中村俊三 ブログ

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クイーン・ヒミコ・ストーリー  ~なあんちゃって  1



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西暦206年、北九州イト国宮殿、王の間にて


 「おお、 ヒミコ、 まいったか、 まあ、入れ、 もっと近こう    ・・・・・・お前たちは席をはずせ、しばしの間二人だけにしてくれ、 ・・・・・・ああ、その件についてはまた後で聴く。   今日は何をしておった、ヒミコ、 女官たちとでも遊んでおったか?」

 「いえ、 お父上様、 先日カラより船が入りまして、お頼み申しておりました書物などが手に入りましたので、目をとおしておりました」

 「そうか、 この宮廷でもカラの書物を読めるのは、お前の他には渡来人しかおらぬ。 私も渡来人の助けがないと、どうも・・・・」

 「そうでございますね、 カラでは同じ文字でも国や場所によってかなり読み方も、また書き方もかなり違ってしまいます。 書物を読む場合は、どこの国の人が書いたものかを考えなければなりませんので、本当に難しいものです」

 「なるほど、でも私にはそこまではよくわからん。 それにしてもお前はまだ年端もゆかないというのに、よくそこまで学んだのう。 まさしく、このイト国の才女中の才女である。 いや、倭国全土でも並ぶものはおらんのでは」

 「まあ、お父上様!  お父上さまにそう言っていただけるのはこの上ないことではありますが、私より読み書きが出来るものなど、このイト国にも、また倭国全土にも、あまた、星の数ほどいらっしゃいます。 私の読み書きなど、まだまだ取るに足りないもの。 ただ、私は書物を読むのが好きで、書物などでいままで知らなかったいろいろ知るにつけ、本当に自分は無知であることも知ります。 でもそうしたことも、とても楽しいのでございます」

 「まあ、いいだろう、これは親バカというやつかな。   ・・・・・ところで、いくつになった、今年で?」

 「今年、数えで14になりました」

 「そうか、14か・・・・・・    ヒミコも、だんだんお前の母に似てきたな。 こうしてお前と話していると、なんだか、お前の母と話をしているような気になる、不思議な気持ちだ。   ・・・・・・・私が初めてお前の母に出会ったのは、母がちょうどお前くらいの歳だった。  美しかったな、 本当に、 お前の母は。  お前とそっくりだったよ、 そうして緋の衣をまとったところなど。 あれも緋の衣が映えたな・・・・・  それと、人の話を一度聴いたら絶対に忘れないことまで」

 「この衣は母がめしていましたものを仕立て直したものでございます」

 「なるほど、どうりでな」

 「母は亡くなった時、私は5歳でしたが、母に抱いていただきました時のぬくもりは、今だ忘れてはおりません」



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ヤマトの地へ


 「本当に、もう少し長く生きていてくれればのう・・・・・・・・・    ヒミコ、 今から私の話を聴きなさい、 ・・・・・お前は年が明けたらキビの国の、さらに東のヤマトと言う地に行きなさい。 そこで日の神の妻となり、そしてヤマトの国の王となる。 ヤマトには倭国全土の宮が設けられる。 つまりヤマトの国のみでなく、倭国、あまねく倭の諸々の国々の王となる! 」 

 ヒミコは父の言葉の意味がよくわからなかった。

 「父上様。 日の神の妻になるのは、このイト国の女子にとってこの上ない誉に存じます。   ・・・・・・・しかし、でも、なぜ、私がヤマトの国に?  私は、このイト国において、日の神の妻となるものと、伯母上様から幼少より教えられてきました。  そしてなぜ私が王に?  王は男子がなるものでは?  ・・・・・それにヤマトにはヤマトの王がいらっしゃるのでは? 」

 「話は長くなるかも知れないが、よく聴きなさい。 私の先々代の王まで、倭の諸国はこのイト国を中心にまとまっていた。 我がイト国の王が漢に使者を出し、漢から倭王の称号も得ていた。 しかしその後、天変地異や、相次ぐ戦など、この倭国はたいへんな時代となってしまった。 漢から授かった倭王の称号も、いまやその体をなしていない。 第一、今はその漢さえも滅んでしまっている」

 「倭国では、かつて、たいへん苦難な時代があったと聴いています。  漢も20年ほど前に黄巾の乱をきっかけに滅亡へと進み、楽浪郡は、今や公孫氏が支配していると聴き及んでおります」

 「よく知っておるのう。 倭国でも、今はそれぞれの国ともかなり旧に復してきたが、これからの倭国を考えた時、誰しもこのままではいけないと思っている、それぞれの国の王も、官も、また民も・・・・・   やはりこれからはこのイトをはじめ、キビやイズモやコシなどの国がばらばらに営んでいる時代でゃなくなる。  倭国全体の王を決め、倭全体が一つの国とならなければならない。 今では誰もがそう考えている」

 「そうでございますね」




あまねく、倭国の諸王と、官と、民の母に!

 「これまで、何度も諸王たちが集まって新たな国作りの話し合いがもたれ、なんとかまとまりかけていたこともあった。 しかし実際にイズモの王や、キビの王などが倭国全体の王となっってみると、必ずそれに反対する王や国が現れ、なかなか上手くは行かなかった」

 「諸王とも、他の王を自らの王とし、崇め、従うことはやはり難しいのでしょうね」

 「そういうことであろう。 そこで、今度、キビの王が中心となって新たな案が出された。 それは、まず倭国の新たな都を、これまであまり強い王がいなかったヤマトの三輪山のふもとに設ける。 ヤマトはこの倭国全体の中心でもある。  そしてヤマトの王は倭国全土の王となり、これまでの諸王はそのヤマトの王に従う。  そしてそのヤマト、及び倭国全土の王には、いにしえより霊力に優れていると言われている、わがイト国の王女がなる!」

 「我がイト国の王女が、でございますか? 何故に?」

 「諸王も、そのキビの王の考えに賛同の意を表した。 私はお前にはこのイト国で日の神の妻となり、ずっと私のそばで神の神託を受けてほしいと思っていた。 お前が私のもとを離れ、遠いヤマトの地に行ってしまうなど、私のは耐えられない。   私は当初、キビ王の考えには反対した。 しかしキビの王を始め、諸王ともこの倭国の王となれるのはイト国の王女であるヒミコ、お前しかいなと言う。    ・・・・・・確かに、この尋常でない責務を負うことが出来るのは、やはりお前しかいないと、私もだんだん考えるようになり、最後には諸王の意見に賛成した」  

 「父上様、 父上様のお話は、私の身の丈で測るにはあまりにも大きく、にわかには解しかねます。  無論、私のゆくすえは、お父上様の御心次第でございます。  されど・・・・・」


 「諸王ともお前のことを、特に名指しで女王に、と言っている。 お前になら諸王も喜んで従うだろうと。  私も極めて心が痛む。  しかしお前には並外れた才と霊力が備わっている。  ・・・・・やはり私の手もとに留めておくことは許されぬこと。   お前の類まれなる霊力と才は、この倭国を救うことに使わなければならない!   ・・・・・お前はヤマトの地で日の神の妻となり、 そして、 あまねく、倭国の諸王と、官と、民たちの母となるのだ!」

 「私が、  ・・・・・でございますか?」

 「すべてが新しくなる!  すべてだ。  新しい神!  新しい国!  新しい都と宮殿! そして新しい王!  新しい倭国の誕生だ! 」


   ・・・・つづく

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