中村俊三 ブログ

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バッハ:平均律クラヴィア曲集 3




前回は平均律の話で終わってしまったが

 前回はなんと、平均律の話のみで終わってしまいましたね、このままではいつ本題に入れるかわかりません、今回こそはちゃんと本題に入りましょう。



第1巻と第2巻があり、ハ長調からロ短調まで半音ずつ上がってゆく

 バッハの数々の鍵盤作品の中でも、名曲中の名曲である、この 「平均律クラヴィア曲集」 は第1巻と第2巻があって、それぞれ24の調でプレリュードとフーガが書かれています。 ハ長調から始まり、それに同主短調のハ短調が続き、嬰ハ長調、嬰ハ短調と半音ずつ上がってゆきます。 そして最後はロ短調ということになります。 この曲の並びは第1巻、第2巻とも全く同じになっています。




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第1巻 第1番はハ長調




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第1巻 第24番はロ短調




調の数は24

 なぜ24の調か、ということについてはおそらくこのブログを読んでいる人なら説明は不要かも知れませんが、1オクターブは12の半音で出来ていて、その12の半音それぞれを主音とした音階、すなわち“調”が可能となります。 そして音楽(少なくとも古典的な音楽では)は長調と短調から出来ているので、それで、調は24個となる訳です。




名前だけなら24以上ある


 若干補足すると、 「ド#」 と 「レ♭」 は同じ音ですが、それぞれの音を主音とした調は 「嬰ハ長調」、 「変ニ長調」 となり、同じ調でも違った名前で呼ぶことが出来る訳です。  したがって、実質上は24個の調しかないのですが、名前だけで言えば24個以上あるということになります。



普通は#などの数が少ない方で書くが

 因みに嬰ハ長調は#が7個付き、変ニ長調は♭5個です。 こうした場合、一般的には#や♭が少ない方、つまり変ニ長調とすることが多いのですが、バッハの平均律曲集第1巻では、♯7個の嬰ハ長調の方で書かれ、 第2巻では逆に変ニ長調で書かれています。 

 さらに、第1巻の第8番では、プレリュードが変ホ短調(♭6個)、フーガが嬰ニ短調(♯6個)と、プレリュードトフーガで違った書き方がされています。 これは練習する人が混乱すると言うことで、以前は変ホ短調に統一している譜面も出ていますが、最近の譜面ではバッハが書いた通りにしてあることが多いようです。




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第1巻の第3番は嬰ハ短調で表記されている。




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第2巻 第3番は変ニ長調で表記されている。 もちろん実質は同じ調。 バッハがなぜこのように違った表記で曲を書いたのかは私にはよくわからないが、状況によってどちらの表記もあり得るということのメッセージなんだろうか。



計96曲で、4~5時間くらいかかる

 24の調でそれぞれプレリュードとフーガがあり、それが2巻ある訳ですから、曲としては96曲と言うことになります。それぞれの曲の長さとしては、平均3分弱といったところで、演奏者にもよりますが、全曲演奏すると4~5時間くらいになります。 



第1巻はケーテン時代に完成

 第1巻が完成したのが1722年のケーテンの宮廷に勤めている頃で、バッハ37歳の時となります。 個々の曲としては、それ以前に書かれたものが多いと思いますが、この1722年までにまとめられたということでしょう。




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バッハが約5年間務めていたケーテン宮の入り口。 現在は記念館のようになっているらしい。 バッハはここに勤めている間に数々の器楽の名曲を書いた。




 バッハはその生涯の大半を教会関係の職場で過ごしましたが、このケーテン時代というのは、ほぼ5年間という比較的短い期間でしたが、協会音楽から離れ、器楽作品の方に力を注ぎました。 この時期にこの平均律クラヴィア曲集第1巻をはじめ、ブランデンブルク協奏曲などの多数の協奏曲、無伴奏のヴァイオリン曲、およびチェロ組曲など、私達にとって親しみのある作品が数々生まれました。



インベンションにも平均律曲集と同じような発想が

 24の調を対等に扱い、それぞれの調で作品を書くという発想をする音楽家は、当時バッハ以外に存在したかどうかわかりませんが、このように完成された形で残したのは、おそらくバッハ以外にはいないのではないかと思います。 こうしたことは、バッハの音楽に対する考え方の一つを表していると思われます。

 バッハはその翌年1723年、「2声のインベンション」、および「シンフォニア(3声)」をまとめます。 こちらも平均律曲集同様、ハ長調から半音ずつ上がってゆく形で曲が並んでいますが、24ではなく15の調となっています。

 教育的な作品ですが、家族や、弟子たちなど、音楽を志す者なであれば、これら“ほぼ”すべての調の作品を練習する必要があると考えていたのでしょう。
  


弟子に3回も全曲演奏した

 この第1巻の計48曲は、基本的に ”曲集” であって、一つの音楽作品、つまり連続して演奏するということはあまり想定てはいないのかも知れませんが、逸話とあいて、バッハのある弟子に、3回もバッハ自身でこの第1巻の48曲を最初から最後まで連続して聴かせたそうです。

 これはいろいろな意味で凄いですね、この曲集を続けて演奏すれば、2時間以上はかかりますが、それを一人の弟子の教育のためだけに、しかも3回も行ったと言う訳です。 その弟子はどんな気持ちで聴いていたのでしょうか、今の私たちには全く想像を超えた贅沢です。 




お尻が痛くなったから早く終わってくれないかな?


 ・・・・・案外、もうお尻が痛くなって来たから、早く終わってくれないかな、 なんて、    ・・・・・まあ、そんなことはあり得ないでしょうね、この話が残されているのは、おそらくその弟子由来だろうと思われますので、その弟子本人もバッハに3回にわたって全曲演奏してもらったということは、極めて光栄なことと感じたのでしょう。 だからこの話を後世に残したのではないかと思います。

 多忙なバッハが、あえてそのようなことをしたと言うことは、それだけ弟子の教育に熱心だったと言うこともありますが、やはりこの平均律クラヴィア曲集が重要な作品だと思っていたからなのでしょう。 さらには、バッハはこの曲集を演奏するのが好きだったのでしょう。 もしその弟子が本当にバッハの演奏を楽しんだとしたら、間違いなく、それはバッハ自身の楽しみでもあったのでしょう。




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