中村俊三 ブログ

中村ギター教室内のレッスン内容や、イベント、また、音楽の雑学などを書いていきます。

バッハ:平均律クラヴィア曲集 14


第14番嬰へ短調



力強さと推進力を感じる

 嬰へ短調というのは#3個ですから、#6個の嬰ヘ長調よりは使わると思いますが、でも作品など残されるようになるのはロマン派以降だろうと思います。 プレリュードはほぼ16分音符と8分音符で出来ていますが、拍の頭に、それぞれ低音が付くので、力強さ、あるいは前に進んでゆく、推進力のようなものを感じます。



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テンポの指示はないが、拍頭にそれぞれ低音が付き、力強さを感じる。 やはり速いテンポが似合うだろう。



1分足らずで終わってしまう

  相変わらずバッハは速度指定などをしていませんが、曲の感じからして、速めのテンポをとる奏者が多いようです。 あまり長くない曲なので、速めのテンポをとると、1分もかからないで終わってしまいます。



バッハにしては珍しく

 フーガのテーマは、バッハにしては珍しく跳躍などを含まない順次進行で出来ています。 また臨時記号(#)はあるものの、バッハらしい(?)半音階的な動きもありません。

 声楽的なテーマといえるもので、フーガのテーマとしては一般的といえるのかも知れませんが、少なくともこの平均律曲集の中では、ちょっと ”おとなしい” ほうと言えるでしょう。 




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跳躍や半音階的進行を含まない、平均律曲集的には、かなり ”おとなしい” テーマ



時代をさかのぼるほどテンポの差は大きい

 この ”おとなしい” 性格のテーマと、速いテンポで演奏されるプレリュードの対比を考えてのことと思われますが、このフーガのほうは遅めのテンポで演奏する奏者が多いようです。 どちらかと言えば、古い時代の録音ほどこのテンポの差は大きく、年代が新しいものほど、その差は小さいようです。






第15番ト長調



嬰とか変とか付かないとほっとする?

 ト長調などというたいへん聴きなれた調になると、ちょっとほっとしますね。 調の名前に、「嬰」 とか 「変」 とか付くと、それだけで難しそうに感じます。 いいですね、#1個で、ト長調。 ギターの教材でもよく出てきそうです。




16分の24拍子? よくわかんないけど、なんか、凄い!

 しかし拍子記号を見るとなんと、16分の24拍子!  前回の16分の12を超えてますね! なんか凄い!  やはり平均律クラヴィア曲集!  



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16分の24拍子なんて、あまり見かけない



別に変わった拍子、リズムではない

 変なところで感心してもいけませんね、これも前回の記事と同様、実は特に複雑な拍子ではなく、 基本的には4拍子の曲なのだが、それぞれの拍が6連符で出来ていると言うことだけの話です。 13番では3連符だったものが、この曲では6連符になっているということです。 また、全曲16分音符で出来ているので、リズム的にはほとんど変化はなく、かなりフラットな感じとも言えます。



ショパンのエチュードのようにも

 13番のプレリュードは、リラックスした感じで、特に速くは演奏されないようですが、この15番では6連符ということもあって、13番に比べると、ほとんどの奏者は速めのテンポをとっています。  聴いた感じではショパンのエチュードのようにも聴こえます。




フーガのテーマは7度の跳躍を含む

 フーガの方は8分の6拍子で、拍子記号は普通ですが、後半では32分音符なども現れ、リズム的にはプレリュードよりは変化があります。 テーマには7度の跳躍が2度出てきます。 確か、和声的、あるいは対位法的にはこの7度の跳躍は禁止事項となっていたような気がしますが、バッハはこれを効果的に使っています。




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2小節目と3小節目にはそれぞれ7度の跳躍がある。 普通、7度の跳躍はいけないことになっている。




一般の方は真似しないように

 バッハなどの音楽家には一般的に言う禁則など、特に意味のないものと思いますが、でも普通の人はやたらと使ってはいけないことなのでしょうね。   ・・・・・映像では、今回の収録のために特別な訓練を受けたものが行っております。一般の方は絶対に真似しないでください・・・・・   なんて感じなのでしょうか。




速めのテンポのほうが効果的

 このフーガもプレリュード同様、ほとんどの奏者が速いテンポを取っています。 その方が後半に出てくる32分音符のパッセージが活き活きとしてくるのでしょう。
<バッハ:平均律クラヴィア曲集 13>



第13番嬰ヘ長調



再び平均律の話

 やっとバッハの平均律クラヴィア曲集の話に戻りましたね。 このタイトルの前回の記事を8月30日に書いているので、ほぼ1か月ぶりと言うことになります、もちろん書き始めた以上、最後まで書きます!   ・・・・・たぶん、また何かの関係で中断することはあると思いますが。



第1巻の半分まで書いた

 さて、何番まで書いたのかなということですが、一応、第1巻24曲の半分、つまり第12番まで書きました。 ということは、まだ4分の3残っていますね。



#6個

 今回は ”第13番嬰ヘ長調” と言うことになりますが、嬰ヘ長調は譜面のように#6個です。 #を6個も付けないといけないと言うことは、やはりあまり一般的な調ではないようです。 

 もちろんギター曲などではあり得ない調と言えますが、古典派やバロック音楽でも、まず皆無といっていいでしょう。 ロマン派以降では、なくはないと思いますが、非常に稀ではないかと思います。 



♭で書いても6個

 因みに、嬰ヘ長調は変ト長調と同じですが、変ト長調は♭6個で、結局どっちで書いても6個必要となり、どちらで書くかは、気分次第?



16分の12拍子

 プレリュードの拍子記号は ”16分の12” ということで、あまり見かけない拍子記号ですが、内容的には特に複雑でも変わっている訳でもなく、4拍子の曲なのだけれど、すべて3連符となっているということで、3連符の表記の代わりに、この拍子記号を用いたわけです。



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調号と拍子記号を見ると変わった曲のようだが、中身は、わりと普通。




中身は穏やかなリズムと音型で、明るく、親しみやすい

 調号とか、拍子記号とか見ると、なんか、変な曲だなと思われそうですが、中身のほうはそれほど変わってるわけではありません。穏やかなリズムとアルペジオの音型による曲で、特に目立つ曲とか、特徴的な曲ではありませんが、親しみを感じる曲です。



2枚目のCDの最初の曲なので


 作品の内容にはあまり関係ないことですが、”第13番” というと、たいていのCDはここから2枚目となるので、その2枚目のCDの最初の曲となります。 その関係で、この曲は聴く頻度が多く(途中で聴くのをやめてしまったり、居眠りしてしまうこともよくあるので)、記憶に残りやすく、また親しみも感じやすいのかも知れません。

 


フーガのテーマは「くるみ割り人形」の「中国人の踊り」に似ている

 フーガの方もプレリュードと似た雰囲気の曲ですが、このフーガのテーマは、チャイコフスキーの 「くるみ割り人形」 の「中国人の踊り」 に似ています。 譜面のようにテーマを切り取ると 「中国人の踊り」 と全く同じとなってしまいます。



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1段目の赤線の部分は中国人の踊りと全く同じ



 このフーガは基本的には比較的シンプルなものですが、6小節目からテーマとは別の素材(16分音符による)が現れ、どちらかと言えば、最初のテーマよるこの素材の方が重要なな役割を果しているようです。  ・・・こういったものを ”対主題” と言う?




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バッハだって笑顔の時もある。   ・・・・たぶん




終始笑顔の絶えない曲  ・・・・・バッハだって、いつも ”苦虫を嚙み潰した” ような顔をしている訳ではない

 この素材も明るくユーモラスなもで、終始笑顔の絶えないプレリュードとフーガと言えるでしょう。 この第13番のプレリュードとフーガは、この曲集の中でも、あまり目立つ曲ではないと思いますが、聴いて、たいへん心地よい曲かな、と思います。 もちろんバッハの音楽は、あの晩年の肖像画のように、いつも ”イカツイ” 顔をしている訳ではない!
 
バッハ:平均律クラヴィア曲集 12 


第11番ヘ長調




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第11番ヘ長調のプレリュード。 1拍が6個の16分音符からなり、そういう意味では速く弾くことになるのかなとは思いますが、曲の感じからすると遅く弾いてもいいんじゃないかな?




一般的には落ち付いた感じで、よく使われる調だが

 ヘ長調はベートーヴェンの「田園」でも知られている通り、一般的にはのどかで、のんびりした感じで、いわゆる”癒し系”の調ということになります。 ギターの場合では、ヘ長調はセーハが多くなり、♭が1個のわりには、弾きにくい調となり、 したがってヘ長調の曲はギター曲ではあまりありません。



ヘ長調のギター名曲は、なくもないが

 オリジナル、編曲を含め、ヘ長調のギター曲というのは、ほとんどありませんが(練習曲を除けば)、 フェルナンド・ソルにはヘ長調の幻想曲があり、演奏次第ではまるで室内楽のように聴こえ、隠れた(?)名曲とも言えます。 でもこれにはちょっと訳があって、ソルはこの曲の場合、⑥弦を「ファ」に上げて弾くようになっています。  確かにこうすれば主和音の低音が開放弦で弾けて、かなり楽になります。

 またジュリアーニのギター協奏曲第3番はヘ長調で書かれていますが (この曲も名曲!)、これは通常のギターよりも短3度高い ”テルツ・ギター” を使用するようになっていて、確かにオーケストラ部はヘ長調で書かれているのですが、ギターのパート譜はニ長調で書かれています(つまり3フレットにカポタストを付けた状態になる)。



そんなに毛嫌いしなくても

 つまりギターでヘ長調の曲を演奏しようとする場合は、いろいろ小細工が必要ということなのでしょう。 やはり ”まとも” なヘ長調のギターの名曲というのはほとんどないと言ってよいでしょう。 何もそんなにヘ長調を毛嫌いしなくてもいいんじゃないかとと思いますが、古今のギタリストたちはこのヘ長調を嫌っていたのは間違いありません。

 ギターの場合、ヘ長調は弾きにくく、音も鳴りにくいのですが、その結果響きがやわらくなり、落ち着いた感じに聴こえ、結果的には一般的なヘ長調のイメージには合っていることになります。 前述のソルの幻想曲がギター曲らしく聴こえないで、室内楽のように聴こえるのは、このヘ長調という調に無関係ではないでしょう。



ギター曲でフラット1個はほとんどニ短調

 もっともフラット1個のギター曲はたくさんありますが、それらはほぼ間違いなくヘ長調ではなく、ニ短調の方でしょう。 ニ短調の場合、⑥弦を「レ」にすれば、主要3和音の低音がすべて開放弦となり、非常に弾き易い調となります。 同じフラット」1個でもヘ長調とニ短調では、たいへんな差があります。




プレリュードもフーガ16分音符6個でひとまとまり


 さて、この平均律曲集第1巻第11番ヘ長調のプレリュードは8分の12拍子で、8分音符3個×4、 または16分音符6個×4 で1小節となります。 ヘ長調だけあって、やはり緊張感などはあまりなく、落ち着いた感じの曲となっています。 

 フーガのほうは8分の3拍子ということで、こちらも8分音符3個、または16分音符6個がひとまとまりになってます。 フーガと言っても、あまり長くなく、ジーグ風の軽い感じの曲です。

 どちらも8分音符3個、または16分音符6個が一まとまりになっていて、もちろん同じ調なので、たいへんよく似た印象です。 譜面上からすれば、プレリュードは1拍が16分音符6個で出来ていて、フーガのほうは16音符2個が一拍となるので、16分音符1個の速さはプレリュードのほうが速いと言うことになります。



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3声のフーガといっても、かなり軽い感じで、複数の声部が絡み合うことも少ない。 なんとなくジーグ風で、速いテンポのほうが似合いそう。



理屈からするとプレリュードの方が速い感じになるのだが

 多くのピアニストやチェンバリストは、このようにプレリュードのほうを速く、フーガの方をやや遅く弾いています。 でも何人かのピアニスト、チェンバリストはプレリュードもフーガも、ほぼ同じテンポで弾ています。 

 それならプレリュードをフーガに比べて遅めに弾いて、フーガを速いテンポで疾走するように弾くという手もあるのではと思いますが、実際にそう弾いている人はいなそうですね、やってみてもいいんじゃないかな?





 

第12番へ短調



結局全部の曲について書いているが

 個々の曲については、抜粋してお話するといいながら、結局抜かさずやってしまっています。この際なので、第1巻についてはこのまま ”全曲” 書いてゆきましょう。  12番ということで、やっと第1巻前半の最後まで来ました。 全体では4分の1と言うところです。



ベートーヴェンは最初のピアノ・ソナタをへ短調で書いている

 ヘ短調は♭4個なので、あまり使われることが少ない調ですが、ハイドンには、若干へ短調の弦が四重奏曲があり、ベートーヴェンもピアノ・ソナタ「熱情」や、弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」を、このヘ短調で書いています。 ベートヴェンの場合、何といっても第1番のピアノ・ソナタを、このあまり使われないヘ短調で書いているあたりも、注目のところでしょう。 

 この曲を”第1番”としたのはベートーヴェン自身の意志によるもので、その第1番をヘ短調としたのも、自らが”並みの”作曲家でないことを示すためではないかと思われます。



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見た目ではあまり遅く弾く曲とも思えないが、ほとんどのピアニストやチェンバリストは遅めのテンポをとっている。 特にグレン・グールドはかなり遅い。



16分音符で出来ているプレリュードだが、遅めのテンポで弾く奏者が多い

 第12番のプレリュードは16分音符を中心としたもので、相変わらずバッハ自身ではテンポの指定を行っていませんが、多くの奏者は遅めのテンポを取っています。 32分音符以下の細かい音符はなく、譜面を見ただけでは、速めのテンポで弾くことも十分に考えられる曲ですが、へ短調という調がそうさせているのかも知れません。

 特にグールドはこのプレリュードを4分以上かけて演奏しています。 決して長い曲ではないので、多少遅く弾いても、普通は2分ちょっとくらいの曲でしょうか。



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フーガのテーマを6小節と見るかどうかはわからないが、バッハはこの曲をこの6小節のテーマを基に作曲しているのは確か。 ベートーヴェンを先取りした主題労作と言えなくもない。



ベートーヴェンの主題労作を先取り?

 フーガのテーマは3小節の4分音符の部分に3小節の16分音符の部分が付いています。 正式にはどこまでが主題なのかわかりませんが、このフーガ単独の主題に擁るフーガで、この6小節に含まれる部分をそれぞれに展開してゆく形になっています。

 こうしたことは、ベートヴェンなどの音楽で言う ”主題労作 ”的な曲作りといえるでしょうか、これも時代の先取りと言ったところでしょう。 バッハの音楽は、当時時代遅れの古い音楽とされていましたが、これまで見てきたように、逆に時代を何十年も先取りしている部分が多数見られます。




4の倍数でフーガが長くなる?

 この12番へ短調のフーガも他のフーガに比べて長いものになっていて、充実した内容のフーガの一つと言えます。 そう言えばこの平均律曲集で長くて充実したフーガは第4番、第8番、第12番となっています。 つまり4の倍数の番号でフーガが長くなっている訳です。      ・・・・・・かつて ”3の倍数で・・・・・・” でといったギャグがあったような。 バッハはギャグまで先取り?



バッハには短調の名曲が多い

 バッハのことですから、意図的に4の倍数の番号でフーガを長くしたと言うことは、ありそうな感じもします。 ただ、この平均律曲集の並びからすると、2番、4番などの偶数はすべて短調となり、バッハは短調の場合に重厚なフーガを各傾向があったということも言えるので。たまたまそうなってしまったと言うことも十分あるでしょう。

 確かに、バッハの名曲には 「マタイ受難(ホ短調)」 や 「ロ短調ミサ」 など短調のものが多いですね。 40数曲の交響曲、27曲のピアノ協奏曲で、それぞれ2曲ずつしか短調の曲を書かなかったモーツァルトとはだいぶ違います。


 ・・・・・ともかく、無事(?)4分の1が終わりましたね。





 
バッハ:平均律クラヴィア曲集 11


第10番ホ短調



モーツァルトもホ短調の名曲を残している

 ホ短調はもちろんギターでは最もポピュラー、というより、最もギターに適した調です。 ホ短調=ホ長調の同名調の組み合わせはギター曲では非常に多いですね。 バロック時代や古典派時代でも、特に多いと言う程ではありませんが、まあまあ使われ、ホ長調ではほとんど作品を書かなかったモーツァルトも、ホ短調でヴァイオリン・ソナタの名曲を書いています。 



#や♭は3個まで?

 モーツァルトの場合は、やはり#4個というのを嫌ったのかもしれませんね、モーツァルトは♭4個の曲も書いていません。 モーツァルト、あるいはモーツァルトの時代は、#や♭は多くても3個までとなっているのでしょうか。



嬰ハ短調や変イ長調、へ短調などはベートーヴェンの時代になって使われるようになった

 #4個のホ長調の作品はバッハやヴィヴァルディなど、バロック時代の作曲家も作品を残していますが、同じ#4個でも嬰ハ短調や、フラット4個の変イ長調、へ短調などはベートーヴェンの時代になってようやく表れます。 そういった意味でも。このバッハの平均律曲集は、時代を先取りしたものと言えるでしょう。



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第10番ホ短調のプレリュード  オルガンの演奏で聴くと、上声部はバンドネオンぽく聴こえる。 無理やり言えば、下声部もリベルタンゴぽい。



 何かに似ている

 さて、この平均律曲集の第10番ホ短調のプレリュードは譜面のように左手で16分音符の音型を刻みながら、右手で長い音符と短い音符によるメロディを奏でるようになっています。 右手の上声部は、全音符のメロディに装飾音がついたとも言えるかも知れません。




リベルタンゴぽい?


 この曲をオルガンの演奏で聴くと、 上声部が、何となくバンドネオンぽく聴こえてきます。 そう言えば左手の音型もリベルタンゴに似ていると言えば、似ている。 これにリズム・セクションを加えると、まるでピアソラのタンゴになってしまいそうです。

 もちろんバッハの平均律がピアソラのタンゴに似ているのではなく、ピアソラのタンゴがバッハに似ていると言うことになるのでしょう。 そう言えばピアソラはバッハの音楽を研究したとも言われています。



ぜひオルガンで


 ピアノやチェンバロで聴いても、そんな感じには聴こえないのですが、ホントかな? と思う人は、ぜひオルガンの演奏で聴いてみて下さい。



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走る抜けるようなフーガ。 有名なトッカータとフーガのテーマにちょっと似ている。 サラっと終わるところもなかなかいい




2声のフーガは珍しい


 フーガの方は2声のフーガとなっています。 2声のフーガというのはこの平均律曲集では、たぶんこの曲だけではと思います。 テーマはちょっとだけ有名な 「トッカータとフーガト短調」 のフーガのテーマに似ています。 




終り方がオシャレ


 全曲ほぼ16分音符で出来ていますが、2声ということもあって、おそらく速いテンポを想定しているのではないかと思います。 あっという間に走り抜けるようなフーガですが、終わり方も ”サラッ” と粋な感じです。 プレリュードもフーガも重量級ではありませんが、聴いて爽快な感じで、どちらもあまり肩のこらない作品になっています。
バッハ:平均律クラヴィア曲集 10



第1巻第9番ホ長調



ギターではなじみのホ長調だが

 ホ長調はギターではホ短調と並んで、よく使われる調ですね、「魔笛の主題による変奏曲」とか、「ラグリマ」とか、「禁じられた遊び」もホ短調=ホ長調の組み合わせです。

 バッハの作品でも 「ヴァイオリン協奏曲第2番」、「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番」などがあり、同時代のヴィヴァルディにもヴァイオリン協奏曲集「四季」の 「春」、 また、曲名通り愛らしい曲の、ヴァイオリン協奏曲「恋人」 もホ長調で作曲されています。



古典派時代やロマン派時代には、ホ長調の作品はあまりない

 バロック時代には、比較的ポピュラーだった、このホ長調ですが、次の時代、つまり古典派以降はあまり有名な作品が作られなくなります。 モーツァルトの、少なくとも交響曲や協奏曲などの主要な作品にはホ長調は全く使われなかったようです。 ハイドンやべートーヴェンには多少ホ長調の作品がありますが、やはり有名な曲としては、あまりありません。

 ともかく、19世紀以降でホ長調の有名な作品を探してみても、とりあえず思いつくのが、ブルックナーの 「交響曲第7番」 くらいでしょうか。



シューベルト、シューマン、ブラームスもホ長調では交響曲を書いていない

  ・・・・・・他に何があったかな? あまり浮かんできません、少なくとも交響曲に限定した場合、シューベルトもシューマンもブラームスもメンデルゾーン、マーラーと言った作曲家もホ長調では交響曲を書いていません。



管楽器にはあまり合わない調

 私たち(ギターを弾くもの)にはたいへん親しみのあるホ長調で、なぜあまり作品が書かれないのか、不思議なところですが、おそらく管楽器との相性が良くないのでしょう。 ブラス関係を全くやったことのない私などにはピンと来ないことですが、ブラス・バンドやオーケストラをやる人にとっては、#4個のホ長調はかなり ”とっつきにくい” 調なのでしょう。



ヴァイオリン関係の曲にはホ長調は使われる


 前述のバッハやヴィヴァルディの作品は、すべてヴァイオリンがらみの曲で、管楽器がなければ、ホ長調は特には問題ないようです。ギター同様、ヴァイオリンにとってもホ長調は親しみやすい調なのではないかと思います。 さて、そんな私たちには親しみ易いホ長調ですが、一般的はそれほど使われる調ではないようです。 




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ド・ミ・ソ (音名ではミ・ソ#・シ) で始まる第9番のプレリュード。 親しみやすいメロディで出来ている。




ド・ミ・ソで始まる親しみやすいプレリュード


 平均律曲集のプレリュードは練習曲的なものが多いのですが、この第9番のプレリュードはたいへん親しみやすいメロディの曲となっています。 しかも 「ドミソ」 と言った感じで始まり、非常にシンプルで覚えやすいところもあります。

 そう言えば前述の 「ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調」 も 「ドミソ」(実際の音では ミ ソ# シ) と始まりますね。 2声のインベンション第1番や、平均律曲集第1番のフーガは 「ド レ ミ」 と始まり、バッハにはこうしたシンプルな音から始まる作品はたくさんあるようです。




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クリストファー・パークニングのギター・バージョン。 聴いた感じではあまり難しそうではないが、実際に弾くとなかなか難しい。 ギター二重奏であれば、かなり楽だと思う。




このプレリュードもパークニングがギターで弾いている

 第6番のところでは話をしましたが、この第9番のプレリュードもクリストファー・パークニングがギターで演奏していて、聴いたことのあるギター愛好者も多いのではないかと思います。 パークニングの編曲譜も市販されていましたが、実際に弾いてみると、聴いた感じとは裏腹に、ギター、特に独奏で弾くとなると、かなり難しいです。 出来れば二重奏で弾きたい曲ですね、やはりパークニングの技術は凄い!





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フーガの方はテーマが長い割には、曲が短く、テーマとテーマの間隔が狭い。つまりストレットが多い。



フーガは曲が短いわりには主題が長い⇒ストレットが多い

 フーガは音階的なテーマで、曲の規模が29小節と小さい割には、テーマが3小節と、やや長めです。 結果的にストレット (テーマが終わらないうちに、別の声部でテーマが始まる) が多くなっています。 中間部の数小節を除いて、ほぼストレットで出来た、凝縮されたフーガといえるでしょう。 あっという間に、さっと終わってしまいます。