中村俊三 新春コンサート 曲目解説
1月20日(日) 14:00 ひたちなか市アコラ
J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲第1番(中村編)
バッハの曲をギターで弾く場合は
バッハの作品の作品をギターで演奏するということは、今や特別なことではなく、ギター・リサイタルのプログラムにおいては定位置を確保していると言ってもよいでしょう。
しかし、バッハの作品をギターで弾くと言っても、なんでも弾いてしまう訳ではなく、ギターと言う楽器と相性の良い曲ということになります。
ギターで演奏するバッハの曲としては、3つのカテゴリ―に属するものがありますが、まず一つはギターとたいへん近い関係にあるリュートのための作品がまず挙げられます。
バッハのリュートの作品は厳密にはリュートのための曲ではなく、リュートに近い音が出るチェンバロ ”ラウテンヴェルク” のための曲ですが、おそらくバッハとしては実際にリュートで演奏することも想定していると考えられるので、素直に”リュートのための作品” と考えてよいでしょう。
これらの曲をギターで弾く場合、若干の変更(特にオクターブ関係の)の変更は必要ですが、何といっても楽器が近いので、ほぼオリジナル通りに演奏出来ます。
次に、3曲ずつの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ、およびパルティータです。
バッハは通常単旋律楽器であるヴァイオリンのために複旋律的な作品を書いている訳ですが、複旋律といってもやはり限定された音の使い方なので、ギターで弾くのはそれほどの困難はありません。
ヴァイオリンの譜面をそのままギターで弾くこともできますが、ある程度低音などを追加して弾く方が一般的です。
そしてもう一つのカテゴリーが6曲の無伴奏チェロ組曲ということになります。
こちらも無伴奏ヴァイオリン曲と同様にチェロの譜面をそのままギターで弾くことも出来ますが、チェロ組曲はヴァイオリン曲に比べると低音や和音などは少なく、やはり低音などを補充する必要はあるでしょう。
実際にバッハは無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番と無伴奏チェロ組曲第5番をリュートのためにアレンジしていて、そうした関係からも、これらの無伴奏ヴァイオリン、及びチェロの作品をギターで弾くことは自然なことかも知れません。
その他のものとしては、 「主よ人の望みの喜びよ」 や「アリア」 などの有目曲をギターにアレンジして演奏されることもありますが、これらはもともと弦楽合奏(及び声楽)などの曲なので、原曲のイメージを損なわずにギターで演奏するのはかなり昔いところです。
またフルート・ソナタなどをアレンジして弾く人もいますが、意外と相性はいいようです。 鍵盤曲などをギターで演奏する場合もありますが、曲によってということになるでしょう。
舞踏組曲
と言ったように、無伴奏チェロ組曲をギターで演奏するということはギター界ではよく行われていることなのですが、その中でもこの第1番は他の5曲のチェロ組曲よりも弾き易く、よく行われています。
プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエット、ジグ の6曲からなる組曲ですが、プレリュード(前奏曲)を除く5曲はすべて舞曲となっています。
当時の「組曲」、つまり "Suite" とは基本的に舞曲を組み合わせたものを意味します。
これらの舞曲は当時宮廷などで踊られていたのですが、これらの組曲が本当に踊るために作曲されたかどうかは疑わしいところです。
鍵盤のための組曲などを含め、やはりバッハとしては ”聴くための音楽” として作曲したのではないかと思います。 まあ、踊れば踊れるといった感じなのでしょう。
どちらかといえば、これらの作品が舞曲の形を取っているということは、それぞれの曲のテンポやリズムに変化を付けるためと考えられます。
リズム的には、アルマンドのみ4拍子で、残りの4曲は3拍子系となっています。 またテンポは遅い順に サラバンド、アルマンド、メヌエット、クーラント、ジグとなります(厳密にではないが)
チェロ組曲の他の5曲についても、5曲目のメヌエットがブレーやガヴォットに代わるだけで、ほぼ同じ組み合わせとなっていて、つまりこれらはバッハの組曲としては標準形といえます。
しかし同時代の作曲でもヘンデルや、ヴァイス(バッハと親しかったリューティスト) などの組曲はバッハのものとは異なる組み合わせになっていて、同時代でも作曲家によって組み合わせはいろいろだったようで、 これらの形はあくまでもバッハの組曲の標準形と考えた方がいいようです。
かつてはデュアート版しかなかった
このチェロ組曲第1番のギター編曲譜としては、かつてジョン・デュアートの編曲が知られていました。 というより1970年代くらいまでは他の編曲譜は出版されていなかったのではと思います。
私も当初このデュアート版で弾いていたのですが、なんとなくしっくりこないというか、あるいはバッハらしくない響きが多いとか、さらには速い曲などなかなかテンポが上げにくいなど(この理由が一番大きいかな?)と気になる点も多くなり、次第に自分でアレンジするようになりました。
ゼロから編曲し直した
当初は自分でアレンジしたと言っても、やはりこのデュアート版の影響が大きかったのですが、バッハの音楽をいろいろ勉強しいぇいるうちに、やはりデュアートのアレンジは、根本的なところでバッハの音楽とは方向性が違うと思うようになり、デュアートの影響を一掃し、ゼロから自分でアレンジし直しました。
もちろん私にアレンジが優れているとか、正しいとかいうことは、私自身では何とも言えませんが、少なくとも追加した低音は私自身が理解したバッハの音楽に沿ったもので、また聴いた感じも原曲のイメージに沿ったものと思っています。
さらに曲によっては、特にテンポの遅い曲では適宜に装飾を加えています。
1月20日(日) 14:00 ひたちなか市アコラ
J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲第1番(中村編)
バッハの曲をギターで弾く場合は
バッハの作品の作品をギターで演奏するということは、今や特別なことではなく、ギター・リサイタルのプログラムにおいては定位置を確保していると言ってもよいでしょう。
しかし、バッハの作品をギターで弾くと言っても、なんでも弾いてしまう訳ではなく、ギターと言う楽器と相性の良い曲ということになります。
ギターで演奏するバッハの曲としては、3つのカテゴリ―に属するものがありますが、まず一つはギターとたいへん近い関係にあるリュートのための作品がまず挙げられます。
バッハのリュートの作品は厳密にはリュートのための曲ではなく、リュートに近い音が出るチェンバロ ”ラウテンヴェルク” のための曲ですが、おそらくバッハとしては実際にリュートで演奏することも想定していると考えられるので、素直に”リュートのための作品” と考えてよいでしょう。
これらの曲をギターで弾く場合、若干の変更(特にオクターブ関係の)の変更は必要ですが、何といっても楽器が近いので、ほぼオリジナル通りに演奏出来ます。
次に、3曲ずつの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ、およびパルティータです。
バッハは通常単旋律楽器であるヴァイオリンのために複旋律的な作品を書いている訳ですが、複旋律といってもやはり限定された音の使い方なので、ギターで弾くのはそれほどの困難はありません。
ヴァイオリンの譜面をそのままギターで弾くこともできますが、ある程度低音などを追加して弾く方が一般的です。
そしてもう一つのカテゴリーが6曲の無伴奏チェロ組曲ということになります。
こちらも無伴奏ヴァイオリン曲と同様にチェロの譜面をそのままギターで弾くことも出来ますが、チェロ組曲はヴァイオリン曲に比べると低音や和音などは少なく、やはり低音などを補充する必要はあるでしょう。
実際にバッハは無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番と無伴奏チェロ組曲第5番をリュートのためにアレンジしていて、そうした関係からも、これらの無伴奏ヴァイオリン、及びチェロの作品をギターで弾くことは自然なことかも知れません。
その他のものとしては、 「主よ人の望みの喜びよ」 や「アリア」 などの有目曲をギターにアレンジして演奏されることもありますが、これらはもともと弦楽合奏(及び声楽)などの曲なので、原曲のイメージを損なわずにギターで演奏するのはかなり昔いところです。
またフルート・ソナタなどをアレンジして弾く人もいますが、意外と相性はいいようです。 鍵盤曲などをギターで演奏する場合もありますが、曲によってということになるでしょう。
舞踏組曲
と言ったように、無伴奏チェロ組曲をギターで演奏するということはギター界ではよく行われていることなのですが、その中でもこの第1番は他の5曲のチェロ組曲よりも弾き易く、よく行われています。
プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエット、ジグ の6曲からなる組曲ですが、プレリュード(前奏曲)を除く5曲はすべて舞曲となっています。
当時の「組曲」、つまり "Suite" とは基本的に舞曲を組み合わせたものを意味します。
これらの舞曲は当時宮廷などで踊られていたのですが、これらの組曲が本当に踊るために作曲されたかどうかは疑わしいところです。
鍵盤のための組曲などを含め、やはりバッハとしては ”聴くための音楽” として作曲したのではないかと思います。 まあ、踊れば踊れるといった感じなのでしょう。
どちらかといえば、これらの作品が舞曲の形を取っているということは、それぞれの曲のテンポやリズムに変化を付けるためと考えられます。
リズム的には、アルマンドのみ4拍子で、残りの4曲は3拍子系となっています。 またテンポは遅い順に サラバンド、アルマンド、メヌエット、クーラント、ジグとなります(厳密にではないが)
チェロ組曲の他の5曲についても、5曲目のメヌエットがブレーやガヴォットに代わるだけで、ほぼ同じ組み合わせとなっていて、つまりこれらはバッハの組曲としては標準形といえます。
しかし同時代の作曲でもヘンデルや、ヴァイス(バッハと親しかったリューティスト) などの組曲はバッハのものとは異なる組み合わせになっていて、同時代でも作曲家によって組み合わせはいろいろだったようで、 これらの形はあくまでもバッハの組曲の標準形と考えた方がいいようです。
かつてはデュアート版しかなかった
このチェロ組曲第1番のギター編曲譜としては、かつてジョン・デュアートの編曲が知られていました。 というより1970年代くらいまでは他の編曲譜は出版されていなかったのではと思います。
私も当初このデュアート版で弾いていたのですが、なんとなくしっくりこないというか、あるいはバッハらしくない響きが多いとか、さらには速い曲などなかなかテンポが上げにくいなど(この理由が一番大きいかな?)と気になる点も多くなり、次第に自分でアレンジするようになりました。
ゼロから編曲し直した
当初は自分でアレンジしたと言っても、やはりこのデュアート版の影響が大きかったのですが、バッハの音楽をいろいろ勉強しいぇいるうちに、やはりデュアートのアレンジは、根本的なところでバッハの音楽とは方向性が違うと思うようになり、デュアートの影響を一掃し、ゼロから自分でアレンジし直しました。
もちろん私にアレンジが優れているとか、正しいとかいうことは、私自身では何とも言えませんが、少なくとも追加した低音は私自身が理解したバッハの音楽に沿ったもので、また聴いた感じも原曲のイメージに沿ったものと思っています。
さらに曲によっては、特にテンポの遅い曲では適宜に装飾を加えています。
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