中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀のギター作品

 5月15日(日) 14:00~   石岡市ギター文化館





Mauro_Giuliani_(1781-1829)_20160502222853e51.gif


マウロ・ジュリアーニ (1781~1829)

 前回はギターの歴史を大ざっぱに書いておきましたが、今回はリサイタルで演奏する曲の作曲家と、その曲について書きます。 まず、マウロ・ジュリアーニですが、 協奏曲、ソナタ、変奏曲など演奏会用の作品の他、練習曲もたくさんあり、皆さんも弾いたことがあるかも知れません。



典型的な速弾きギタリスト

 その演奏会用作品はもとより、初級用の練習曲に至るまで、ほとんど16分音符で書いてあったり、アレグロなど速めのテンポの指示があったりなど、指定のテンポで弾くのはなかなか難しいものが多くなっています。 間違いなくジュリアーニは速弾きのギタリストだったのでしょう。


IMG_0001_20160503123058ea2.jpg
初級用の教材と考えられるが、初級者にとっては16分音符的に弾くだけでも難しく、なおかつアレグロは不可能


 ジュリアーニは1781年にビシェーリというイタリア南部の小さい都市に生まれ、バレッタ、ボローニャなどでギター、および音楽を学んだようですが、イタリア時代のジュリアーニについては、あまりよく知られていません。



ウィーンで活躍、ベートーヴェンなどの知遇を得る

 1806年にウィーンに出、1808年に協奏曲(ギター協奏曲第1番イ長調)を発表し、ウィーンの音楽界で高い評価を受け、以後⒑数年間この地でギタリストとして活動します。

 ジュリアーニはどちらかと言えば、社交的な人だったらしく、ベートーヴェンやフンメルなどギタリスト以外の音楽家ともしたしくなったようです。 ベートーヴェンの第7交響曲の初演に加わった話はよく知られていますが、実際に何の楽器で加わったのかは不明なようです(もちろんこの交響曲にギター・パートはない)。



協奏曲や室内楽も

 そうした関係上、ジュリアーニのウィーン時代には3つの協奏曲を始め、室内楽やヴァイオリン、フルートなど、他の楽器との二重奏曲の作品が多数あります。 私個人的には、独奏曲よりもそうしたアンサンブル曲の方が優れているように思います。 協奏曲など、ぜひ弾いてみたいと思うのですが、残念ながらそうした機会を持つのは難しでしょう。



ロッシーニ関係の曲も多い

 1820年頃からイタリアに戻り、演奏、作曲活動を続けるわけですが、この1820年前後というのはヨーロッパ中にロッシーニ・フィーバーというか、ロッシーニの嵐が吹き荒れ、その影響で ”6つのロッシニアーナ” など、ロッシーニ関係の曲が多くなります。 おそらく一般の評判も良かったのでしょう。






ヘンデルの主題による変奏曲作品107

 テーマはヘンデルのチェンバロ組曲第5番ホ長調の第4曲「アリア」からとられていますが、この曲は「調子のよい鍛冶屋」としてピアノの名曲としても知られています。 どこかで聴いたことがあるという人も多いのではないかと思いますが、親しみやすく、本当に初めて聴いた人でも聴いたことがあるような気になるのではと思います。

 原曲はテーマ(アリア)と5つの変奏からなりますが、ジュリアーニの曲ではテーマと6つの変奏で出来ています。 テーマは原曲とほぼ同じですが、変奏の方は原曲とは関係なく、ジュリアーニの作曲となっています。 ジュリアーニの作品としては、比較的弾き易い曲と言えるでしょう。






大序曲作品61

 この時代、ソナタ形式で書かれた単一の楽章を ”序曲” と呼ぶ習慣がありました。 この曲も特に何かオペラや劇などの序曲という訳ではありませんが、こう名付けられています。 ”大(grande)” という言葉が添えられていますが、曲が特に長いと言う訳ではなく、華やかで、技巧的ということで付けられているのでしょう。  

 この曲は、確かにジュリアーニらしくスピーディーな指の動きと、盛り上げるための音量などが要求される曲といえるでしょう。 ジュリアーニの作品の中ではたいへん人気のある曲で、今日でもよく演奏されます。 またジュリアーニ自身も自分の代表作の一つと考えていたようです。


IMG_201605031233142a2.jpg
大序曲の盛り上げどころ。 音量とスピードを両立させるのはたいへん難しい。


 アンダンテ・ソステヌートの序奏部と主部のアレグロからなる典型的なソナタ形式の曲と言えますが、アレグロの冒頭は主調(イ長調)からはだいぶ遠い和音(嬰へ短調の属和音)から入るなど、和声法的にはかなり工夫のある曲です。






フェルナンド・ソル (1778~1839)


2倍Fernando_Sor



オペラや交響曲の作曲していたスペインのギタリスト

 フェルナンド・ソルは、ジュリアーニよりも3歳ほど年上で、この時代のギタリストとしては現在、最も高く評価されているスペイン出身のギタリストです。 ソナタや変奏曲、幻想曲などの演奏会用作品から、エチュード、メヌエット、小品集などの教育的作品にいたるまで、ソルの作品は今現在でもたいへんよく演奏されています。

 その経歴などはいろいろなところに書かれていますが、若干触れておきます。 ソルはバルセロナに生まれ、モンセラート修道院付属学校で音楽を学び、オペラや交響曲なども作曲しています。 1813年からはナポレオン戦争等の関係でパリに渡り、以後このパリを中心に活動することになりますが、ロンドン、およびモスクワで仕事をしていた時期もあります。



高く評価されていた一方、初心者からの評判はイマイチ

 ソルはギターの作曲家として、またギター演奏家として当時から評価は高かったようですが、作曲法、特に和声法には強くこだわるタイプだったらしく、例え初心者用の練習曲といえど、しっかりとした和声法で曲を書いていました。 それゆえ、それらは初心者にとってはあまり弾き易いものではなく、評判はイマイチだったようです。



IMG_0002_20160503124209dcc.jpg
「これならよろしいか?」作品48  ソルとしては思い切って易しくしたつもりなのだろうが。 


 出版社からも再三、もっと易しく書くように要求されていたようですが、ソルはなかなかそれに上手く対応できなかったようです。 「これならよろしいか?」 といったタイトルの曲集なども出していますが、そうした出版社や愛好家への要求への答えのつもりだったのでしょう。 確かに音符の数は少ないのですが、カルリなどに比べると、あまり弾き易いとは言えないでしょう。



オーケストラ曲のCDも出ている

 最近ではソルのオペラの序曲や、交響曲などの管弦楽のCDなども入手できます。 かつては 「そういったものがある」 といった話しか知らなかったので、たいへん貴重なものだと思います。 これを聴いた感じでは、ソルの管弦楽曲は対位法的で、引き締まった、溌剌とした感じの曲です。 



誰に似ている?

 作風が誰に似ているかということはなかなか難しいところですが、モーツァルトやベートーヴェンにはあまり似ていないようです。 強いて言えばハイドンか、初期のシューベルトといったあたりかなと思います。 重厚でエネルギッシュとか、繊細で、内面的と言った感じではありません。

 また、同じギタリストのオーケストラ曲でも、あくまで流麗なジュリアーニの曲とはだいぶ違う感じですが、ソルの音楽を知る上ではたいへん重要なものと思いますので、ソルの曲を練習しようと思っている人はぜひとも聴いてみるべきでしょう。



お友達が少なかった?

 ギターのみでなく管弦楽曲なども作曲していたとすれば、当然ジュリアーニのようにギター協奏曲とかギターを含む室内楽、ギターと他の楽器の二重奏曲なども作曲しておかしくはないはずですが、 不思議と、そういった曲は残されていません。 その理由はよくわかりませんが、 もしかしたらジュリアーニとは違い、音楽家のお友達が少なかったのかも知れませんね。



自らのギター論を語っている

 ソルは「ギター教則本」を出版していますが、これは「カルカッシギター教則本」などのように練習曲を中心としたものではなく、 自らのギター論、あるいはギター演奏論を語っているものです。 現代ギター社から翻訳が出ているので、これを読むとソルの人柄などがよくわかります。 これもまたギター愛好家必読のものと言えます。






ラルゴ・ノン・タント (幻想曲ハ短調作品7より) ~ソナタハ長調作品15-2

 ギターでは比較的用いられることの少ないハ短調(♭3つ)で書かれ、独特の雰囲気を持った曲です。 原曲の幻想曲作品7では、この曲のあとにハ長調の主題と変奏が続き、その関係でこの曲は完全終止をせず、属和音で終わる半終止となっています。 


IMG_0004_2016050312485392e.jpg
本来の後続曲の主題と変奏の冒頭部分


IMG_0003_20160503124912070.jpg
今回演奏するソナタ作品15-2の冒頭。 最初の2つの音、メロディだけで見れば3つの音が主題と変奏と同じ



♪ バッターは主題と変奏に変わりまして、代打 ソナタハ長調、 背番号15-2 ♪

 したがって、この曲のみでは1曲とはならないので、今回のリサイタルでは、「ソナタハ長調作品15-2」を続けて演奏します。 もちろん本来は原曲通りに 「ラルゴ・ノン・タント」 と 「主題と変奏」 を続けて演奏すべきなのですが、原曲通りに弾くと、ちょっと長くなってしまいます。 「ソナタ」 と 「主題と変奏」 では最初の2つの音が同じということで、ご容赦下さい。 まあピンチ・ヒッターということで・・・・・

 なお、ジュリアン・ブリームはメヌエットハ長調(作品25より)や、ロンドハ長調(作品22)などを後続の曲として用いています。 なお、「ラルゴ・ノン・タント」 とは 「幅広く、ゆったりと。 でもそれほど極端でなく」 といった意味です。 ソナタのほうは 「アレグロ・モデラート」、つまり 「中庸な快速さで」 としていされています。






モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲作品9

 ソルの作品中では最も人気があり、たいへんよく演奏されている曲です。 かつて(1960年代)NHKのギター教室のテーマにもなっていました。

 テーマはモーツァルトの最後オペラ「魔笛」の中で、モノスタトスが歌う「なんと素晴らしい鐘の音」というたいへん短い歌からとられています。 この親しみやすいテーマと簡潔な5つの変奏とコーダ、そして短調による序奏が添えられています。 

 ・・・・・・まあ、あまり説明の必要ないか・・・・・・





スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する