中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

<ジョン・ウィリアムス コロンビア録音全集>  9


John Williams - Barrios

IMG_0001_20160911122055d49.jpg
しっかりとフレタを持っている



収録曲

アウグスティン・バリオス

大聖堂
マドリガル・ガヴォット
メヌエット
マズルカ・アパショナータ
エチュード
プレリュード
森に夢見る
ワルツ第3番
クエカ(チリ舞曲)
サンバの歌
アコンキーハ
マシーシ
どうか、神のご加護を(最後のトレモロ)
郷愁のショーロ
クリスマスの歌

 1977年  発売





本格的なバリオス人気のきっかけとなったLP

 このLPの話は何度かしていますが、現在のバリオス人気に火を付けたものといえるでしょう。 録音日などは明記されていませんが、国内発売も1977年だったと思います。

 この頃からある程度バリオスはギター愛好家の間で人気が高まりつつありましたが(1950年代くらいまではほとんど弾く人がいなかった)、このLPとほぼ同時期に全音出版からヘスス・ベニーテス編のバリオス全集が出版されたこともあって、バリオス人気は本格的なものへとなってゆきます。

 また録音としても、この頃までにバリオスの作品はある程度録音されていましたが、バリオスの作品のみによるアルバムはこのウィリアムスのものが最初です。 このアルバムにより、これまで一般愛好家には知られていなかった曲なども聴くことが出来るようになりました。

 今日、あらゆるギターの作曲家の中で、バリオスは最も人気のある作曲家(兼ギタリスト)と言えますが、そのことにウィリアムスは非常に大きな貢献をしたと言えるでしょう。



人口的な加工を排した録音、フレタらしさも出ている

 このLPの音質はこれまでのものと違い、残響や高音域を押さえたものになっています。 生音に近い感じになっていると言ってもよいでしょう、ボリュームもかなり押さえ気味になっています。 さらにこの後に録音するポンセの作品集になると、それが徹底し、たいへん困ったことになるのですが、それはまた次にお話しましょう。

 確かにこの録音を聴いていると 「フレタかな」 と言った感じがします。 写真ではくフレタを持っているので間違いなくこのLPはフレタで録音しているものと思いますが  ・・・・・・本当はちがっているかも知れませんね。



ロマンティックなバリオスの音楽とは相性がよい

 ウィリアムスは後年ポピュラー系の音楽に志向してゆきますが、基本的にウィリアムスと言うギタリストはロマンティックなギタリストで、旋律を歌わせるのが得意な人だと思います。 そうしたウィリアムスに、これまた、極めてロマンティックであるバリオスを作品はたいへん相性のよいものです。ここに収録された曲はすべて名演奏といってよいでしょう。



当時は皆開放弦で弾いていた?

 若干余計なことを言えば、前述のベニーテスの譜面で、「クリスマスの歌」のハーモニックス記号が一部脱落しています。 ウィリアムスはこの譜面、またはこの譜面と出所を同じくする譜面を用いていたのでしょう、その本来ハーモニックで弾く部分、を開放弦(譜面上はそう記されている)で弾いていいて、たいへん意味不明となっています。

 今では笑ってしまいそうですが(失礼!)、当時はだれも気が付かず、みんなウィリアムスと同じく開放弦で弾いていました、「なんか変なメロディだな」 と思いながらも。







Manuel Ponce


IMG_0002_20160911131950053.jpg
ファッションも1970年頃に比べるとやや地味になったが、録音の音質のほうはもっと地味になった


収録曲

マヌエル・ポンセ  

「スペインのフォリア」による変奏曲とフーガ
プレリュード
バレー
3つのメキシコ民謡
ワルツ
3つの歌

 1978年 発売




1970年頃の録音の反動? でもちょっとやり過ぎ!

 先ほども触れたとおり、このLPは非常に音を押さえたもので、残響などは全くなく、高音域や低音域も押さえられ、さらに音量も非常に押さえられていました。 1970年前後のウィリアムスの録音は残響を付け(自然の残響ではなく、装置による)、また高音域も伸ばして、かなり派手な音質となっていましたが、このポンセの録音はそうしたことへの反動と思われます。

 しかしこのLPに関しては、ちょっと度が過ぎているようです。 特にLPの場合はアンプのボリュームを上げると針のノイズが大きくなり、まるでかつてのSP盤のようになってしまいます。 もちろん精度の高い装置を使えばちゃんと聴けるのかも知れませんが、当時私が使っていた装置ではかなりノイズが大きくなって、聴きにくいLPとなっていました。

 このCDでは多少ボリュームをあげてもノイズが出ませんから、そうした問題はありませんが、それでも高音域がカットされたような音なので、一瞬 「耳が変になったかな」 といった感じにはなり、やはり違和感はあります。



でも演奏は秀逸

 しかし演奏の方はたいへん素晴らしく、ポンセの大曲 「スペインのフォリア」 も、その美しさに聞きほれて、所要時間20数分というものを感じさせません。 他の小品も魅力的で、いまさらながら、ウィリアムスがこうした定番的なクラシック・ギターのレパートリーをあまり録音しなかったことが惜しまれます。

 ウィリアムスの師匠であるアンドレ・セゴヴィアはポンセの音楽を愛し、その作品の演奏や録音に力を注ぎました。 このウィリアムスのポンセ・アルバムもその師匠の影響があるのかも知れません。 あまりオーソドックスなギターノレパートリーを演奏しないウィリアムスにとっては、ポンセの作品のみのアルバムを世に出した意味は大きいでしょう。 



師、セゴヴィアとは異なる道を進んだが、共通項は確かに存在する

 ウィリアムスはデビュー当時は ”ギター界のプリンス” と呼ばれ、セゴヴィア門下の優等生として世に出ました。 しかしその後はセゴヴィアとは一線を画する方向へと進み、一部のファンからは失望されたこともありました。 確かにその後の活動はセゴヴィアの方向性とはだいぶ違うものの、このポンセのアルバムは師との共通項の一つなのでしょう。

 またセゴヴィアとは違って現代的なイメージのウィリアムスの演奏ですが、しかし基本はロマンティックで、メロディを歌わせることが得意というわけで、やはりしっかりと師匠の音楽を継承しているとも言えるでしょう。 セゴヴィアとの繋がりを感じさせる演奏、それがこのポンセの作品集のLPなのでしょう。
スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する