中村俊三 ブログ

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中村俊三  イサーク・アルベニス作品集(CD)



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     2017年 9月発売  2000円+税



<収録曲紹介>


 ⑧ カタルーニャ奇想曲 




話があっちこっちだが

 当ブログは、基本的に今現在はバッハの平均律クラヴィア曲集の話となっているのですが、この9月にCDを出したことから、CDの紹介となっています。 さらに一昨日はマルコ。メローニのリサイタルに行ったので、そのレポートたなりました。 何か、あっちこっちに行ってしまい、収拾が付かなくなっていますが、とりあえず、CDの紹介に戻りましょう。 バッハの平均律の話は、今しばらくお待ち下さい。     ・・・・・誰も待っていない?



スペイン音楽というと、だいたいアンダルシア的、あるいはフラメンコ的な音楽を言うが

 この 「カタルーニャ奇想曲」 アルベニスが1890年ころ作曲した組曲「スペイン」作品165 に含まれます。 スペイン音楽というと、だいたいアンダルシア地方で盛んなフラメンコのイメージで、このCDに収録されたアルベニスの作品も、そうしたアンダルシア、あるいはフラメンコ的な曲が多くなっています。




カタルーニャ地方はスペインの他の地方と文化も音楽も違う

 しかし、この 「カタルーニャ奇想曲」 はその曲名通り、カタルーニャ的な音楽と言うことで、それらの曲とは、若干趣を異にしています。 また文化的にもカタルーニャ地方と、マドリードを中心としたスペイン中央部、あるいは南部スペインとでは、全く別のものといってもよいようです。

 カタルーニャ地方の人々は、自分たちがスペイン人であるよりも、カタルーニャ人であるといいう意識が強いといわれています。 そして、その音楽もまた、かなり違い、少なくともカタルーニャ地方ではフラメンコを踊ったりする習慣はないようです。




レアル・マドリッドとバルセロナFCが熾烈な争いを繰り広げるのも

 サッカーで (またサッカーの話になってしまうが)、 レアル・マドリッドとバルセロナFCの伝統の一戦、つまりクラシコが異常なほどの盛り上がりを見せるのも、この文化の違いに関係があるようです。




アルベニスはカタルーニャ人

 そう言えば、アルベニスもカタルーニャ地方(ピレネー山脈中の小さな町)の生まれです。 ということは、この曲はアルベニスの生まれ故郷を歌った曲ということになるのでしょう。

 一般にアルベニスの作品(特にギター曲では)は、アストゥリアスやセビージャなどのいかにもスペインといったフラメンコ的、あるいはアンダルシア的な音楽がイメージされますが、アンダルシア人からすれば、 ”よそ者” なのかもしれません。



無題
アルベニスが生まれたピレネー山脈中にあるカンプロドンの風景



落ち着いた、穏やかなリズムの曲


 この 「カタルーニャ奇想曲」 も、メロディが美しいのは相変わらずですが、この曲にはフラメンコ的な華やかさもアンダルシア的な情熱もなく、 どちらかと言えば落ち着いた、緩やかなリズムの、静寂の世界があります。 かといってまた、暗いとか悲劇てな感じは全くありません。

 曲は4分の2拍子で、シンコペーションを伴うリズムに伴奏されて、メロディが表れます。 そのメロディは、前述のとおり、情熱的でもなく、またセクシーな感じでもなく、何か安らぎを感じるような、とても落ち着く感じのものです。




正しいテンポが要求される


 テンポは 「アレグレット」 の指示ですが、軽快というより、ごく自然なテンポが要求されるのでしょう。 速すぎてもいけないが、かと言って遅すぎてもいけない、その正しいテンポを見極めることは、演奏家として非常に重要なことで、また難しいことでもあるのでしょう。



5音音階に郷愁を感じるのは世界共通

 曲の最後に突如、5音音階が表れます。 5音音階といえば、日本の歌にも使われ、何か懐かしさを感じるものです。 この最後の5音音階は、何とも郷愁を誘うもので、おそらくアルベニスがこれをここに置いたのは、一種の ”謎解き” なのでは、と私は思います。  5音音階に郷愁を感じるのは、何も日本人だけとは限らないようですね。





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カタルーニャ奇想曲の最後の部分。 突如として5音音階が現れる。 終止形は通常の 属7⇒主和音 ではなく、下属和音を使った ”女性終止” と言われるもの。 しかも同主短調からの借用で、結果として非常に柔らかい終止となっている。





これ以上ないくらいに、優しく終わる

 さらに最後の最後は通常の 属7⇒主和音 で終わらず 下属和音⇒主和音 で終わり、さらにこの下属和音は短調のものが使われています。 この 下属和音⇒主和音 の終わり方は ”女性終止” とも呼ばれ、通常の終わり方よりも ”優しい” 終わり方と言われています。 この曲は、曲の閉じ方としてはこれ以上ないくらいに優しく終わっています。 




故郷への郷愁の念

 恐らくアルベニスはこの曲に、生まれ故郷の山々や川、小鳥たちの声、そしてなんといっても幼少時にいつも感じていた母のぬくもり    ・・・・・・・そう言ったことをすべて込めたのではと思います。 もしかしたらこの曲は、カタルーニャ人であるアルベニスが、本当に書きたかった曲、 あるいは人々に伝えたかったことなのかも知れません。



時代や国が違っても

 私自身も出来る限り、こうしたアルベニスの気持ちに沿った演奏となるように、細心の注意を払いました。 こうしたことはまさに技術以外のこと、いかにその想いを共感出来るかと言ったことに尽きるのでしょう。 時代や国が違うと言っても、アルベニスも私も同じ人間、必ず共通したイモーションはあるはず・・・・・・・・   そう思いながら演奏しました。






⑨ パヴァーナ・カプリッチョ



スペイン音楽に傾倒する以前の若い頃の作品

 この曲はアルベニスが若い頃作曲したもので、少なくとも1883年以前のもの、つまりアルベニスが23歳までに作曲した曲と言われています。 聴いた感じはこの曲もアルベニスの他の曲のようなスペインぽさはなく、どちらかと言えば、ショパンやシューマンなどの曲に近い、いわゆる ”ロマン派的” な曲といえます。



野辺に咲く一輪の花

 たいへんメロディの美しい曲で、間違いなく、アルベニスの初期の名作の一つで、まさに ”野辺に咲く一輪の花” といった美しさがあります。



DARrW6BUAAI6Fpf.jpg パヴァーナ・カプリッチョ はこんな感じだろうか?  (写真はあくまでイメージです)





原曲はギターとの相性もいいホ短調だが、かなり高い音域

 ギターではタレガの編曲がありますが(私は持っていないが)、 それほどギターで演奏される曲とは言えません。 原曲はホ短調で、ギターとは相性の良い調で出来ていますが、音域はかなり高い音域を使っています。 この曲の可憐な感じは、その高い音域と関係があります。




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パヴァーナ・カプリッチョの私の編曲譜



出来ればその音域をキープしたかったのだが

 私のアレンジは原曲どおりホ短調なのですが、メラディ・ラインについては少なくとも一オクターブ、 場所によっては2オクターブ下げざるを得ませんでした。 出来ればその高い音域をキープしたかったのですが、ギターと言う楽器を考えても、また私自身の器量を考えても、不可能でした。



ハーモニックスの使用にこだわった

 その可憐な感じを少しでも出したいということで、一部ハーモニックス奏法を用いて弾いています。 このホ短調という調を選択したのも、ハーモニックス奏法が使いやすいと言う理由もあります。




難しそうには聴こえないが、ギターで弾くのはなかなか難しい

 曲としてはそれほど複雑な曲でなく、ピアノで弾くのは特に難しくはないのではと思いますが(もちろん弾いたことはないが)、 ギターでは決して簡単な曲ではありません。 一見難しそうに感じるアストゥリアスやセージャなどと比べても、あまりやさしいとは言えません。 その点が、たいへん美しい曲にも関わらず、今現在はギターで弾く人が少ない原因なのでしょう。 

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