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中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

バッハ:平均律クラヴィア曲集 34




グレン・グールド 4  




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グレン・グールド バッハ:平均律クラヴィア曲集第1巻、第2巻 1962~1971年録音





およそ10年間を費やして

 またいろいろ遠回りをしましたが、やっと本題のグールドの平均律曲集の話に戻ります。 グールドは第1巻を1962~1965年に、第2巻を1967~1971年に録音しています。 約10年かけてこのバッハの作品を慎重に録音したと言えます。





残響などを排し、中音域中心の音質

 10年の開きがあるので、録音機器の進歩により音質などは年代と共に若干変わっていますが、基本的な音質はほぼ統一されています。 グールドにはこうした録音された音質などにも強いこだわりがあるようです。

 グールドの録音は、聴いてすぐにグールドの音だとわかるように、他のピアニストの音とはかなり違うものになっています。 グールドの録音は残響がほとんどなく、また高音域を増幅させず、中音域が中心の音となっています。

 これは、まずペダルを全く使用しない(私はピアノを弾かないのではっきりとはわからないが)ということと、コンサート会場のような残響のある環境ではなく、スタジオでの録音であること、もちろん電気的な残響も付けていません。

 また専門的なことはわかりませんが、グールドの使用するピアノ自体の音も、そう言った音なのでしょう。




一般的な美しいピアノの音とは違うが

 従って、一般に聴かれるような豊かなピアノの響きにはなりませんが、その代りに一つ一つの音が濁らずに明瞭に聴こえてきます。おそらくそれがグールドの狙いなのでしょう。 グールドのピアノの音をクリヤーで美しい音と聴くか、なんかボソボソとして、味気ない音と聴くかは、もちろん聴く人次第です。




スタッカート奏法はグールドの専売特許?

 グルードの演奏の最大の特徴と言えば、何度か話に出てきた”スタッカート奏法” ですが、これは第1番のプレリュードによく洗われています。 この第1番のプレリュードはアルぺジオで出来ています。

 通常の考え方であれば、「アルペジオである限り、アルペジオ、つまり和音として聴こえなければならい。 当然音を切って弾くことはあり得ない」 となります。




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グールドはアルペジオの後半4個の音をスタッカート奏法で弾いている。 通常こうした箇所はスタッカートで弾くことはあり得ないので、たいへん目立つ。  ”グールド=スタッカート奏法” ということを一般に植え付けた演奏とも言える。




通常ではスタッカートでは弾かないところをスタッカートで弾くのがグールドの真骨頂

 実際、グールド以外のピアニストの場合はほとんどこの第1番のプレリュードに関してはスタッカートで弾いてはいません。 バッハの曲にスタッカート奏法を用いることは別に特別なことではなく、バッハ自身の演奏も特にレガートには弾かなかったとも言われており、バッハの作品をスタッカート、あるいはノン・レガートで弾くことはよく行われることです。 しかしグールドの場合は、通常ではあり得ないところでスタッカート奏法を用いていることが特徴です。




スタッカートを用いない3小節がある

 グールドがこのようにアルペジオの音をスタッカート奏法で弾く理由として、「個々の音が和声の中に埋没してしまうのではなく、それぞれの音に独立性を持たせた」 と言ったような解説も読んだことがあります。 ただ不思議なことに、このプレリュードの25、28、29小節に限ってはスタッカート奏法は用いていません。




ライブ録音であれば何の不思議もないが


 これがライブ録音とかであれば、そうしたことは別に不思議でもなんでもありません。 予定と違う弾き方、普段とちがう弾きなどは誰でも行うことではないかと思います。 しかしこの録音は1回限りのライブ録音ではなく、スタジオで録音され、おそらく何度もプレー・バックを行い、時間をかけて編集されたものです。 グールド自身も何度も自らの演奏聴き直し、最終的にスタッフにOKを出したものと思われます。

 上記の3小節は、どう考えても、なにか特別な個所とは思えません。 なんとなくレガートになってしまった、それはいいとしても、こだわりやのグールドが、なぜここを編集しようと思わなかったのかが、なんとも不思議です。 





理詰めで弾いている訳ではない?


 もっとも 「こだわりや」 と言うタイプの人は、普通の人が全く気にしないようなことをすごく気にして、その代わりに普通の人が気になるようなことには全く無頓着、ということがよくあります。 グールドにとっては、このようなことは 「別にどっちでもいいよ」 ということなのだろうか。

 一つの結論として、グールドと言えども、理屈だけで弾いている訳ではないということなのでしょうか。




スケールの場合でも

 第1番のフーガのように8分音符と16音符で出来ている曲の場合、通常8分音符のほうはスタッカート、あるいはノン・レガートで弾くことはあっても、16分音符はレガートに演奏されます。 実際に他のピアニストの場合、すべての音をレガートに弾くか、あるいは8分音符や付点8分音符はスタッカート、もしくはノン・レガートで弾いて、16分音符はレガートに弾いています。



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主に8分音符と16分音符によるスケールで出来た第1番のフーガ。 グールドは一般の弾き方とは逆に16分音符の方をスタッカートで弾いている



 グールドの場合は8分音符などはややノン・レガート(結構レガートに近い)に弾き、逆に16分音符のほうは誰が聴いてもわかるような、はっきりとしたスタッカートで弾いています。

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