中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

               ・・・・・・「禁じられた遊び」について・・・・・・

 私がギターを始めたのは1960年代の始め頃ですが、この頃ギターを始めた人にとってはこの「禁じられた遊び」はたいへん影響の大きかった曲で、この曲をきっかけにギターを始めたという人も少なからずいたのではないかと思います。しかし最近ではこの曲や映画のことをあまりよく知らない人も多いのではないかと思いますので、今回はこの曲の話をします。


禁じられた遊び=お墓ごっこ

 この映画は1950年頃封切られたもので、監督はルネ・クレマン。舞台は第2次世界大戦が始まった頃のフランスで、ドイツ軍機の銃撃で両親をなくしてしまった女の子と、その女の子が引き取られた農家の少年との話です。少年は死んだ動物のためにお墓を作ってあげますが、二人はさらに、亡くなった女の子の両親のために、お墓から十字架などを盗み出してしまいます。それが「禁じられた遊び」ということなのでしょう。


イエペスのギターが白黒の映像に色彩を

  音楽は当時の若手ギタリストのナルシソ・イエペス(当時25才)が担当し、現在「愛のロマンス」と呼ばれているメイン・テーマの他、次の曲が演奏されています。

  サラバンド、ブーレ(ロベルト・ド・ヴィゼー)

  二つのメヌエット~第2メヌエットのみ(ジャン・フィリップ・ラモー)

  練習曲イ長調 Op.38-6(ナポレオン・コスト)

  アメリアの遺言(カタルーニャ民謡~ミゲル・リョベット編)

以上の曲がこの映画の中で流れてきますが、メイン・テーマ以外はほとんど断片的に聴こえてきます。またそれらの曲をメドレー式に繋いだ演奏もあり、子供の頃そのレコードが家にありました。映画の方はモノ・カラーで今見ると、見づらいところもありますが(草などが枯れ草なのか、緑の草なのかわからない!)、ギターの音がよく合っていて、イエペスのギターが白黒の映像に色彩を添えている感じがします。


イエペス作曲?

 メイン・テーマの「愛のロマンス」はスペインのギタリスト「アントニオ・ルビラ」の1930年代の作品と言われ、1940年頃に別のギタリストによって、別の映画にも使われているそうです。最近では「イエペス作曲」とされることもありますが、種々の状況からすると、その可能性はあまりないのではないかと思います。ただ現在楽譜にされているものや、演奏されているものはほとんどイエペスの演奏に準じているので、少なくとも「イエペス編」とは言えるかも知れません。またかつては「スペイン民謡」とされていましたが、そんな民謡は、少なくともスペインにはないそうです。


みんな弾いていた

 前述のとおりこの当時、この映画およびこのメイン・テーマとギターの関係は非常に深く、この曲をきっかけにギターを始めた人は多かったのではないかと思います。また当時、多少なりともこの曲が弾けた人は少なくなかったと思います。前述の兄の友人もこの曲を弾いていたのでしょう。また「第三の男」、「鉄道員」、「太陽がいっぱい」など、他の映画主題曲もこの当時とても人気があって、よくギターで演奏されていました。


人気ギタリスト~10弦使用の20世紀を代表するギタリスト

 ナルシソ・イエペスはこの映画をきっかけに一般的に知られるようになり、特に日本での知名度は高く、アンドレ・セゴビアの名前は知らなくても、ナルシソ・イエペスを知っている人は非常に多かったのではないかと思います。しかし決して人気先行のギタリストなどではなく、高度な技術と独自の音楽観を持ったギタリストだと思います。1960年頃からたびたび来日し、たくさんのLPレコードも売れていました。その後、自ら考案の調弦法による10弦ギターを使用し、独特の音響世界を実現しました。他にはあまり例のない個性的な演奏スタイルとも言えるので、絶賛する人と、そうでない人と分かれるのは、やむをえないところかも知れませんが、20世紀を代表するギタリストの一人であるのは間違いないと思います。1997年に69歳でなくなりました。


今は「カヴァテーナ」の方が

 もっとも最近では、ギターで有名な映画音楽といえば、「ディア・ハンター」のメイン・テーマの「カヴァティーナ」の方が有名で、人気も高くなっています。この映画も「禁じられた遊び」と同様に戦争をテーマにしたもので(ベトナム戦争)、曲の方もメロディにアルペジオ伴奏と、似た点も多いのですが、曲の感じはまるで違います。メロディもコードも「カヴァティーナ」の方がずっと複雑になっていて、ちょっと聴くと簡単そうにも聴こえるのですが、実際に弾いてみるとかなり難しい曲になっています。もっともウイリアムスの弾いているオリジナルではオーバー・ダビング(一人二重奏)になっています。また曲の感じも「禁じられた遊び」の方は悲しさが率直に伝わってくるのに対し、「カヴァテーナ」の方はシュールというか、無重力感のようなものが漂っているような気がします。最近ではこの曲をきっかけにギターを始める人もいるのではないかと思います。



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