中村俊三 ブログ

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中村俊三  イサーク・アルベニス作品集



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      2017年9月発売  2000円+税





<収録曲紹介>

 組曲「スペイン」作品165 より
     ⑥タンゴ    ⑦マラゲーニャ   ⑧カタルーニャ奇想曲




<組曲「スペイン」作品165> と <スペイン組曲作品47> は全く別の組曲

 ちょっと紛らわしいと思いますが、この <組曲 「スペイン」 作品165> は、これまで書いてきた <スペイン組曲作品47> とは全く別の組曲です。 原題では 「ESPANA, Seis hojas de album」 で、「SUITE ESPANOLA」 とはだいぶ違います。




「エスパーニャ ~6葉のアルバム」 のほうが良かったかな

 直訳すれば 「SUITE ESPANOLA」 はストレートに 「スペイン組曲」 で、 「ESPANA, Seis hojas de album」 の方は 「エスパーニャ ~6葉のアルバム」 となるでしょうか。 「Seis hojas de album」 を 「組曲」 としてしまったためにややこしくなってしまった訳です。

 この組曲は、原曲では以上の3曲に加え、「前奏曲」、「セレナード」、「ソルティコ」 の6曲からなります。 「前奏曲」も一応録音してみたのですが、曲数が多くなってしまったので、このCDからは外しました。





「タンゴ」は特別有名  「マラゲーニャ」 や 「カタルーニャ奇想曲」 も最近ではよく演奏される

 知名度や演奏頻度では 「スペイン組曲作品47」 に一歩譲るところはありますが、「タンゴ」はギター以外でも有名で、バイオリンなどでも演奏されます。 またタンゴ名曲の一つとしてポピュラー系のバンドでも演奏されたりもします。 「マラゲーニャ」 はイエペスの演奏で知られ、「カタルーニャ奇想曲」 は最近よく演奏されるようになっています。







⑥タンゴ



アルベニスらしい美しいメロディ。 セゴヴィアの編曲が知られている。

 前述の通り、ギター・ファン以外だと、アルベニスの曲としては、このタンゴが最もよく知られています。 アルベニスらしい、たいへん美しいメロディで、ギターへのアレンジとしてはアンドレス・セゴヴィアのものがよく知られています。 比較的早い時期から出版されているので、多くのギタリストがこのセゴヴィア編で演奏しています。



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アンドレス・セゴヴィア編曲のタンゴ。 ギターの魅力がより発揮されるアレンジだが、若干の誤植などもあるので、注意。 この版を使う場合は、やはり原曲を聴いたり、譜面を読んだりすることが必要。



原曲と同じ音域で演奏出来る

 原曲はニ長調で、セゴヴィアのアレンジもこのニ長調となっています。 通常、ピアノ曲をギターで原調で弾くといっても、ほとんどの場合1オクターブ下げるわけですが、このタンゴに関しては、原曲と全く同じ音域で演奏出来ます。  ・・・・・アルベニスがギターで演奏することを想定して作曲したと考えるのは、ちょっと考え過ぎかもしれませんが、ギターの音域にピタリと治まってしまいます。

 セゴヴィアは一部分をオクターブ下げてアレンジしていますが、低音弦に独特の魅力のあるギターにとっては、たいへん有効な方法でしょう。 ギターとの相性はたいへん良い曲と言えます。




”ほぼ” セゴヴィア編

 私の演奏では、基本的にこのセゴヴィア編を用いているのですが、この譜面をそのまま弾くのは、私には難しく、技術的な問題から若干変更しています。 また誤植と考えられる箇所や、原曲からやや離れてしまった部分なども修正しています。

 しかし前述のオクターブ下げる箇所や、ハーモニックスを使用する箇所などは同じなので、聴いた感じは ”ほぼ” セゴヴィア編となっています。 セゴヴィア編はギターの魅力を最大限引き出した編曲といえるでしょう。




一見やさしそうに聴こえるが、かなり難しい曲   ・・・・最近ではこの程度のこと

 この曲は、聴いた感じではそう思えないかも知れませんが、ギターではかなり難しい曲と言えます。 個人的には華やかで、いかにも難しそうなアストゥリアスよりも、このタンゴの方がずっと難しく思えます。 この曲を何の困難さも見せず、美しく演奏出来るギタリストは、一流の証ではないかと思います。   ・・・・・もっとも、最近のギタリストは、その程度は当たり前のようですが。






⑦マラゲーニャ



ピアノ曲とすると、ちょっと物足りない感じだが、ギターにはちょうどよい

 原曲が、わりとシンプルで、ピアノ曲としては音が少なく、何となく物足りないようにも思えますが、ギターではちょうどよいくらいになっています。 したがって、ギターにアレンジする際にも、ほとんど音を省略せずに、ほぼ原曲通り弾くことが出来ます。 またまた同じことを言ってしまいそうですが、まさにギターで演奏することを前提としてピアノに書かれた曲のように感じられます。




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ピアノの譜面とすると、かなりシンプル。 ちょっと物足りないのではと余計な心配をしてしまう。 #1個で、見た目はホ短調に見えるが、「シ」を主音としたフリギア調。 無理やりホ短調だと思いこむと、主和音(Em)ではなく、属和音(B7)が中心になっているようになる。




ホ短調?

 原曲はホ短調ですが、ギターでは1オクターブと2度下げてニ短調で演奏されることが多いです・・・・・・  おっといけない、この曲長調や短調で出来ている曲ではありませんね、 もちろんこれはあくまで♭1個という調号上、つまり外見上でのことです。

 この曲は長音階や短音階ではなく、フリギア調という教会旋法で書かれています。 フリギア調というのは通常の長音階のうち、第3音、つまりハ長調の#などが付かない音階で言えば、「ミ」 を主音とした音階のことです。




短調よりもさらに暗い

 他に教会旋法で「レ」を主音としたドリア調という音階もありますが、ドリア調は明るさで言えば長調と短調の間くらいで、「明るくも暗くもない」 と言った感じですが、このフリギア調は短調よりもさらに暗い感じに聴こえます。 フラメンコの、あの独特の雰囲気は、このフリギア調という音階に大いに関係があるでしょう。




アルベニスがフリギア調を用いるのは1890年代以降

 スぺイン音楽、特にフラメンコではこのフリギア調というのがよく使われるわけですが、アルベニスの場合、スペイン的な曲といっても、ほとんどが通常の長調、または短調で書いています。 アルベニスがこのフリギア調で作品を書くようになるのは1890年代以降のようで、この組曲の中の「前奏曲」、 「旅の思い出」の中の 「入り江のざわめき」 などがこのフリギア調で書かれています。




3連符はスラー奏法? それとも実音で弾く?

 この曲をギターで演奏するのは、前述のとおり、特に難しくはありませんが、この曲に出てくる3連符をクリヤーに、またタイミングを崩さずに弾くのはそう簡単ではないかも知れません。 これをスラー奏法で弾くと、なかなか音がはっきりと出にくく、また右手で弾くと爪が引っかかったり、また空振りしたりと、なかなか安定して出てくれません。

 この3連符をスラー奏法で弾くか、通常の弾き方で弾くかは、演奏者次第だと思いますが、私の場合、伴奏形の3連符は右手、メロディの中の3連符はスラー奏法で弾いています。 



中間部はさらにシンプル。 弾きたい方には譜面差し上げます。

 中間部は単旋律とアルペジオの組み合わせで、技術的には全く問題のないところです。 その分だけメロディやアルぺジオを美しく弾くセンスや美しい音色が必要でしょう。 何はともあれ、ギターで弾くアルベニスの曲としては、数少ない弾き易い曲なので、アマチュアの方々にもオススメです。 ただし、譜面のほうはあまり出ていませんから、弾いてみたい方には譜面を差し上げます。



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