中村俊三 ブログ

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バッハ・シャコンヌ再考 34

シギスヴァルト・クイケン(1944~ )   1981年録音



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オリジナル楽器の演奏の草分け

 1970年代後半からバロック音楽の演奏では、 ”オリジナル楽器による演奏” が一般化してきます。 これは当時の楽器(レプリカも含めて)を使用するだけでなく、演奏様式もなるべく当時のものに近づけるといった演奏法です。 このクイケンなどはその草分け的なヴァイオリニストの一人といえるでしょう。

 この演奏でこれまでのものとの大きな違いといえば、まずピッチが半音ほど低いということでしょうか。 それとヴィブラートをほとんどかけないということでしょう(もちろんポルタメントも)。 聴いている感じではさらに音程の取り方も微妙に違うようにも聴こえます。

 一つ一つの音を区切って弾くところは、前述のシゲティと同じですが、演奏全体としてはかなり違ったものです。 別の見方鵜をすると、こうした今日のバッハ演奏のスタイルを60年以上前に予測していたようなシゲティには、先見の明があったのではないでしょうか。

 演奏時間は 11:12 とかなり速めで、テーマの付点4分音符の後の8分音符は短く、16分音符のように演奏されています。 たいへん引き締まった演奏と言え、 確かにバッハの時代にはこのように演奏されていたのかも知れません。

 しかし、個人的な感想としては、この演奏は演奏様式の方が全面に出過ぎてしまっているようにも感じます。 こうしたオリジナル楽器系の演奏は、まだまだこれから進化してゆくのでしょう、 クイケンの演奏はそうしたものの先駆的な役割として、大きな意味合いがあります。






シェロモ・ミンツ(1957~ )


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安定した演奏だが、跳んだりはねたりはしない

 上記のクイケンよりも10歳以上若い、モスクワ生まれのヴァイオリニスト、シェロモ・ミンツの演奏は、クイケンとは正反対の従来型の1960年代的と言えるものです。 音は書いてある音符いっぱいに伸ばし、もちろん音価も譜面に書かれた通りです。

 シェリングの演奏に近いものがありますが、それをさらに徹底した感じです。 音程が非常に安定しているのも(今日的な意味で)特徴で、おそらくかなり技術の高いヴァイオリニストなのではないかと思います。

 どの音符もかなり長く奏されるので、必然的にテンポも遅めですが、”書かれていないことは何もやらない” といった60年代的な考えで演奏しているように思えます。 確かに落ち着いては聴けるのですが、どうも ”すり足” 的な演奏で、常に重力で体が地面に押し付けられ、跳んだり、はねたりは出来ないような印象があります。

 




Mark Lubotsky  1987年録音


バッハ大全集の中のもの

  Lubotskyというヴァイオリニストのことはよくわかりませんが、このCDはブリラント社の「バッハ大全集」の中のものです。 ガダニーニ使用と記されおり、おそらく弦や弓など当時のもの、あるいはそれに近いものを使用した、”オリジナル楽器による演奏” の一つと言えるのでしょう。



オリジナル楽器系だが、ピッチは低くない

 しかしピッチはクイケンのように半音低くとることはなく、測ってみると445と、現在の一般的なものtほぼ同じと言えます。 確かに昔は常にピッチを今現在より低く取っていたと単純に言えるものでもなく、 場合によっては高いこともあったようです。

 またオリジナル楽器では、ピッチを半音低くするというのも、かつてそれが標準だったというより、 「ちょうど半音低くした方が都合がようから」 といった今日的な理由が大きいとといった話も聞きます。

 クイケン同様にヴィヴラートはかけていませんが、ポルタメントは若干入っているように聴こえます。 ポルタメントを徹底して嫌うというより、 「自然にかかってしまうものは、しょうがない」 と言った感じなのではと思います。

 テーマの8分音符の長さの取り方については8分音符しては短く、16分音符にしては長いと言った感じです。 音の伸ばし方については、書かれた音符いっぱいに音を出すところもあれば区切るところまあるようです。



折衷派?

 要するにシェリングなどの60年代的な演奏とクイケンなどのオリジナル楽器系の演奏との折衷的な感じがあります。 オリジナル楽器使用と思われるので、音色はやや曇った感じですが、演奏はかなり自然です。 抑揚なども自然についていて、好感の持てる演奏ではないでしょうか。






加藤知子  1999~2000年録音


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スキップくらいはする

 加藤知子の演奏は近代のヴァイオリン奏法によるもので、ヴィヴラートもしっかりとかかっています。 音価もほぼ書かれたとおりに取るといった、オリジナル楽器の演奏とは異なる従来型の演奏といえますが、ミンツなどのように常にすり足的な演奏ではなく、軽い音や、重たい音など、音のウエイトはいろいろ変えられています。 飛び跳ねまではしませんが、ゆっくりあるいたり、ちょっとスキップ気味になったりくらいはします。

 どちらかと言えばチョン・キョンファのように、バッハを聴くといよりヴァイオリンを聴くといった演奏といえるかも知れませんが、そういった意味ではたいへん魅力的なヴァイオリンの音色と言えるでしょう。  
 
 聴いた感じではかなりゆっくり目に弾いているように感じますが、タイミングを見ると 14:30 とすごく遅い訳ではないようです。 音をたっぷりと鳴らしきるので、そう感じるのでしょう。



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