中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

バッハ:平均律クラヴィア曲集 8



第5番ニ長調

 それぞれの曲についてはとばしながら書くつもりだったのですが、今のところ結局全部書いてしまってますね、これではいつ終わるかわからないので、なるべくサッサと進みましょう・・・・・・   と言いつつ、結局次の第5番ニ長調の話です。



IMG_20170812124533733.jpg
第5番ニ長調のプレリュード  第2、第3番のプレリュードに近い



10個の音の和音?

 第4番の嬰ハ短調が重厚だったので、第5番ニ長調は比較的軽い曲で、プレリュードは第2、第3番と同じく練習曲タイプになっています。バッハにとってもニ長調は軽い感じなのでしょう、35小節の比較的短い曲になっています。 

 でも、33小節の和音はなんか、スゴイですね! 何といっても音が10個ある!  10個音があるということは左右の指、全部で弾く訳ですね、ピアノもチェンバロも弾かないので、よくわかりませんが、こういうことはそう頻繁に出てくるものではないでしょう。



IMG_0001_2017081212460105a.jpg
この和音は”見た目”だけでも凄そう



中身は保持低音+減7

 この和音の中身を見ると、「ラ」 の保持低音の上に 「レ、ファ、ソ#、シ」  の乗っているようになっています。 この 「レ、ファ、ソ#、シ」は減7の和音ですが、バッハの場合はこの減7の和音は短調の属9の和音の根音省略形として用いることが多いので、コード・ネーム的に言えば 「E(-9)」 という感じなんでしょうか、ドッペルドミナントに短9度が加えられたものですね。 



普通は4+4で、それだけでもすごい音になる


 減7の和音は4個の音で出来ていますから、左右の手で4個ずつ弾けば、どの音も2個ずつになるので、音量にこだわったとしても、たいていは、このように8個、そして別に保持低音として「ラ」があるので、それを弾いても計9個となるのが一般的かなと思います。



1本でも指を余らせたくない?

 これだけでも結構凄い音になりますが、バッハは1本でも指を余らせたくなかったのでしょうね。 オルガンのように足鍵盤があれば、さらにもう1個音をいれたのかも知れません。

 32分音符のパッセージの後にも半音ずらした形で減7の和音が2回鳴らされます。 こちらの方は保持低音がないので、純粋に減7の和音ですが、普通8個でいいところを、9個の音となっています。






maxresdefault.jpg


最近話題のゲリラ豪雨か?

 このニ長調のプレリュードは、出だしこそ、わりと普通で、何てことのない練習曲タイプなのですが、最後にガツンとくるわけですね。 今日は快晴で、風もなくとても穏やかな日だと思ったら、夕方頃になって突然黒い雲が沸き上がって、もの凄い稲光と雷鳴がし、大粒の雨や雹が降ってきた・・・・・・・  みたいな曲かな?



IMG_0002_20170812124644095.jpg
第5番ニ長調のフーガ  聴いた感じはフーガぽくない




あまりフーガぽく聴こえないフーガ


 フーガのテーマは32分音符と付点音符で出来ていて、あまりフーガのテーマらしくはないです。 少なくとも声楽的なテーマではありません。 なんとなく ”指ならし” 的で、聴いた感じではフーガではなくプレリュードの方かなと思ってしまいます。 プレリュードに合わせて軽い感じになっていると思いますが、フーガのほうの終りは、わりと普通です。





 第6番ニ短調



パークニングがギターで弾いていた


 この第6番ニ短調のプレリュードは1970年代にクリストファー・パークニングがギターで演奏していてギター愛好者にもなじみのあるものではないかと思います。 パークニングは平均律曲集第1巻より、第1、第6、第9番のプレリュードを録音しています。 



IMG_0003_2017081212472639f.jpg
16分音符の3連符で書かれていて、見た感じでは速い曲の印象がある



以前の譜面ではAllegro moderato と書かれていたが

 バッハはこの平均律曲集のほとんどの曲に速度標語を付けていませんが、16分音符の3連符で書かれているので、見た目からすれば速めに弾く曲かなと思います。 例の1970年頃の全音出版の譜面を見ると、「アレグロ・モデラート  4分音符=80 」 となっています。




かつてはこの曲集は練習曲的に扱われていた


 このような速度標語は19世紀半ばころからの慣習によるものと思われますが、かつて、このバッハの平均律曲集は演奏会用ではなく、練習曲的に扱われたので、全体的にかなり速めの速度標語となっているようです。




カンタータ147番のソプラノのアリアのヴァイオリンによるオブリガード・パートに似ている

 しかし、この曲、ただの指ならしに使ったのではとても ”もったいない” 気がします。 この曲の譜面見ていると、何かに似ていることを気付きました。 「カンタータ第147番」 のソプラノのアリアのヴァイオリンによるオブリガード・パートによく似ていいます。

 カンタータ147番というのは有名なコラール 「主よ、人の望みのよろこびよ」 を含むカンタータですが、 このソプラノのアリアはたいへん美しい曲で、この曲の美しさには、ヴァイオリンのオブリガード・パーートが大いに貢献しています。




IMG_0005_20170812124806da7.jpg
カンタータ第147番のソプラノのアリア「備えて下さい、イエスよ、今なお道を」  上声部で16分音符の3連符で書かれたパートはヴァイオリンのパート。 アリア自体も美しい曲だが、このヴァイオリン・パートがとても美しい。 もちろんそんなに速くは演奏されない。 見た感じでは第6番のプレリュードによく似ていると思う。





ゆっくり弾いてもよいのでは

 つまり、この第6番のプレリュードは、遅いテンポで弾くのもありかなと思います。 アンドラーシュ・シフなどは比較的ゆっくり弾いていて、確かに美しく聴こえます。 このプレリュードは、1950~70年代など、時代をさかのぼるほど速いテンポで演奏される傾向があるようです。




IMG_0004_20170812124848253.jpg
単独の主題による、短めのフーガだが、主題はやや長めで、この主題をいろいろ変化させながら曲を組み立てている。




単独の主題によるフーガだが


 フーガの方は単一の主題による、比較的短いもので、主題は8分音符、4分音符、16分音符から来ていて、やや長めの素材となっています。 基本はこの素材のみで出来たフーガなのですが、このテーマを上下逆転して使ったりしています。さらにこの主題を構成する3つの要素を分解して用いたりなど、単独の素材を極限まで使い込んだフーガといえるでしょう。
スポンサーサイト
コメント
コメントする
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する