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中村俊三 ブログ

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バッハ:平均律クラヴィア曲集 35


グレン・グールド 5





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カンタービレなプレリュードと重厚なフーガは

 グールドは 」第1巻の第4番嬰ハ短調」 や、 「同第8番変ホ短調」、 「第2番の第14番嬰へ短調」 のような、声楽的なプレリュードとフーガの曲は、比較的速いテンポで、やや淡泊とも思える弾き方で弾いています。 こういったこともグールドの平均律曲集に於ける演奏の特徴といえます。




一般的にはプレリュードは気持ちを込めて歌わせ、フーガは重厚に弾く


 これらの曲は、以前紹介したとおり、プレリュードはたいへん美しいアリアのように出来ており、またフーガもやや古風に声楽的なテーマで、どちらかと言えばオルガンが似合いそうな悠々とした曲となっています。  従って、一般にこれらの曲は、ゆっくり目のテンポで美しく歌い、また堂々とした落ち着いた感じで演奏されるのが普通です。




第2巻第14番嬰へ短調などは典型的

 グールドはこうした曲では、まさに一般的な弾き方とは真逆な弾き方をしていると言えます。 これらの中で、特に美しいメロディをもつ 「第2巻第14番嬰へ短調のプレリュード」 などは顕著に表れています。




あたかも感傷的な表現を毛嫌いするかのように

 スタッカートを多用するグールドですが、ことさらこのプレリュードでははっきりとしたスタッカートで弾いています。 歌わせるとか、気持を込めるといった感じはなく、メロディをポツリ、ポツリといった感じで弾いています。 まるで 「感傷的な演奏なんて、最低さ!」 とでも言っているかのようです。



グルードは情感で表現するピアニストでなく、あくまで客観的で知性的!

 確かにこの平均律曲集全体として、感傷的な表現は避けられているようです。 そして、私たちは 「なるほど、グールドというピアニストは音楽を個人的な感情などでは表現せず、あくまでも客観的に捉える知性派なのか」 と改めて納得する訳です。 




でも、ちょっと待った!

 しかし、そう断言するのはちょっと待ってほしい! 以前紹介したグルードの1950年代の録音をまとめたアルバムに、4曲ほど平均律曲集からの録音があります。 1954年に録音したもののようで、ライブ録音、もしくはラジオ放送用の録音と思われます。




50年代の録音は、まるでリヒテルのよう

 その4曲の中にこの第2巻14番嬰へ短調があります。 これを聴いてみると、まさに驚きです、スタッカートなどは全く用いず、ゆっくり目のテンポで、もちろんレガートに、しかもテンポも多少揺らしながら、まさに「歌っている」ではありませんか! 

 速めのテンポでポツポツと音を切りながら、全く歌わない1960年代の録音とはまさに真逆の演奏です。 黙って聴いているとリヒテルか、なんかの演奏じゃないかと思うくらいです。 もっとも、たくさんの平均律の曲集の中からこの曲選んだ時点で、もともとこうした曲が好きなのではと考えられます。




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50年代の録音を集めたアルバムには、1954年に録音した4曲の平均律曲集からのプレリュードとフーガが収録されている。 これらの録音は後の全集盤とは全く異なる演奏で、ちょっと聴いたら同じ人が弾いているようには思えない。




こっちの方が本物のグールド?

 ゴールドベルクのところでも話しましたが、やはりグールドはもともとこうしたロマンティックというか、感傷的というか、じっくりと気持ちを込めて音楽を歌わせるタイプだったのでしょう。 前にも言った通り、この1960年代(全集の方)の録音は、まさにこうしたロマンティックでセンチメンタルな自分の音楽へのアンチテーゼといえるでしょう。




永遠の反抗期少年? しかも天才!

 確かに全く歌わせないように弾いているこの60年代の録音を聴くと、自分自身が底なしのセンチメンタリズムに陥らないように、必死に抵抗しているようにも聴こえるかも知れません。

 まあ、例えると、心優しく、本当はとても母親想いの子が、友達が家に遊びに来た時など、声変わりしたばかりの声で、 「うぜえな! あっちに行ってろよ! おふくろ! 」 なんて突然悪態をつく思春期の中学生みたなものかな?  グールドは永遠の反抗期少年? しかも天才!




メルヘン・チックな情感が漂う

 さらにこの50年代の録音の4曲の中に第22番変ロ短調も入っています。 この22番のプレリュードも以前紹介しましたが、何か懐かしさを感じる素朴で美しい曲です。 これもこの50年盤ではグールドは気持ちを込め、メルヘン・チックとでも言えそうな情感を添え、美しく歌わせています。 



 
 

 
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