美術の沖山先生 9

全校生の前で校長先生から
それから何日かして、今度の美術展で入賞したナカムラ君たち二人が、全校生約1000人の前で校長先生から表彰されることになりました。
これまで特に目立つこともなかったナカムラ君にとって、全校生の前で校長先生から賞状をもらうなど、小学校の卒業式以来です。

ご祝儀袋が二つ!
全校生の前で校長先生から渡されたのは賞状だけでなく、二つのご祝儀袋もありました。
その一つには中学校の名前が書かれていて、もう一方には町の名前が書かれていました。
その中を見るとそれぞれ、中学生のお小遣いからすればかなりの高額の現金が入っていました。
もちろんナカムラ君はたいへん驚きました。

このようなことが一般的に行われているのかどうかわかりませんが、少なくともナカムラ君はこのようなこと見たことも聴いたこともありません。
・・・・・こんなことってホントにあるんだ。 これ(美術展で金賞をとること)は、よほど凄いことなのかな・・・・・・
賞状を貰う以上に
やはりナカムラ君としては、彼の版画がデパートに飾られたり、賞状を貰ったりするより、お祝い金を貰ったことの方がずっと衝撃的だったようです。
しかしその金額はナカムラ君が日頃手にするお小遣いからすると、はるかに高額だったので、彼自身では使うことも出来ず、母親にそのまま渡し、最終的には高校入学の費用などに用いられたようです。
オレ、なんか、凄いことやったみたい、 オレって天才?
沖山先生に 「お前の版画が金賞を受賞した」 と言われた時には、なんのことかさっぱりわからなかったのですが、校長先生から表彰されたり、高額のお祝いをもらったり、さらに小さくですが、新聞にも自分の名前が載ったりすると、ナカムラ君もだんだんと、何か凄い事をしたんだなと思うようになってゆきます。
・・・・・・オレ、なんか凄いことやったみたい。 美術展で金賞を取るということはとても凄いことみたいだな。
大勢の前で賞状をもらうなんて、ちょっと恥ずかしかったけど、なんか、お金までもらって。
それに、新聞に自分の名前が載るなんて、なんか変な感じ。
ともかく、今まで経験したことのないことばかり。
オレは絵が下手だと思っていたけど、それって思い込みだったみたいだ。
今まで全然気が付かなかったけど、オレって美術の才能があるみたい。
いや、間違いない。 オレが言うんじゃなくて、みんながそう言うんだから・・・・・・
もちろん、これまでの話からおわかりのとおり、彼が美術展で金賞になったのは、当然のことながら沖山先生の、たいへん熱心で細かい指導によるものです。
何といっても、最後の仕上げはナカムラ君ではなく、沖山先生が行ったわけですから。
ナカムラ君がしたことと言えば、ただ沖山先生のいうことを忠実に行っただけ。
しかし当のナカムラ君は、学校を挙げてのお祝い気分に、いつのまにかそんなことも忘れてしまい、自分の力で賞を勝ち取り、さらに自分には美術的才能があるとまで、思うようになってゆきます。
沖山先生の記憶がない
彼には職員室でお礼を言ってから、つまり校長先生から表彰されたりするようになってからの、沖山先生の記憶が不思議なくらいありません。
もちろんまだ美術の授業は続いていましたが、その頃にはすでに高校入試が近づいて、沖山先生の美術の授業でも何か作品を作るということはなくなり、入試対策のようなことが行われていたのでしょう。
そうしたことで授業中の沖山先生の言葉も、ナカムラ君には記憶に残りにくかったのでしょう。
またなんといっても沖山先生からも、その頃になると、ナカムラ君に個人的に言葉をかけたりすることがほとんどなくなっていました。
特に「おめでとう」 とか 「よくやったね」 といったような言葉は一切ありませんでした。
そんな、こんなで、いつの間にかナカムラ君は校長先生から賞状や、お祝い金をもらったことは強烈な印象として残ったのですが、その一方で沖山先生の存在は、だんだんと小さくなってゆきました。

全校生の前で校長先生から
それから何日かして、今度の美術展で入賞したナカムラ君たち二人が、全校生約1000人の前で校長先生から表彰されることになりました。
これまで特に目立つこともなかったナカムラ君にとって、全校生の前で校長先生から賞状をもらうなど、小学校の卒業式以来です。

ご祝儀袋が二つ!
全校生の前で校長先生から渡されたのは賞状だけでなく、二つのご祝儀袋もありました。
その一つには中学校の名前が書かれていて、もう一方には町の名前が書かれていました。
その中を見るとそれぞれ、中学生のお小遣いからすればかなりの高額の現金が入っていました。
もちろんナカムラ君はたいへん驚きました。

このようなことが一般的に行われているのかどうかわかりませんが、少なくともナカムラ君はこのようなこと見たことも聴いたこともありません。
・・・・・こんなことってホントにあるんだ。 これ(美術展で金賞をとること)は、よほど凄いことなのかな・・・・・・
賞状を貰う以上に
やはりナカムラ君としては、彼の版画がデパートに飾られたり、賞状を貰ったりするより、お祝い金を貰ったことの方がずっと衝撃的だったようです。
しかしその金額はナカムラ君が日頃手にするお小遣いからすると、はるかに高額だったので、彼自身では使うことも出来ず、母親にそのまま渡し、最終的には高校入学の費用などに用いられたようです。
オレ、なんか、凄いことやったみたい、 オレって天才?
沖山先生に 「お前の版画が金賞を受賞した」 と言われた時には、なんのことかさっぱりわからなかったのですが、校長先生から表彰されたり、高額のお祝いをもらったり、さらに小さくですが、新聞にも自分の名前が載ったりすると、ナカムラ君もだんだんと、何か凄い事をしたんだなと思うようになってゆきます。
・・・・・・オレ、なんか凄いことやったみたい。 美術展で金賞を取るということはとても凄いことみたいだな。
大勢の前で賞状をもらうなんて、ちょっと恥ずかしかったけど、なんか、お金までもらって。
それに、新聞に自分の名前が載るなんて、なんか変な感じ。
ともかく、今まで経験したことのないことばかり。
オレは絵が下手だと思っていたけど、それって思い込みだったみたいだ。
今まで全然気が付かなかったけど、オレって美術の才能があるみたい。
いや、間違いない。 オレが言うんじゃなくて、みんながそう言うんだから・・・・・・
もちろん、これまでの話からおわかりのとおり、彼が美術展で金賞になったのは、当然のことながら沖山先生の、たいへん熱心で細かい指導によるものです。
何といっても、最後の仕上げはナカムラ君ではなく、沖山先生が行ったわけですから。
ナカムラ君がしたことと言えば、ただ沖山先生のいうことを忠実に行っただけ。
しかし当のナカムラ君は、学校を挙げてのお祝い気分に、いつのまにかそんなことも忘れてしまい、自分の力で賞を勝ち取り、さらに自分には美術的才能があるとまで、思うようになってゆきます。
沖山先生の記憶がない
彼には職員室でお礼を言ってから、つまり校長先生から表彰されたりするようになってからの、沖山先生の記憶が不思議なくらいありません。
もちろんまだ美術の授業は続いていましたが、その頃にはすでに高校入試が近づいて、沖山先生の美術の授業でも何か作品を作るということはなくなり、入試対策のようなことが行われていたのでしょう。
そうしたことで授業中の沖山先生の言葉も、ナカムラ君には記憶に残りにくかったのでしょう。
またなんといっても沖山先生からも、その頃になると、ナカムラ君に個人的に言葉をかけたりすることがほとんどなくなっていました。
特に「おめでとう」 とか 「よくやったね」 といったような言葉は一切ありませんでした。
そんな、こんなで、いつの間にかナカムラ君は校長先生から賞状や、お祝い金をもらったことは強烈な印象として残ったのですが、その一方で沖山先生の存在は、だんだんと小さくなってゆきました。
スポンサーサイト