中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

ブレーと言えば


 ブレーと言えば、逆の例(前回の記事の)もあります。 これは19世紀のギタリスト、ナポレオン・コストが編曲した17世紀のフランスのギタリスト、ロベルト・ド・ヴィゼーの組曲ニ短調からブレーとガヴォットです。




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ナポレオン・コスト編 ド・ヴィゼーの組曲ニ短調よりブレー  見た感じ、あるいは聴いた感じではガヴォット?





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同ガヴォット 上のブレーとほとんど同じでは?





たまには例外も?

 たいへんよく似ていますね、どちらも比較的テンポの速めの舞曲なので(ブレーの方がちょっと速いかな)、なおさら同じ感じに聴こえてしまいます。 下のガヴォットの方は1,3拍目にアクセントがきやすい形になっているので、確かに下のガヴォット風とは言えます。

 前回の記事で、「ブレーは予備拍が1拍」 と言いましたが、御覧のとおり、このブレーは2拍あります。 たまには例外もあるのかなと言いたいところですが、原曲に近い現代譜(カール・シャイト編)では次のようになっています。





本当はこうなっている


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オリジナルに比較的近いと言われるカール・シャイト編のブレー  やはりオリジナルではアウフタクトが1拍になっている





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同ガヴォット  基本的にはコスト編と変わらず、聴いた感じでは両者はそれほど違いはない、それならあえて変更しなくても? 特にに弾きやすくなっているわけでもないし。







19世紀には、もうブレーがどういう曲なのかわからなくなっていた?

 これでわかりましたね、コストがブレーの最初の2つの8分音符を4分音符に変えてしまったと言う訳です。 8分音符で始まるのは、どうも窮屈、4分音符で始まった方がずっと流れがいいじゃないかと。 そんなことかなと思います。

 この頃(19世紀半ば)には、もうすでにブレーがどういう舞曲だったかということはわからなくなっていたのですね。 もっともブレーが4分音符1個分の予備拍を持つなどということはバロック時代でも、ごく少数の宮廷人の間にだけ常識だったのでしょう。 





禁じられた遊びにも出てくる曲だが

 このブレーは例の映画 「禁じられた遊び」 でイエペスが弾いている曲です。 私たちの年代でしたら、この曲をイエペスの演奏で知ったと言う人も多く、この4分音符で始まるコスト編のほうが聴きなじみがあり、かえってオリジナルの8分音符で始まる方が違和感があるかも知れませんね。





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映画「禁じられた遊び」の中では、ヴィゼーのサラバンドとブレーはメイン・テーマ(ルビラ作曲)と同じくらい頻繁に出てくる。 この映画を一度でも見たことのある人なら、このヴィゼーのブレーは、曲名などはわからずとも、自然と覚えてしまっているのでは。 もちろんコスト編で。





セゴヴィアの影響?

 イエペスがコスト編を弾いていたのは、おそらくセゴヴィアの影響でしょう。 セゴヴィアはこのニ短調組曲をほぼ全曲演奏していますが、このブレーはコスト編を用いています。

 セゴヴィアは、この組曲の他の曲についてはオリジナルの譜面を使っていると思われますが、このブレーに関しては、おそらく若い頃からコスト編に馴染んでいて、コスト編で演奏したのでしょう。





バロック音楽、あるいはバッハの曲では例外なくブレーのアウフタクトは1拍


 ブレーもガヴォット同様、バロック時代においてはアウフタクトが1拍と決められ、ほとんど例外はありません。 少なくとも私が知る限りではそうなっています。





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ディユアート編のバッハ:チェロ組曲第3番のブレー





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無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番のテンポ・デ・ボレア(ブレーのテンポで)





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リュート組曲第1番のブレー。 以上のようにバッハの作品の場合は、例外なくブレーは4分音符1個、または8分音符2個になっている。





21世紀的には、教材として用いるのは問題

 このド・ヴィゼーのブレーを含むコスト編のドヴィゼーの 「6つの小品」 は現在でもギター教室の教材としても用いられています。確かに魅力的な曲が多いのですが、21世紀の今日としては、これを教材として用いるは、やはり問題あるでしょう。 他に本来は1曲であるはずのメヌエットⅠ、Ⅱを別々の曲扱いとしています(セゴヴィアもそれに従って演奏している)。
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