中村俊三 ブログ

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偽作の名曲いろいろ 5 ~濡れ衣編



フランシスコ・タレガ : タンゴ




「椿姫幻想曲」がアルカスの作品であることは知られているが

 最近では皆さんもご存じと思いますが、タレガには偽作とされるものが結構あります。 特に有名なものとしては 「椿姫幻想曲」 で、これはタレガの先輩にあたるスペインのギタリストのフリアン・アルカスの作品と言われています。

 とはいっても、そのアルカスの書いた原曲の譜面を私自身では持っていないので、どの程度タレガが書いた譜面とアルカスの原曲が近いのかは、よくわかりません。 ・・・・いろいろがんばればアルカスの原曲の譜面も入手できるのかな?




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 フリアン・アルカスはタレガ以前においてはスペインで最も高く評価されたギタリストで、この曲を始めとしてヴィルトーゾ的な作品を多数残しています。 かつては ”谷間の時代 (暗黒時代だったかな?)” と言われた19世紀半ば頃のギタリストですが、最近ではタレガに劣らない優れたギタリストとして、その偉業を再評価されています。




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マリア・エステル・グスマン演奏のフリアン・アルカス作品集のCD  この「椿姫幻想曲」は収録されていない




 この曲が一般に知られるようになったのは比較的最近で(比較的最近タレガの名の入った譜面が再発見された?)、私の知る限りでは1980年代にカルロス・ボネルの録音で知られるようになったのではと思います。  また、その時点でこの曲がアルカスの作品であることも、ほぼ同時に言われていたような記憶があります。 





冤罪が晴れることも?

 しかし今現在では、アルカス作曲とされる場合もありますが、堂々と ”タレガの傑作” として表記されたり、解説されているものも少なくありません。 アルカスのためにも、その辺ははっきりしておいた方がよいのではと思います。  ・・・・・・最もいろいろ研究した結果、この作品は紛れもなくタレガの真作だったなどという根拠が出てくる可能性もなくはないかもしれませんが。

 



タレガがリサイタルの際に必ず演奏したという 「グラン・ホタ」 も

 タレガがリサイタルの時に必ず演奏したと言う 「グラン・ホタ」 もフリアン・アルカスがスペインでよく知られた旋律(ホタ)を基に作曲した 「ホタ・アラゴネーズ」 を改編した作品で、アルカスの書いた変奏のうち、いくつかのものはそのまま使用されているようです。 また、1910年頃のアリエール社の出版譜(現代ギター社版と同じ)に付いているイントロは、同時代のスペインのギタリストのホセ・ヴィーニャスの作品の一部だそうです。




今現在なら違法行為?

 こうしたことは、今現在だったら偽作というより ”盗作” ということになってしまい、違法行為となりますが、当時はそうした著作権的なことはあいまいだったのでしょう。 タレガにはこうした他の音楽家から引用した作品がかなりあり、そしてその出典を明記しないこともしばしばあったようです。

 こうした件について、決してタレガは悪気があって他の音楽家の作品を盗用したわけではないと言われていますが、19世紀といえど、ある程度は著作権といった概念も出来ており、大半の音楽家はこのようなことはしてはいなかったので、タレガが他の音楽家の作品を使用することについて、ややルーズだった点は否めないでしょう。




過去の大作曲家はリスペクトしていたが

 タレガはもちろんギターのための作品を残していますが、作曲より演奏の方に主眼が置かれていたという点もこうした事が起きた理由の一つかも知れません。 ただ、タレガはベートーヴェンやシューマンなど、過去の大作曲家に対する尊敬の気持ちは強かったようで、自らの作品よりも重要視してた印象があります。

 その反対に同時代のギタリストの作品をリスペクトする気持ちは多少薄れていた可能性もあります。 特にフリアン・アルカスはタレガにとって師匠とも言える存在だったはずで、実際にタレガは師の作品(一部分だとしても)を演奏していたわけですから、自らの作品のタイトルなどにその名が現れてもよいはずなのですが、そうしたものは一切ないようです。




師というより越えるべき存在

 タレガにとってアルカスの存在は大きかったはずですが、師というよりライバルで、越えるべき存在だったのかも知れません。 これと同じ関係はタレガとリョベット、 あるいはリョベットとセゴヴィアの間にもありそうですが、この話はまた後にしましょう。 でもこれらのスペインの大ギタリストたちの相関図は、なんだか面白いですね。


 


 
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