中村俊三 ブログ

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クイーン・ヒミコ・ストーリー  ~なあんちゃって 5




長い年月が流れた

 ヒミコがヤマトの女王の座に就いてから長い年月が流れた。  尾張から三河、駿河にかけての東海地方は、相変わらずヤマト政権の傘下に加わる村や国と、そうでないものがが混在していた。



東国で反乱

 また、これまでヤマト政権に従っていた国や村においても、ヤマトの役人と、その地の豪族や民たちとの間で、税の取り立てや、役人の不正などを巡って争いが時折あったが、 ここにきて、そうしたものが頻発するようになった。

 そして東海地方の多くの地域が ”反ヤマト” を掲げて連合する動きが現れた。 さらにそれらの小国連合に、東国の覇者とも言えるケヌ国が支援する形となり、「ヤマト政権」 対 「反ヤマト連合」 という構図が出来上がった。  両者は一触即発の様相を示してきた。

 東海のいくつかの国ではヤマトの役人の館が襲われ、長官たちが一族と共に滅んだり、またヤマトに逃げ戻ったりする事態が起きた。



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東国征伐を奏上

 ヤマトの大臣たちは宮殿内において会議を開き、近畿から中国、四国、九州などで、ヤマト政権下のすべての地域で兵を招集し、東国の反乱勢力を一気に攻め滅ぼすべき、という結論に至った。 そしてそれを女王ヒミコに奏上した。

 これまでの通例では、女王に最終的な決断を求めるといっても、それは形だけのもので、大臣たちが下した判断に、女王が異を唱えることはなかった。 大臣の誰もが今回の場合も、通例通りに事が運ぶと信じて疑わなかった。



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御簾の奥から甲高い声が鳴り響いた

 大臣の筆頭が女王の御簾の前で会議の結果を奏上し、下がろうとした時、御簾の奥から、これまで聴いたことない甲高い声が鳴り響いた。 その場に居合わせた大臣一同は何事が起きたのかと、一瞬呆然となった。



 「一同の者たち!  お前たち大臣一同の下した判断は聴いた。  お前たちはこの度の事態に対して、全国から兵を集め、東の諸国と大戦をすると言っている。  しかし、今、全国から兵を集めたらどうなる?  この度の東国の反乱の事態を考えると、生半可の兵の招集では、東国の勢力を打ち破ることは出来まい。  それこそ、ヤマトに従うすべての国から根こそぎ若者たちを集めての、徹底した招集が必要なのは自明だ。 でも、それを今行ったらどうなる? 」



 通例では、女王の話は側近を通して大臣たちに伝えられるので、大臣たちは女王の声を直接聞くことなどなかった。 このように大臣たちを前にして女王自身が声を張って話をするなどということは、前代未聞のことであって、皆、呆然となったのは無理もない。 女王はさらに続けた。
 


  「戦場となった村々が荒廃し、あるいは村ごと消え去ったりするのは当然だが、戦場とならない村でさえ働き盛りの男を兵にとられ、また、その兵のために米などを送らなければならなくなる、女手や老人中心にだ。 そうでなくとも村々では、昨今の日照りなどで厳しい状況である。  ここで全国を巻き込んだ戦など始めては、これまでヤマトに従っていた村や国でさえ反乱を起こしかねない。

 確かに兵力においては我が方が上だ。 東国勢がどのように兵をかき集めたとしても、我が方の半分にもみたないであろう。  しかし戦の勝ち負けは兵力だけで決まるものではない。 我が方が東国に攻め入った時、東国勢は自らの存亡をかけての戦いとなる。 おそらく兵も、民もなく、皆死を恐れず我が方に戦いを挑んでくるであろう。 我が方は数で勝るといえ、村々から強いて集められた者たちが中心だ。 戦意に差が出るのは明々白々。 




私は大倭国の女王ヒミコである! 私は神である! 

 この度の戦は簡単に勝てないだけなく、長引くことも往々にしてある。 戦が年をまたぐことにでもなったらどうする?  今、倭国を二分しての戦いなど、誰にも利するものではない。 事態が悪い方向に進めば、このヤマトを中心とした倭国が、漢などのように滅びることすらあり得る。 私はこのヤマトを滅ぼすために王になったのではない・・・・・・

 一同の者!  それでも戦がしたいなら、まずこの私を、死たらしめよ!   私は彼の世に行き、そして事の次第を神にお告げ申す。 その時、神がどういう判断をなされるか、神の御心次第である。  お前たちが正しいのであれば神はお前たちを許すであろう。  しかし、もし、そうでなかったら・・・・・     

 さあ!  お前たちが、自分たちの考えが正しいと思うならば、 あるいは、この女王ヒミコが間違っていると思うのであれば、 この場ですぐ私を殺しなさい!  さあ!  私を刺しなさい! 

 ・・・・・・それが出来ぬのであらば、 この場で私を刺すことが出来ぬのであらば、 この件については、すべて私に任せよ!  そして一同の者! 今後すべて私の命に従いなさい!   私には、この倭国の、あまねくすべての王や民たちを守ることを、神から委ねられている!  私は大倭国の女王ヒミコである!  私は神である! 」





皆、女王の命に従うことを誓った

 大臣たちは神の声を聴いた。  そして、その神の言葉のあまりの恐れ多さに、ただただ、ひれ伏すのみであった。  今後すべて女王の命に従うことを皆誓ったのは言うまでもない。 






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不満を吐露させた


 大臣たちから完全な委任を取り付けたヒミコは、まず信頼できる腹心の者たちを、反乱を起こした村や国に使者として送った。 ヒミコは使者たちに、決して説得するな、まず黙って話を聴けと命じた。 そしてヤマト国や、ヤマトの役人たちへの不満を洗いざらい話させるように言った。 そうすると、これまでヤマトに不満や反意を持っていた者たちも、次第に気持ちも和らいでいった。

  しかし、その一方で、近江や伊勢、美濃などの東国勢と接する箇所に精鋭軍を配置して、これ以上戦禍が拡がるのを防ぐことも怠らなかった。 そして、兵を出した地域からの年貢等を免除し、民たちの疲弊に備えた。 




魏に使者を出し、倭王の称号を得る

 ヒミコにはさらに奥の手があった。 これまで大陸の遼東半島から楽浪郡を押さえていた公孫氏に使者を出していたが、その公孫氏が滅んだ。 そうした情報を素早く得ていたヒミコは、すかさず魏に使いを出し、魏から倭王の称号を得、ヤマトの王は魏が認めた倭国の唯一の王であることを倭国全土に知らしめた。 また詔書、黄幢も得て、ヤマトには魏が後ろ盾になっていることを、反勢力に対して強く誇示した。

 ヒミコは焦らなかった。 ヤマトの王、つまり自らが魏も認める大倭国の正統的、かつ唯一の王であることを全国に知らしめ、東国勢に心理的圧力を加えつつ、その一方でヤマトに反感を持っている者たちの気持ちを少しずつ和らげる手だてを行っていった。

 そして、ヤマトに心を開いた国や村には最新式の鉄製農具や、また優れた品種の種もみなどを与え、また新たな作物の栽培方法なども伝授した。 それらにはヒミコの腹心の部下である渡来人たちの尽力が大きかった。




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三角縁神獣鏡

 また、そうした国などの王や首領たちに対しては、神の御心を映す鏡として魏から下された鏡も与えた。 国が一つになるには、まず同じ神を崇める必要があると、ヒミコは考えた。 そしてその魏鏡を持つということは倭国唯一の王であるヤマトの王、つまりヒミコからその地方を治めることを認められた証となった。

 そうしたヒミコの硬軟にわたる策で、徐々にではあるが、ヤマト政権に、よりを戻したり、新たにヤマト政権の一員に加わる国も、次第に出てきた。 中には陸奥や出羽のような遠隔地にもかかわらず、ヤマトとの繋がりを求める国もあった。 

 結果的に、ヒミコは戦争で大勝利して得られるもの以上のものを、全く血を流さずに得た。 さらに混迷していた倭国も、東国の含めた、本当の意味での ”大倭国” が、ここに成立した。  ヒミコはヤマトの大臣や民たちからだけでなく、倭国全土の者たちから、神と崇められるようになった。



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