中村俊三 ブログ

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<バッハ・シャコンヌ再考 23>




バッハがチャコーナを2拍目から始めたのは、2つ理由がある

 バッハがなぜチャコーナを2拍目から始めたかという、大きな理由としては2つあるということを以前書きました。 その一つは、テーマ、及び各変奏の小節数を4、または8にするためと考えられます。 

 別に、小節数を4にすることと2拍目から始めることとは関係ないじゃないかと思われそうですが、 ヴァイスやケルナーなど、ドイツ系の作曲家は、チャコーナ、あるいはパッサカリアを作曲する際に、同じ和音の小節が連続するのを避けるために、一つの変奏などを7小節としています。



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ヘンデルのシャコンヌ   一つのテーマ・および変奏が8小節になっていて、曲全体の小節数は8の倍数となっている。 テーマ、及び各変奏の最初と最後の和音が同じ(主和音)になっていて、変奏の変わり目で2小節主和音が続くことになる。 ヴィターリやパーセルなど、ドイツ以外の作曲家はだいたいこのようにチャコーナ、およびシャコンヌを作曲している。



ヘンデルやヴィターリなどのシャコンヌ、及びチャーコーナでは変奏の変わり目が同じ和音になっている

 上は、前にも例に挙げたヘンデルのシャコンヌですが、普通に考えれば、テーマ、及び各変奏は和声的に完結していなければならないので、最初と、最後は主和音でなければなリません。 また多くの場合、一つの小節は同じ和音になることが多いので、各変奏の変わり目では、主和音が2小節続くことになります。

 ヴィターリやヘンリー・パーセルなど、ドイツ以外の多くの作曲家は、このようにチャコーナ、及びシャコンヌ、さらにパッサカリアなどを、このように作曲しています。



ドイツ系の作曲家は同じ和音の小節が続くのを嫌った

 しかし、ヴァイスやケルナーなどのドイツ系の作曲家は、この主和音が2小節続くのいうことに抵抗があったようです。 そこで、テーマや各変奏が次の変奏にうつる場合、先行のテーマや変奏の最後の小節が、後続の変奏の税所の小節を兼ねる形にしています。 その結果として、一つの変奏などが7小節となっています(最後の変奏のみ8小節)。 

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ヴァイスのチャコーナ  矢印の小節は、前の変奏の最後の小節と、次の変奏の最初の小節を兼ねており、結果的に一つの変奏などが7小節となった。 同じ和音の小節が続かないことに注目。



同じ和音を続けず、数も合わせるバッハのマジック

 しかし、バッハは小節数が4、または8の倍数にならないことも、また同じ和音が2小節続くこともどちらも嫌いました。 「4、または8の倍数になることを維持しながらも、同じ和音の小節が続かないようにする」 といった手品のようなことをバッハは実現する訳ですが、その方法が ”2拍目から曲を始める” ということです。


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このチャコーナは4小節単位なのか、8小節単位なのかは、見方によって異なるが、8小節目(この譜面の小節番号では9小節目)の1拍目で、テーマが終わり、2拍目から第1変奏が始まる。 4小節単位と考えても同じ。



バッハのチャコーナは4小節単位

 上はバッハのチャコーナの冒頭ですが、バッハのチャコーナは4小節単位なのか、8小節単位なのかt言うことは意見が分かれるようですが、明らかに4小節単位、あるいは12小節単位と見られる部分もあり、どちらかと言えば、4小節単位と考えた方がよいのではないかと思います。



冒頭の不完全小節の存在、つまり2拍目から曲を始めることが ”ミソ”

 しかし、この冒頭を見る限りでは、確かに和声的には4小節でまとまってますが、旋律的には8小節単位と考えられます。 そこで、8小節単位の場合、8小節目(この譜面の小節番号では9小節目)でテーマが終わり、第1変奏が始まります。

 しかし冒頭に不完全小節があるために、ヴァイスのチャコーナのように一つのテーマ、および変奏が7小節とはならず、8小節ちょうどとなります。



4小節単位で作曲するとこの方法しかない

 この方法はオルガンのためのパッサカリアにも用いています。 もっとも、バッハは基本的には8小節ではなく、4小節単位で作曲していると考えられますので、最初と最後の小節を共に主和音にしてしまうと、残りは2小節しかなくなり、これでは充実した和声は作れなくなります。 

 またヴァイスなどの方法をとったら、3小節単位で作曲しなければならなくなりますから、4小節単位のチャコーナを作曲しようとしたら、必然的にこのような方法を取るしかないのかも知れません。


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