中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クイーン・ヒミコ・ストーリー  ~なあんちゃって 4




誤算

 ヒミコの一行は港を出た。 10日余りの滞在期間中、キビ王は、ヒミコのまだあどけない美しさと、微笑んだ時の愛らしさ、そしてその外見と年齢に不釣り合いな細心の心配りと、幅広く、かつ深い知識、そして謙虚さ、それらすべてのものに魅了された。 王自身だけではなく、側近や、女官、兵士から、奴婢に至るまで、ヒミコが出会ったすべての王宮の人々の心を和ませ、幸せな気持にさせ、キビの宮を後にした。 

 ヒミコのそのいかなる者の気持ちも即座につかんでしまう、まさに魔力とも言える魅力に、キビ王は一抹の不安を覚えた。 もしかしたら、この王女は単なる飾りには収まらないかも知れない。 若干の誤算を悔やんだが、もう遅い。 決またことだ。



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ヤマトへ

 ヒミコの船団はキビの港を出てさらに東へと向かい、ナニワの港に着いた。 まだ予定の日まで日にちがある。 ヒミコはこのナニワから陸路で直接ヤマトには行かないで、紀伊半島を船で回って、イセやオワリの方も行って見たいと言った。 しかし紀州灘は極めて波が荒く、玄界灘を行き来するつわもの揃いのイトの船乗りたちも、危険だと尻込みした。 

 またイセやオワリからヤマトに入るには、険しい山道を通らねばならず、さらにオワリでは大倭国とは一線を画する国々もあるということで、いずれにしても、その願いはかなわなかった。

 結局、ナニワの港で船を国に返し、陸路でヤマトに向かうことになった。 ヒミコは自分の足で歩いて行きたかったが、ヒミコは倭国の女王ということで、輿に載らなければならなかった。 ヒミコの一行にはその輿を担ぐ人夫や警護の兵士なども加わって、さらに大きな行列となった。

 建設中の王宮へは、ほぼこのまま東に進めばよいのだが、 西方から王宮に入るのは方角が悪いということで、一旦南へ向かってから川沿いに東に向かい、そこから山を越えて王宮入りすることになった。

 少し遠回りだが、そのことはヒミコにとってはかえって嬉しかった。 カワチから生駒連山を超えてヤマトに入ると、道のあちこちに警護の兵士たちがいた。 また何事かと、人々が行列を見に集まってくる。 しかし行列が人々の前を通るときには、人々はひざまずき、ひれ伏さなけばならない、それを怠るものは、兵士によって叩かれたりしていた。

 イト国では、王自ら民たちと分け隔てなく話を交わしたりしていたので、ヒミコにはこの光景は異常に映った。 しかし倭国全体からすれば、この時代、こうした事の方は当然のごとく行われていただろう。


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 カツラギを経て吉野川に出ると、そこから川沿いに東に向かった。 この周辺では春には山桜が咲き、秋には木々の葉が紅色に色づくと言う。 残念ながら、今はそののどちらでもないが、深緑の山々も美しい。 ヒミコは人気の少ない山道などでは、輿を降り、自分の足で歩いた。 とても気持ちが良かった。 そこから北に向かって山道を進み、平地に出ると、もう王宮は近かった。






王宮

 キビ王から聴いていたとおり、宮はまだ建設中だが、主な建物はほぼ出来上がっていた。 いくつかの大きな建物が、同一線上に三輪山と竜王山の間あたり、つまり日が昇る方向を向いて並んでいる。  そしてそれらの建物は柵にによって囲まれ、そこが神聖な場所であることを示している。 その範囲はたいへん広大なものであった。



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 宮の建設のために多くの人が出ていて、物を持ち上げたり、運んだりする時の掛け声やら、何やら打ち付ける音などで騒然としている。 また付近の道路も、物を運ぶ人などであふれかえっている。 確かに今、倭国のなかで最も賑わっているところかも知れない。

 柵の外側には、おそらく人夫たちの仮の住居と思われる建物がたくさん建ててある。 それらはすべて高床式となっているのも驚きだ。 この時代、庶民にとっては高床式の住居は、まだ一般的とは言えない。



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 王宮は三輪山と竜王山の間から流れる川が二股に分かれたところに建てられ、キビ王が言った通りそれらは掘られた運河で結ばれている。 物資の運搬にはたいへん便利だ。


 ヒミコたちは、その建設中の王宮ではなく、仮の住まいに案内された。 ここでしばらく過ごした後、秋にはヒミコの女王就任と、宮の落成、および収穫を祝う祀りなど、長期にわたって盛大なイヴェントが行われる予定になっている。 まさに倭国史上最大言える大イヴェントだ。 

 そしてその後、ヒミコはこの偉大な王宮の主として君臨することになる。
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