中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<バッハ・シャコンヌ再考 30>


ギターの編曲、演奏




ナルシソ・イエペス   ~アルペジオが、なんか凄い

 イエペスはこの曲を2度録音していますが、私が持っているのは1960年頃の、最初の録音のものです。  私が最初に聴いたギターによるバッハのチャコーナですが、ヴァイオリンの演奏に比べると、なんとなくのんびりした感じだなと言ったのが、当時(大学生の頃)の印象です。

 例のごとく音符の長さなどについてはややアバウトな感じの演奏ですが、アルペジオの部分になると俄然テンポ・アップします。 トレモロ奏法なども加わり、このアルペジオ部分は聴きどころになっています。

 この時代(1960年頃)では、バッハのチャコーナをギターで演奏する場合、 ほとんどのギタリストがセゴヴィア版を使っていたのですが、イエペスは独自にアレンジしています。 


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6弦時代のイエペス イエペスの最初のチャコーナのLPはパラウ、ヴィヴァルディの協奏曲などがカップリングされていたと思う






 ジュリアン・ブリーム  ~1音1音噛みしめるように

 ジュリアン。ブリームもこの曲を2度録音していて、最初の録音はおそらく1950年代後半だと思います(一度誰かに聴かせてもらった記憶がある)。 2度目は1992年で、ブリームのギタリストとしての活動の晩年ということになります。 演奏時間 15:47  とかなりゆっくり目で、1音1音噛みしめるように演奏しています。 

 ブリームのフレージングなどにはちょっとツッコミを入れたくなるところもありますが、バッハの音楽というより、ギターの音楽、あるいは自らの感性を優先させたのでしょう。 ブリーム人気もやや下火になった頃の録音なので、聴いたことのある人は意外と少ないかも知れません。  



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晩年のジュリアン・ブリーム  体調不良などで1990年代後半に活動を終えたが、今はどうしているのか?






ジョン・ウィリアムス   ~20世紀の大ギタリストは2回シャコンヌを録音する?

 ウィリアムスも1960年代と1980年代に2度バッハのチャコーナを録音しています。 そう言えば、セゴヴィア、イエペス、ブリーム、ウィリアムスともこの曲を2回録音していますね、 20世紀の名ギタリストは皆、バッハのチャコーナを2度録音するのでしょうか? 



ダイエットしたセゴヴィア編?

 ウィリアムスは、基本はセゴヴィア編を用いながらも、原曲に近い形に修正して演奏しています。 修正と言っても、音を削る方向で、 ”ダイエットしたセゴヴィア版” と言えるかも知れません。

 このウィリアムスの演奏は多くのギタリストや愛好者に影響を与えたもので、1960年代後半から1970年代くらいにかけては、セゴヴィア編を用いる場合でも、このように若干修正し原曲に近い形で演奏する人の方が多くなりました。 私もそのような形でセゴヴィア編を演奏していました。



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かつては多くの愛好者などが、このウィリアムスのように弾きたいと思っていたのでは



ウィリアムスの胸のすくようなスケールには、当時誰しもあこがれた

 演奏時間(2度目の録音)は 13:50 とセゴヴィアと全く同じですが、音価も正しく、たいへんすっきりと演奏しています。 特にアルペジオの前に出てくるスケールは、本当にに気持ちよく、またカッコよく、しっかりと盛り上げて演奏していて、当時の誰もがこんな風に弾きたいと思ったのではないかと思います。



生演奏は記憶に残すしかない

 逆に、アルペジオはたいへん静かにに始まり、徐々に盛り上げてゆきます。 今聴いても当時多くの愛好者たちを惹きつけたことが十分に窺われます。 私は1970年に虎の門ホールでこのチャコーナの生演奏を聴きましたが、特にアルペジオの部分などたいへん美しく、とても感動しました。

 その後ウィリアムスの ”生演奏” は聴くことが出来なくなり、ウィリアムスの ”生音” を聴いたギタリストや愛好者はそれほど多くはないでしょう。 録音は残すことが出来ても、 ”生演奏” は記憶で残すしかありませんね・・・・・・






マヌエル・バルエコ

 バルエコは1989年にバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番を全曲録音しています。 バルエコはセゴヴィアとは全く違った角度からギターに編曲しています。 バロック時代の様式感を踏まえたアレンジといったところで、低音部の追加も常識的な感じがします。

 演奏の方も付点音符などの音価を性格に取り、たいへん引き締まった感じです。 確かに派手さなどはないかも知れませんが、たいへん好感度の高い演奏だと思います。

 発売当時、「迫力がない 」とか 「重厚さが足りない」 とかといった声も聴かれましたが、 あらため聴くとバッハの音楽が自然に耳に入ってきて、なかなかの名演奏だと思いました。 譜面も出ているようで、これもお薦めでしょう。


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最近ちょっと忘れられがちだが、名演奏であるのは間違いない
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