英雄」第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」
ベートーヴェン : sy.5「運命」第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」
ベートーヴェン : sy.6「田園」第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」
モーツァルト : sy.40ト短調 第1楽章「モルトー・アレグロ」
ジュリアーニ : 大序曲作品61「アンダンテ・ソスティヌート~アレグロ・マエストーソ」


(アレグレット)
ベートーヴェン : sy.7イ長調 第2楽章  sy.6「田園」第5楽章
モーツァルト : アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク 第3楽章「メヌエット」
ハイドン : 交響曲第96番「奇跡」 第3楽章「メヌエット」



最もよく用いられる

 アレグロは速度標語の中では最もよく用いられます。 特に速い曲や速い楽章の場合、この「アレグロ」と指示されることが最も多く、 交響曲や協奏曲の第1楽章では、ほとんどアレグロとなります。 交響曲の第4楽章や、協奏曲の第3楽章もアレグロとなることが多いようです。

 それだけに、単に 「Allegro」 ではなく 「Allegro Moderato」、 「Allegro con brio」、 「Allegro molto」、 「Allegro Maestoso」 などのように他の言葉と組わせて用いられることも多いです。




アレグロ・コン・ブリオ と言えば

 この組み合わせ方は作曲家によって好みや傾向がありますが、 ベートーヴェンの場合「運命」などでお馴染みの「Allegro con brio」 が最も良く用いられ、第5番「運命」の他、第2番、第3番「英雄」、第4番、第7番などの使われています。 意味としては「生き生きと」 と言った感じなのですが、ベートーヴェンの場合 「根性入れて」 とか 「気合入れて」  くらいの方が合っているかもしれませんね。

 それでは交響曲としては最も有名なベートーヴェンの「運命」を聴いていただきましょう。 演奏は1960年代のウィーンを代表する指揮者の ハンス・シュミット・イッセルシュテット とウイーン・フィルです。 


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 ≪ベートヴェン作曲 交響曲第5番「運命」 第1楽章 アレグロ・コンブリオ ≫  演奏 ハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮  ウイーン・フィルハーモニー  1967年の録音



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1960年代では、ベートーヴェンなどの演奏で定評のあった ハンス・シュミット・イッセルシュテット


 この演奏のテンポは、だいたい 2分音符=85 くらいですが、当時としては(1960年代)平均的なテンポです。 最近ではもっと速いテンポで演奏されることが多く、デビット・ジンマンの演奏では 2分音符=104 くらいです。 ベートヴェンの指示は 2分音符=108 となっています。

 以前は堂々とした感じと言うことで、イッセルシュテットのようなテンポが好まれたのですが、この曲ははやはり速めの方がいいですね、ベート-ベンの指示に近いテンポのほうが曲の持ち味が出るように思います。 因みにカール・ベームはもっと遅く演奏しています。



ベートーヴェン的な曲が「アレグロ・コン・ブリオ」?

 速度についてだけ言えば、「Allegro con brio」 はかなり速いテンポを意味するようです。 アレグロ・モルトー やアレグロ・ヴィヴァーチェ などと近いと考えてよいようですが、ただ速いだけでなく、「勢い」 や 「力強さ」を伴ったものとも考えてよいでしょう。

 逆に「運命」や「英雄」みたいなものが 「Allegro con brio」、 あるいはベートーヴェン的なものが 「Allegro con brio」 と考えるのも、一つかも知れません。



作曲家は速い速度を指定する傾向にある

 ベートーヴェンだけではなく、たいていの場合、作曲家は実際に演奏されているテンポよりも速い速度を指示することが多いようです。 逆に言えば、 ほとんどの演奏家は作曲家の指示よりも遅く弾いていると言えます。

 これは作曲家の場合、頭の中だけで音楽をイメージするので、テンポが速くなる傾向があるのかも知れません。 また演奏者は聴衆により、音をはっきりと聴いてもらうために、また表情を込めたりする関係上、作曲家の指示よりも遅く演奏するのでしょう。 特にその度合いは1970年代くらいまでは大きかったと思われます。

 最近のオリジナル楽器系の演奏団体では作曲家の指示に近いテンポ、つまりかなり速めのテンポを取ることが多くなっていますが、どちらがよいかは、その曲によって、あるいは聞き手の判断でしょか。



アレグロ・ノン・トロッポ

 次は同じベートーヴェンの「田園」を聴いていただきましょう。 この「田園」の第1楽章は 「Allegro non troppo」 つまり 「アレグロ、しかしあまり極端でなく」 と指示されています。 先ほどと同じイッセルシュテットの演奏です。



≪ベートヴェン作曲 交響曲第6番「田園」 第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ ≫  演奏 ハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮  ウイーン・フィルハーモニー  1967年の録音




アレグレットでもいいじゃない?

 テンポは 4分音符=105 で、運命から比べると、かなりゆっくりですね、半分に近いです。 このテンポならアレグロではなく、アレグレットでいいんじゃないかと思いますが、やはり交響曲の第1楽章は「アレグロ」でないといけないのでしょう。 おそらくアレグレットと書くと、音楽が軽くなってしまうので、”枯れても、いや、遅くてもアレグロはアレグロ” なのでしょう。




ベートーヴェンの指示は、2分音符=66

 因みにベートーヴェンの指示は 2分音符=66、 つまり4分音符にすれば132となり、最近の演奏ではこのテンポ前後で演奏されることも多くなりました。 デビット・ジンマンは、4分音符=126 くらいで演奏していて、ベートーヴェンの指示に近いのですが、やはりちょっと落ち着かないですね。 テンポだけでなく演奏の仕方もあると思いますが。

 カラヤン(1970年代)は 4分音符=116 といったあたりで、何回か録音していますが、常にこのテンポのようです。 カラヤンの演奏は若い頃から馴染んでいるせいか、私には自然なテンポに感じます(速すぎるという人も多いが)。




モツァルトは「モルトー・アレグロ」を好んだ

次はモーツァルトのアレグロです。 モーツァルトが好んで使うアレグロは 「Molto Allegro」 です。モルトーとは英語で言えば「more」 に相当し、「よりいっそう」 と言った意味ですが、 「モットー」と覚えていただいてもよいでしょうか、もちろんダジャレです。


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なぜ「モルトー・アレグロ」?

 モーツァルトは速い曲が好みらしく、このモルトー・アレグロという速度標語を好んで用いていました。 しかしなぜ、「アレグロ・モルトー」 ではなく 「モルトー・アレグロ」 とモーツアルトは書くのか、よくわかりません。

 他の言葉との組み合わせの場合、必ずアレグロの方が前になるのに、この「モルトー・アレグロ」場合だけ必ずこのように書きます。 イタリア語に堪能だったモーツァルトのことですから、文法上、このほうが正しいのかも知れません。



モーツァルトの演奏では非常に評価の高かったブルーノ・ワルターの演奏

 モーツァルトの「モルトー・アレグロ」で最も有名な曲としては「交響曲第40番」の第1楽章があります。 モーツァルトの演奏では非常に評価の高かったブルーノ・ワルターの演奏で聴いていただきましょう。



≪ モーツァルト作曲 交響曲第40番ト短調 K550 第1楽章 ≫  ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団


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いまだに色あせないワルターの名演


 たいへん素晴らしい演奏ですね、こうした演奏を聴くと、テンポがどうの、など全く感じさせませんね、まさに正しいテンポで演奏しているからでしょう。 50年以上前の演奏ですが、いまだに名演奏中の名演奏だと思います。



モーツァルト自身はなるべく速く演奏するように言っていた

 しかしモーツァルト本人はもっと速く演奏した、あるいは速く演奏してほしいと望んだようです。 モーツァルトは手紙などに「オーケストラがだれないように、なるべく速く演奏するように何度も促した」と言ったことを書いているようです。 この曲についても、最近ではかなり速く演奏する指揮者などが多くなりました。


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