中村俊三 ブログ

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<中村俊三ギター・リサイタル ~19世紀ギター作品>

5月15日(日)14:00~  石岡市ギター文化館




19世紀の作品は古典派とロマン派に分けられる

 今回のリサイタルは19世紀前半頃のギター作品ということで、5人のギタリストの作品を演奏する訳です。 時代もだいたい同じと言うことで、これらのギタリストの作品の内容は、近いところもあるのですが、 音楽史的に言うと、 「古典派音楽」 と 「ロマン派音楽」 に分けられます。

 この「古典派」 と 「ロマン派」 の違いは、「ルネサンス音楽」と「バロック音楽」、あるいは「バロック音楽」と古典派」のように、はっきりと音楽の構造が変わるわけではなく、「ロマン派音楽」は「古典派音楽の延長、あるいは発展形と言えます。



古典派とロマン派は基本的には同じ

 交響曲や協奏曲、ソナタなどの音楽形態、ソナタ形式などの楽式、和声法といったものは、基本的にほぼ同じで、表現する内容などが変化していったと言えます。 とは言っても初期のハイドンの交響曲と後期(末期)にあたるマーラーの交響曲ではだいぶ違います。



ベートーヴェンの没年をもって

 それだけに、その ”線” をどこに引くのかと言うことは難しく、早い説で1800年、遅いものではベートーヴェンの没する年である1827年などとなっています。 バッハが没した1750年をバロック時代の終焉の年とするのはほとんどの音楽学者の共通した考えで、これは1750年と区切りがよいのが大きな理由ですが、それ以上にバッハの功績を讃えてと言った意味もあると思います。

 ベートーヴェンの没年は1827年と、ちょっと区切りが悪いのですが、やはりベートーヴェンの功績を讃えて、1827年を古典派の終焉とする場合が多いようです。 どちらにしてもその境界は19世紀初頭にあり、少なくとも1830年以降の音楽は、ハイドン、モーツァルトの音楽とは一線を画しています。


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バッハの没年をもってバロックと古典派が分けられるように、ベートーヴェンの没年をもって古典派とロマン派が分けられる。 偉大な音楽家は音楽史を創る。



ジュリアーニは古典派で、パガニーニはロマン派?

 ギターの方でもその線引きは難しく、ソルやジュリアーニは間違いなく古典派のギタリストとされ、その流れからいって、ジュリアーニとは一つ違いのパガニーニの音楽も当然古典派とされるのですが、場合によってはパガニーニはロマン派に属するとされたりします。 これはその年代といより、作品の内容を考慮してのことでしょう。

 なお、その主な活動が1830年以降となるレゴンディとメルツについては、異論なくロマン派のギタリストとされています。 作風もソルやジュリアーニとはだいぶ違います。



プログラム前半は古典派、後半はロマン派

 そう言った訳で今回のリサイタルは私の意図としては、プログラムの前半は古典派の作品、後半にはロマン派の作品を配しました。 同じ19世紀の作品でも前半と後半ではテイストが少しちがうと思います。 ・・・・・以前の話 (当ブログ「プログラムの作り方」)的には、前半は魚料理、後半は肉料理といったところでしょう。






パガニーニ(1782~1840) : 大ソナタイ長調  Ⅰ.アレグロ・リゾルート  Ⅱ.ロマンス  Ⅲ.アンダンティーノ・バリヤート


パガニーニの話は何度か書いているが

 さて、後半の最初の曲は、パガニーニの 「大ソナタイ長調」 です。 前述のとおり、この曲が古典派に属するのか、ロマン派かということは、はっきりしませんが、旋律中心で、比較的自由な感じになっているので、古典派というより、ロマン派と言った方が似合うのではないかと思います。

 このパガニーニについては、私個人的にもたいへん興味のある音楽家で、当ブログでも何度か書いていますが、一応かいつまんで書いておきましょう。 パガニーニはギタリストというより、ヴァイオリニストとして一般には知られています。 有名な曲としては6つのヴァイオリン協奏曲や、ヴァイオリン・ソロの「24のカプリース」などがあります。 

 リストの有名なピアノ曲「カンパネラ」はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番からで、タレガ他、多くの音楽家が変奏曲のテーマとして用いている「ベニスの謝肉祭」もパガニーニの作品です。




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「悪魔に魂を売って超絶技巧を身に付けた」 などといったことが、まことしやかに語られた伝説のヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ




ギターを含む作品を多数書いている

 一般には、パガニーニがギターも演奏し、多くのギター曲を作曲していたことはあまり知られていませんが、ギター独奏曲を始め、ギターとヴァイオリンの二重奏曲、ギター四重奏曲などギターを含む室内楽などかなり多数のギターを含む作品を残し、また出版しています。

 その中では、パガニーニがヴァイオリンもギターも弾いたということで、当然のなりゆきかも知れませんが、ヴァイオリンとギターのための作品が最も多く書かれ、また出版されています。 ヴァイオリン独奏と言えば、通常はピアノ伴奏となるのですが、パガニーニの場合、ほとんどがギター伴奏となっています。 こうしたヴァイオリニスト、あるいは作曲家は極めて稀なのではと思います。



ギターとヴァイオリンの役割が通常の逆

 この 「大ソナタイ長調」 もそれらの曲の一つですが、ただ他の曲と違っているのは、通常のケースとは逆にギターが主で、ヴァイオリンが伴奏となっている点です。 タイトルも 「ギターとヴァイオリンのためのソナタ」 ではなく、 「 ”ヴァイオリン助奏付き” のギターのための大ソナタ」 となっています。



パガニーニがギターの方を弾いたと言われる

 ギター・パートは、譜面のとおりこれだけでも十分に独奏曲となるくらい充実したものですが、ヴァイオリン・パートはかなり控えめになっています。 この地味なヴァイオリン・パートをパガニーニが弾いたとは考えられず、この曲に関しては、パガニーニはおそらくギターの方を弾いたのではないかと言われています。 ・・・・・実際の記録などはなく、推測でしかないが。



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大ソナタのギターのパート譜。 これだけでも演奏出来るが、私の場合、若干音を加えて演奏している。 ジュリアン・ブリームやジョン・ウィリアムスなども同様。




 一方、その ”地味” なヴァイオリンを弾いたのは、通常、ギターを担当しているギタリストの方と考えられます。 イタリアのギタリスト、ルイジ・レニャーニではないかという説もありますが、これも確証はありません。


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かなり地味なヴァイオリン・パート。 確かに誰でも弾けそうだが、逆にパガニーニがこれを弾くのは結構辛いだろう。



明快に、きびきびと 

 今回のリサイタルでは、基本的には、そのギター・パートを弾くのですが、このままだとやはり和声的に寂しいので、ヴァイオリン・パートを参考に若干音を付け加えています。 第1楽章は 「アレグロ・リゾルート」 となっていますが、このリゾルート(risoluto)は「果断な」 とか 「決断力のある」と言った意味のようです。 明快にきびきび弾くべき、といったことなのでしょう。

 作曲年代は、ほぼジュリアーニの曲と同じですが、ジュリアーニに比べ、かなりメロディックになっていて、確かに、古典派というよりは、ロマン派といった感じです。 なお、原曲にその指定はありませんが、後半部分(再現部の前)に私自身で作ったカデンツァを挿入して演奏します。 カデンツァとは終止形といった意味もありますが、ここでは協奏曲などの最後のほうで、ソリストが自由に演奏する部分を言います。



シチリアーナ風のロマンス

 第2楽章は「ロマンス」となっていて、シチリアーナ風の憂いを帯びたメロディの曲です。  そのメロディは②弦で弾くように指定されており、グリサンド奏法なども交え、たっぷりと歌わせるようにといった意味合いでしょう。 この曲には途中、カデンツァの指示があり、ここでも私が作ったカデンツァを演奏します。 

 このロマンスは中級程度の教材としても用いられますが、美しく、情感を込めて弾くのは決して易しくはありません。 それが出来れば、立派に ”上級者” といえるでしょう。



3楽章で20分以上かかる大曲

 第3楽章は「アンダンティーノ・バリヤート」 となっていて、アンダンティーノのテーマに6つの変奏が付いています。 アンダンティーノとはなっていますが、「アラ・ブレーヴェ」、つまり2分の2拍子なので、軽快な感じとなるでしょう。 最後は消えてゆくように終わります。 3の楽章で、合わせて20数分ほどかかる、ギター独奏曲としてはかなりの大曲に属するでしょう。

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