中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

クラシック・ギター部の練習が始まって

 私は1969年に茨城大学に入学すると、すぐにクラシック・ギター部に入部しました。このギター部では4月下旬から6月くらいまでは新入部員の指導期間ということで、上級生と新入生、合わせて10人前後のグループに分かれての基礎を中心とした練習を行っていました。教材としては溝渕講五郎編の「カルカッシ・ギター教本」が使われていました。これは当時のギター教室の教材として最も一般的で、他の大学のギター部などでも使われていたようです。当時のクラシック・ギター部では新入部員の指導には力を入れていて、約3ヶ月間は上級生と新入生が、ほぼマンツーマンで練習を行っていました(もっともこの年は圧倒的に新入生の方が多かったのですが)。さらに夏や春の合宿でも集中して基本の指導をしています。これは新入部員にとってだけではなく、教える側の上級生にとっても基礎をやり直す上で、たいへん良いことだったと思います。全くギターに触ったことのない人でも2、3年生くらいになると、かなり弾けるようになっていました。

 私はそれまで、それなりの年数ギターは弾いていたので、指だけは多少動きましたが、ギターの弾き方の基礎も、また音楽的な能力や経験、知識など全くゼロに近い状態で、この茨城大学クラシック・ギター部に入って初めてそれらのことを学ぶようになりました。例えばメトロノームに合わせたり、拍子を取るなどして、正確なテンポで音階やアルペジオを弾くこととか、それまではそうしたことをしなければならないこと自体全くわからなかったのです。もちろんすぐには出来ませんでした。またそれまですべての曲は暗譜してから弾いていたので、楽譜を目で追いながら弾くことは出来ず、どんな簡単な音階や単旋律などでも初見では弾けませんでした。またそれまで人前で弾くこともなかったので、音が小さく、か細い音だったのですが、ギター部の練習では同じ部屋で何人もの人が弾くので、自分の音が聴こえなくなり、自然と音も大きくなって行きました。また音色を気にしたり、爪を手入れすることなどもこの時から始めました。


下宿の住人、大家さん 

 入学した当初は、茨城大学のすぐ裏手のところに下宿していました。3畳の部屋で、最初はとても狭くてびっくりしましたが、一週間もするとすっかりと馴染んでしまい、文字通り「狭いながらも楽しい我が家」となりました。下宿人は私を含めて5人いましたが、各部屋の間仕切りはベニヤ板程度で、私の弾くギターの音はどの部屋にも筒抜けでした。でも皆、最後まで苦情らしきことも言わず、それどころか演奏会にもいつも来てくれました。また大家さん夫婦には、本当に親代わりとなりいろいろ心配していただき、私がそこを引越してからも、私を心配してわざわざ引越し先まで訪ねて来てくれました(確かに当時の私は安心して見ていられない状態だったのでしょう)。


一日中

 クラシック・ギター部に入部したことにより、それまでほとんど無に近かったギターに関する刺激や情報が、急激に私に入り込むことになりました。またそれまで全く一人きりでギターを弾いていたのが、突然大勢の趣味を共にする先輩や仲間も出来ました。これらのことにより、ギターを弾く楽しさが一気に増大し、ほぼ一日中ギターを弾いているようになりました。それまではギターを弾いていたとは言え、すごく好きというほどでもなく、暇つぶしに近い程度だったのですが、この時になって初めて、ギターが本当に好きになったと思います。ギター部に入ってからの数ヶ月間は、ギターさえ弾いていれば他に何もいらないといった状態で、どこかへ出かけたり、友達と遊んだりはもちろん、食事やお風呂の時間さえ惜しいくらいでした。

 そんなわけで、当時の私は楽譜さえあれば手当たり次第になんでも弾くという状況でした。前回の話の「アストゥリアス」や「モーツアルトの主題による変奏曲」など弾けるかどうかわからない曲から、「月光」、「ラグリマ」などの小品、音階やアルペジオ練習、カルカッシ・ギター教本。この中ではこの時期に音階やアルペジオ練習や比較的簡単な練習曲で出来ているカルカッシ・ギター教本をやったことはたいへんよかったと思います。これらによりそれまでギターに関して欠けていたものをかなり補うことができ、夏休みの合宿頃まではなんとか必要最低限の基礎は習得できたと思います。

 今いろいろ考えてみるとその当時は私がギターを弾くことについては好条件がいろいろ揃っていたのだと思います。まずなんと言ってもクラシック・ギター部に入部したことで、基礎から指導を受けることが出来たこと。クラシック・ギターに関していろいろな情報や知識を得ることが出来たこと。さらにギターを弾く場所や時間もあったこと(入学して2ヶ月もすると大学紛争で授業もなくなり、いっそう時間ができるようになりました)。また自分の演奏を聴いてもらう機会も増え、ギターを弾く楽しさだけでなく、聴いてもらう楽しさを味わったのもこの頃からでした。


何も考えずに

 ギターのレコード(もちろん当時はLPレコードです)を聴くことにも夢中になっていました。といっても自分で買ったの当時2枚しかなく(当時のレコードの価格は今のCDとほぼ同じくらいで、かなり高価なものでした)、よくギターのレコードを持っている先輩や仲間のところに聴かせてもらいに行きました。その先輩や仲間からすれば、遊びに来たのかと思えばただ黙ってレコードを聴いているし、変な、というか困った後輩、あるいは仲間だと思ったでしょう。私の方はそんなこと気にしませんでした。

 確かにこの時期は私の人生の中で、いろいろな意味でもっとも幸せな時だったかも知れません。ただギターさえ弾いていれば、それだけで楽しいという時で、他に何も考えませんでした。特に上手になりたいとか、コンサートで弾くとか、ましてコンクールに出たいとか、プロになりたいなど全く頭にはありませんでした。ただギターを弾いていればそれでよかったのです。

 入学して2、3ヶ月間はギター以外の音楽には全く興味がなく、音楽理論だの、音楽史だの、そんな理屈っぽいことなどにも全く興味がありませんでした。しかその年の夏を迎える頃から少しずつ状況も変化して行きます。これにもギター部の仲間たちがかかわってきますが、その話はまた次にしましょう。
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