中村俊三 ブログ

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バッハ:平均律クラヴィア曲集 7



前回は楽譜の話で終わってしまったが

 前回は楽譜の話で終わってしまいましたね、相変わらず話の進みが悪いですが、第2番ハ短調と第3番嬰ハ長調のプレリュードの話をしたところでしたね。どちらも16分音符が連続する、いわゆる無窮動的な曲といったもので、練習的な要素もある曲です。 きっと音大などで頑張って練習した人も多いのでしょうね。



かつてのピアニストはこれらのプレリュードの対比ははっきり付けて弾いていたが

 この二つのプレリュードはよく似た感じの曲ですが、力強さのある第2番のハ短調に比べて、第3番嬰ハ長調は軽快でさわやかな感じもします。 前回の楽譜の話で、第2番のハ短調にはアクセント記号が付いている譜面もあると言うことですが、元々は付いていません。 そのアクセントの付いた個所というのは右手と左手の距離が離れる、つまり音域が拡がるので、かつてのピアニストなどがアクセントを付けて弾いたのでしょう。 



そう言う意図ではなかったかも

 確かにピアノで弾くとそうなるのかも知れません。でもチェンバロで聴くと、ほとんど逆に、その拡張した部分のほうが小さく聴こえます。これはチェンバロの場合、中音域はよく出るが、高い音域や低い音域がよく出ないからだと思います。 そう考えると、バッハは音域の拡張した拍頭にアクセントを置くということは、それほど考えなかったのかも知れません。

 ピアニストによっては、この2曲の対比をはっきりと付けて、第2番は非常に強く、速く、エネルギッシュに弾き、第3番のほうは小さな音で軽く弾くというように弾く訳ですが、そうしたこともバッハが意図したかどうかは、微妙なところです。 最近のピアニストはやはりそれほど音量や、テンポの対比を極端には取っていません。



フーガの方も少し似ている

 それぞれのフーガのほうは、似ていると言う程ではありませんが、8分音符と16分音符の組み合わせということで、やや近いと言えば近いといえるかも知れません。 第2番ほうは譜例のように2個の16分音符に8分音符が続く形になっていますが、この音型はバッハがよくフーガの主題に使う、定番的な音型といえるでしょう。


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この8分音符と16分音符による音型は、バッハのフーガにはよく使われる




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第2番のフーガと似ていると言えば似ている




 私たちギターをやるものには馴染みの深い、無伴奏ヴァイオリンソナタ、第1番と第2番のフーガの主題もこの音型で出来ています。 どちらも単一の主題によるフーガだと思いますが、どちらも対旋律が二つあり、やや複雑に聴こえます。 





第4番嬰ハ短調 

 嬰ハ長調という調は、あまり使われず、どちらと言えば変ニ長調として書かれることは前に言いました。 つまり嬰ハ長調は#7個で、変ニ長調は♭5個だからです (どっちも多い!)。




#や♭は8個以上は付けられない?

 しかし短調の場合は逆で、嬰ハ短調とは書かれますが、あまり変ニ短調とはかかれません。それはそうですね、嬰ハ短調は#4個だが、変ニ短調は♭8個となるからです。 どんなに#や♭をたくさん付けるのがが好きでも、8個以上付けることは出来ません(多分そうだと思います)。



真打登場?

 そう言った訳で、第1巻も第2巻もまたプレリュードもフーガも嬰ハ短調は嬰ハ短調です。 さて、この嬰ハ短調ノプレリュードとフーガですが、こちらはこれまでの曲に比べて規模も大きく、内容も充実しています。 ここにきて、いよいよ真打登場ということでしょうか。


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第4番嬰ハ短調のプレリュード


 プレリュードはインベンションの第7番ホ短調によく似ています。 似ていると言うより、最初の7つの音の動きは全く同じです。


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2声のインヴェンション第7番。 この譜面も1970年頃買ったものなので、メトロノームの数字などが付いている(いくらなんでも112は速すぎると思うが!)。 最近の譜面ではこういったものはあまりない。 ともかく最初の6個の音は同じになっている。その次の跳躍もこちらは5度だが、その後て4度上がるので、結局平均律の方と同じく8度上がることになる。
 


これまでのプレリュードは練習曲風だったが

 たぶんバッハの好みのメロディなのではと思いますが、確かに聴くものの気持ちを惹きつけるメロディだと思います。これまでのプレリュードは練習曲タイプだったのですが、このプレリュードはアリア風です。 第1巻の中でも、たいへん魅力的な曲の一つですね。


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第4番のフーガ  最初のテーマは声楽曲風で、主題自体が長い。  第2のテーマは小フーガト短調に似ている。




3つの主題を持つフーガ

 それに続くフーガはテーマが3つある ”三重フーガ” となっていて、たいへん規模の大きいものになっています。 最初のテーマはルネサンス時代の声楽曲を思わせるような長い音符のもので、とてもシリアスな感じに聴こえます。 楽譜を見ると、フランチェスコ・ダ・ミラーノや、ルイス・ミランのファンタジアに似てる感じです (ギターをやっていない人には、そう言われてもピンとこないと思うが)。 



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第3のテーマはギターでもよく弾く、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番のフーガ(リュートのためのフーガ1000)のテーマに似ている。



聴きごたえ十分なフーガ

 次のテーマは8分音符のもので、有名な小フーガト短調に似ています。 第3のテーマは無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガ(リュートのためのフーガBWV1000)のテーマに似ています。

 つまりギターをやている人にとっては、聴いたことのある素材で出来たフーガなので、長めのフーガではありますが、親しみやすいフーガでもあると思います。 この平均律曲集には軽妙な曲も多いのですが、この第4番はプレリュードもフーガも、まさに正攻法というか、いかにもバッハらしいものです。 特にフーガはこれらの3つのテーマが絡み合う聴きごたえ十分な曲でしょう。
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